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(観葉植物と高校生、キャラ濃おじいちゃん)×3

 部屋にどうしても観葉植物が飾りたくて週末わざわざ隣町まで母に車を出してもらった。わたしはペーパードライバーでちっともハンドルというものを握ろうとせず、一人暮らしをした今でも遠出のために家族にお願いする始末だ。かつてはそれなりにブイブイ言わせていたのでたぶん運転しようと思えば出来るけれど、もう三年ぐらい運転してないからもうしばらくしないでいたい。目が疲れる。

 友達が勧めてくれた花屋さんに行ったかいがあって、とてもすてきな子たちをみっつも連れて帰ってくることができた。思っていたよりも金額も高くなく、それでも三つも買うとは思っていなかったので震えながら財布を開いた。とりあえず実家に連れて帰る。
 月曜日の朝、真っ暗なうちから実家から一人暮らしのマンションへ。途中までは父の出勤の車に乗せてもらい、路面電車の始発電停赤迫から電車に乗る。ここからなら座ることができる。
 今回は植物たちを抱えての乗車で、すごく難しかった。紙袋に入れ、座ることができ安定して膝の上に載せられたから一安心、と思っていたら高校生三人組がでっかいリュックを持って目の前に立ち、しかもお行儀がいいことにそのリュックを前側に抱えなおした。えらい、通行の邪魔になるからね。でもわたしの植物ちゃんたちに当たる!ひぃと心のなかで叫びながらちょっとリュックを手でガードさせてもらう。心が狭い。でもちょっとぐらいそのドデカいリュックが目の前の人にアタックしていることに気付いてくれてもよくない?こっちみて!いやほんと高校生相手に大人がみみっちい。でも実害が出てるから許してくれ、と自分の言い訳が出るわ出るわ。

 しかし電車が進み私の隣に座っていた席があくと、目の前の高校生が隣にいた友達に促され席に座った。私の植物ちゃんにダイレクトアタックしていた子だ。え、そんなすんなりと?もしかして具合が悪かったのだろうか。高校生ってこんな素直に席に座るか?私が知っている高校生って席が一個だけ空いたら俺は座らない、おまえが座れで一悶着起こすんだけど。ワチャワチャしなかったならそれなりの理由があるんじゃないかと邪推してしまう。

 すぐに人を好き勝手に想像する。よくもわるくも。 
 このまえ母と実家の近所を散歩していたら突如視界に後ろ向きに歩くおじいちゃんが現れ脳が混乱した。その人が去ると初めてみる犬を連れたおじいちゃんが現れ、そうしてまたその人とすれ違い見えなくなると今度は異常に厚着のおじいちゃんが登場した。おじいちゃんたちは三人とも風貌が似ていた。
 そして最後の最後にでっかいピンクの花束を持ったおじさんがスーツでどこかに歩いて行った。いつもは人通りが少ないぐらいなのにこんな濃いメンツが攻めて来るだなんて。
 母と話し合い、おそらく最初の三人のおじいちゃんたちが最後のおじさんのプロポーズを応援しにフラッシュモブをするはずだ、ということになった。どういう話の流れで母とその結論に至ったかは省くが、そうに違いないのだった。きっと今頃素敵なカップルが爆誕しているはずだ。
 それにしても情報が大渋滞していた。母曰く私の右の鼻から鼻くそまで出ていたらしい。虫が私の眼鏡に止まって全然飛び立たないし。もう処理落ちである。

 そんなふうに楽しい想像がいくらでもできるんだから、ちょっと人が不親切だったり自分の思い通りに行かなかったりしても裏事情を想像しなさいよ自分、と反省。ちょっとしたことでイライラする自分は好きじゃない。

 もしかしたら植物ちょいアタック高校生はフラッシュモブの練習に疲れていたのかもしれない。あの後ろ向きに歩いていたおじいちゃんの孫で、毎日夜中までおじいちゃんのフラッシュモブの練習に付き合わされているんだ……おじいちゃんはきっとバク転したくて、それを孫は支えないといけなくて…。
 そう思うとそっと観葉植物を見せてあげるぐらいすればよかった。多幸の木、ガジュマルならば少し疲れも癒やされただろう。
 ある意味憐れみを垂れる上からの想像力とはわかっているけれど、降って湧いた理不尽にぐらい憐れみを適用して自分の安寧を守らせてくれ。

 結局土をこぼすこともなく無事マンションに戻った。
 どうか観葉植物ちゃんたちが無事に育ちますように。

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