【長崎】ランタンフェス前に「よりより」食べ比べ【5種】
よりより、という奇っ怪な食べ物が長崎にはある。
音からはちっとも想像がつかないだろうが、これはお菓子だ。「よりより」やら「マファール」やら色んな呼び方があるけれど、今回は「よりより」と呼ばせていただく。とある会社の固有名詞という噂もあるが、長崎市民歴≒人生の私にもよくわかっていない。でもまぁみなこのお菓子を「よりより」と呼びがちだ。かわいいからだろう。
さて、そもそも「よりより」「マファール」などと呼ばれるこのお菓子は何なのだろう。
地元にあるからそのまま受け入れているけれど、けっこう宇宙的デザインだ。そろそろ見た目を皆様知りたいでしょうから、代表的なもの1本お見せします。こちら。
これが「よりより」……!
そりゃ「よりより」だわっていうデザイン。可愛らしいし、独特でもある。床屋さんの表で光ってる筒のような。そういえばこういう形でファンシーな色をしたマシュマロもあるよね。「よりより」の場合茶色いから、渋さとファンシーが融合していて常に新しさを感じる。
でもその歴史は長い。
諸説あるようだが、遣唐使の時代に伝来した「索餅」というものが発祥だそうで、そうめんのルーツにもなっているそうだ。どうやって「よりより」からそうめんになったんだ……。
よりよりのお味は…?
「よりより」の主成分は小麦粉、砂糖、油。ほかにもちょろちょろ重曹やら入っているけれど、どの会社もメイン成分はこのみっつだ。ようは小麦粉と砂糖を練ってあげたもの、だ。しいていうなら乾パンに近い味だけれども、もっと甘いし、揚げてあるぶんジューシー。乾パンは一口ごとに水分が欲しくなるけれど、「よりより」は油のおかげで一本ぐらいならそのまま食べきれる。噛むごとにじゅわぁと油と甘さが口のなかに広がっていつしか病みつきになっている。ふとしたときに食べたくなる素朴なお菓子、それが「よりより」だ。
記憶を遡り、人生に「よりより」がログインしてきたタイミングを考える。たぶん給食に「地元の名物」みたいなことで出てきたのだ。ひとり一本。みんなぎゃいぎゃい言いながら食べた思い出。小学生大騒ぎである。
なんせこの「よりより」、言ってなかったがとても硬い。そりゃもうトンデもなく硬い。乾パンに近い、とは言ったが硬さは乾パンの非じゃない。前歯で行ったら確実に折れる。奥歯でガチッと噛み締めないと絶対に食べられない。おじいちゃんおばあちゃんのお土産なんて言語道断。ちょっと日持ちはしないかもだけれども、そこは大人しくカステラを買って帰ってくれ。「よりより」なんておじいおばあに渡した日には絶縁されるでほんと。少なくともうちの祖父母には無理。泣いちゃう。一応ちゃんと「よりより」についてから勉強して食べ比べようと検索したら「魔法のような硬さ」って出てきたし……。魔法じゃないんだ、この硬さは現実なんだ。それでも魔法を乗り越えて「よりより」を食べたい人のために、会社によってはソフトタイプやミニサイズなんてのも出ている。各社いろんな戦略で購入意欲を刺激してくるから堪らない。
そんなわけでまんまと色んな会社の「よりより」が気になったので、食べ比べをしてみることにした。長崎市民、やはり自分の「推しよりより」は言えるようになっておきたい。カステラ食べ比べのときと同じ理由だ。あのときは7社食べ比べをしたが、壮絶な戦いだった。詳しくはこちらをみて欲しい。塩昆布に命を救われていた。
やるぞ!「よりより」食べ比べ!
さて、仕事を早めに終わり中華街で五種類の「よりより」を買ってきた。もう来週からランタンフェスティバル。中華街や街中ではドデカいランタンが業者によって設置されている最中だった。灯りのついてない日中のランタンは妙にリアルで面白く、テンションが上がる。
職場の後輩と楽しく中華街で爆買いして私のマンションに帰宅した。同期も合流し、いざ、「よりより」食べ比べである!
今回の「よりより」の皆さんはこちら。
・萬順(まんじゅん)
・泰安洋行(たいあんようこう)
・福建(ふっけん)
・林製菓(はやしせいか)
・蘇州林(そしゅうりん)
中華街を巡りこの五社となった。
メンツは私、会社の後輩Yちゃん、会社の同期Tくんである。カステラ食べ比べを読んで下さった方はご存じの仲良し。エヘヘ。皆様の鋭い洞察力を頼ってご協力いただいた。快く私のアホ企画に毎回乗ってくれてありがとねぇ。
T「こんな量のよりよりみたことないんだけど」
毎度の事ながら食べ比べをすると量が多い。爆笑しながら「よりより」を皿に並べていく。圧巻の光景だ。
皿に出してみると意外と色や「より」など見た目から違いがあって面白かった。一本ずつ購入できるものは一本買いしたが、袋でしか売られていないモノはできるだけ小さい袋を買った。
それでもすでに目の前に大量の「よりより」があるにも関わらず並べられていない「よりより」があることに若干絶望。無理はしないで、美味しく、食べきれなかったらジップロックで持ち帰ろうねと約束して食べ比べをスタートした。
〇萬順
さぁ、トップバッターは萬順だ。眼鏡橋近くのお店には「元祖 よりより」のでっかい垂れ幕が建てられている。萬順は「よりより」を「よりより」と呼び始めた店だ。
今回は「できたてのよりより」というのがあったのでそれを買ってみた。長崎市民歴≒人生だけれども出来たてを食べるのは初めてだ。食べ比べとしてひとつだけ出来たてで有利なのでは?という疑問もあったけれど、ワクワク感に負けて出来たてを買っちゃった、えへ。
「よりより」はこんなかんじ。
ちょっと色が薄めで巻きもふわっとしているだろうか。長さもちょっと短め。
齧ってみる。うがっ!久々の「よりより」。脳が揺れた。そう、こんぐらい硬いのだ。ガリゴリと砕くように噛み締めるたびに視界が揺れた。気を引き締め治して再度奥歯で齧り付く。
T「うわ~久しぶりに食べた!おいしい!」
Y「ですね!硬さこんなもんだっけ?」
みんな久々の「よりより」に感動し、記憶のなかの「よりより」と照らし合わせている。でも私ひとりだけちょっと様子が違う。
私「かたい…そういえば虫歯治療中だった…」
そう、そういえば私は虫歯の治療根が副鼻腔炎で炎症を起こし、ここ一ヶ月歯に風穴があいた状態で過ごしていた。仮詰めはしているもののすぐに取れてしまう。
Y「なんで今この企画したんですか笑」
私「だってもうすぐランタンだから……」
初手から一抹の不安を感じながらも企画続行。私は虫歯のない左側だけで食べることを誓った。
一個目なので美味しいしか感想を言えず、次へ。
ちなみに萬順の近くにある眼鏡橋は黄色いランタンで飾られ、それが水面に反射してとても綺麗だ。ランタンフェスティバルでは場所によってランタンの色が異なる。ぜひ「よりより」片手に散策してみて欲しい。萬順のは出来たてだし、テンション上がるヨ!
○泰安洋行(たいあんようこう)
さて二番目は長崎人でもあまり「よりより」の存在が知られていないだろう泰安洋行のものだ。
泰安洋行は中華街入ってすぐ左手にある建物で、一階はお土産や食べ物が売っていて、二階はカフェになっている。この二階のカフェが有名で、作曲家細野晴臣さんが1976年にリリースしたアルバム「泰安洋行」はこの店から名前が引用されている。ファンには嬉しい場所のようで、私の母もこのカフェに行けたことをたいそう喜んでいた。
その泰安洋行の名前が刻まれた「よりより」を一階のお店部分で発見した。オリジナル「よりより」の存在に驚き、そりゃもう即購入した。
巻きは萬順とさほど変わらない。でも色がかなり濃い。茶色いな…とみんなでつぶやきながらガブリ。
私「香ばしい!」
T「焦げてる…?!いやでも美味し!」
Y「これが好みの人もいそうですね」
見た目通りではあるのだが、とても香ばしい。自分で作ったクッキーがちょっと深めの茶色になったときと同じ味がして、私はそういうクッキー大好きだからとても好きな味だった。香りが高いぶん、満足感も高い。硬さは萬順と同じ。
Y「でもたくさん食べるならしんどいかな…」
私「こんなに食べるのうちらぐらいだから、普通は大丈夫よ」
Y「確かに」
そうしてYちゃんTくん私、このあたりで気がついた。「よりより」かなり素朴である。カステラとは違い、味にあまり差がでない。ふわっとしか感想が言えない。
T「もう硬さランキングしかわからんくね?」
Y「確かに、そっちで考えましょ」
まだ「よりより」は三本も残ってるぞ!!この食べ比べ大丈夫か!?
○福建
こちらもなかなか有名どころ。中華街の中に店舗を構えて販売している。中華街真ん中らへんだ。長崎の中華街はコンパクトなのですぐに見つけられると思う。
ここで何を血迷ったか、私はちょっとした枕ぐらいある中華餅を購入してしまった。
馬鹿に重い。Yちゃんは生ぬるい目で私を見ていた。今週末の実家へのお土産にするつもりだ。こういう見たことがないお菓子が買えるのも中華街の楽しいところだ。
そんなことより「よりより」である。
福建の「よりより」はゆる巻きだ。色は平均的な茶色。ふむふむ言いながら齧りつく。
私「あ、コレ好きかも」
Y「食べやすいですね」
T「砕ける!!」
割りとサクサク食感で食べやすい。味も癖がなく、ふんわりと甘い。齧ったあと口の中で解けるのも早かった。
齧り付くとちょっとバラけるけれど、粉々になるわけではないから食べづらい訳ではない。むしろ他の「よりより」に比べて歯には優しい。(よりよりにしてはね!)あと私は小麦の味が好みだった。
○林製菓
T「これ林製菓でしょ!俺小さい頃コレめっちゃおやつに食べてた!」
パッケージを見ただけでT君が林製菓と気がついた。私は正直今まで聞いたことなかったお店なので驚いた。なんかいいな、自分が馴染んだ「よりより」があるって。是非自分も推しと呼べる「よりより」を見つけようと気合いを入れ直した。硬さにビビっている場合ではない。
林製菓の「よりより」は、形はびっくりするぐらい綺麗に整えられていて、全体的に均一なきつね色をしていた。これまで食べたものたちより見た目の整い方が素晴らしい。
T「めっちゃ優等生の真面目な子の三つ編みみたい!生徒会長」
Y「お土産とかにいいかもですね、見た目がきれい」
しげしげと見つめ、いざ実食。
私「かっっっっっっ!」
Y「たっっっっっっ!」
T「え!硬!こんなちがうん?」
圧倒的強度の「よりより」が現れた。見た目が整っているのが硬さに表れたのだろうか。目の詰まった「より」のためか、一番噛むのが大変だ。でも齧ってもびくともしないからずっと形が綺麗だ。
味はとがったところもないノーマルタイプ。とにかく硬さが特徴的。
T「でも俺はやっぱこれが好きだ!!」
めっちゃ笑顔でT君が言っててよかった。
○蘇州林(そしゅうりん)
そうして大トリ、蘇州林だ。かなり有名メーカーで中華街のなかに店を構えている。真ん中らへんでひょいと左に曲がると店がある。龍の飾りが目印だ。
蘇州林は萬順、福建と並んで有名「よりより」の作り手。とりあえずこの文章の中では「よりより」と呼んでいるからそう書いているけれど、蘇州林のものは厳密に言うと「マファール」だ。漢字では「麻花兒」。
見た目はふわっと三つ編みぐらい。ちょっと細めかな。色もほどほどに茶色くて良い感じだ。
T君は「ちょうどいい三つ編みぐらい」と評していた。三つ編みの表現が気に入ったらしい。「後れ毛とか出して結んでいそう」とYちゃん。Yちゃんはショートなので三つ編みは出来ません。
さてさて、ひとくち。
Y「えっっっっっっ!」
T「かたっっっっっ!」
私「おまえもかっっ!」
有名どころだしとなんとなく油断していたけれどめちゃくちゃ硬かった。林製菓と同じぐらい硬い。去年食べたけどこんなに硬かったっけ?と記憶を掘り返してみると、あれは「チョコマファール」だった。
ランタンフェスティバル限定、蘇州林でのみ販売をしているチョコレートがかけられた「マファール」である。ちょうどランタンフェスティバルはバレンタインの時期に行われるので毎年大人気で長蛇の列になる。そういえば去年母が買ってきてくれたけれども「チョコマファールはチョコに合うように生地の配合も変わっているんだって!」と熱く語っていた。もしかしたらあれはチョコ用にちょっと柔らかくできていたのかもしれない。
Y「でもやっぱおいしいですね蘇州林」
私「有名なだけあるね~」
初手の硬さは予想外だったが、そのあと噛むほどに小麦の味が広がってとても美味しい。Yちゃんとチョコマファールが食べたいねなどと話した。
まとめ
まぁそんなわけで五種類の「よりより」を食べ終えた。正直なところ、素朴な味なので特徴を見いだすのがとても難しかった。なのでとりあえず「よりより硬度ランキング」を出したいと思う。
「よりより硬度ランキング」(体感)
1位 林製菓(はやしせいか)
2位 蘇州林(そしゅうりん)
3位 萬順(まんじゅん)
泰安洋行(たいあんようこう)
4位 福建(ふっけん)
といったところだ。三位は同率。私は歯が完治するまでは福建のものを食べておこうと思う。まぁあと二週間ぐらいで治るはずなんだけれども。
一応今回買ってきた「よりより」は一番オーソドックスな硬度のものだ。店によってはソフトタイプもあるので、私と同じく虫歯治療中の友は無理せずこちらを試してみて欲しい。この文章を読んで「よりより」食べたら歯が欠けたと言われても責任取りかねます!でも頑健な歯を持ってる人はぜひ硬いのにもチャレンジしてみて。噛むの楽しいから。
「推しよりより」は…?
本当に全部美味しくてそれぞれに個性があって面白かった。選ぶのは難しいのだけれども、自分の「推しよりより」を選ぶならば……福建だろうか。
虫歯治療中でも齧りやすかったことはもちろん、噛み砕いた後の生地と油の溶け方、甘さが好みだった。でも泰安洋行もけっこう好きだった。香ばしさが個性になっていて面白かった。
んで記憶上の参戦になってしまうし番外編ではあるのだけれど、蘇州林のチョコマファールがやっぱり美味しい。今回ランタンフェスティバルに来る方はぜひ長蛇の列に負けずに並んでいただきたい。それだけの価値がある。
残った「よりより」はそっとジップロックに入れさせていただいた。明日から充実したおやつタイムが送れるだろう。
もう中華街だけでなく、市役所前など街中にもランタンが立ち並ぶ。旧正月の一月末から二月半ば、長崎は鮮やかな灯火に包まれて美しい。
長崎に馴染みのある方もぜひ改めて「よりより」を食べてみて欲しい。記憶よりも硬かったり、意外な発見があって面白い。そして是非推しを見つけて私に教えて欲しいなと思う。
そして他県の方はぜひ長崎に来て「よりより」片手に旅を楽しんでほしい。異国情緒溢れる和華蘭(わからん)文化、長崎の「華」が一番はなやかな時である。夜の闇に浮かぶ赤はとても綺麗だ。
きっと素敵な冬の思い出になること間違いナシです!!
【参考サイト】
・麻花兒(マファール) | 蘇州林
・泰安洋行:メディア掲載