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チョコレートコスモス
花屋でよく花を買うくせにあまり花に詳しくない。あんまり緑色の花は買わないのだけれど、なんとなく目が惹きつけられた。
たくさん花びらのついたその花を買った。
菊ではない。葉っぱが違う。
いつもは花の名前は調べない。だって名前で買ってきたわけではないし、またその花を見て買いたいと思った日が来れば花屋で指刺せばいい。オタク的活動をするときかプレゼントで花を買うときくらいしか名前が必要なときはないし、それは滅多にないことだった。
でも今日はめずらしくケチを乗り越えて二輪を買っていた。花は高級品でお金がないないと嘆いているけれど、私を支えるのにちょっとお菓子を買うのを控えてでも買うべきものとなっていた。
そしてもう一輪の名前は調べずとも知っていた。その茶色い花はチョコレートコスモスだった。見たときからきっとチョコレートコスモスだと思っていたし、もう顔なじみの店長さんもチョコレートコスモスだと言って一番元気な一輪を選んでくれた。ここの花屋さんは正直に花持ちを教えてくれるからありがたい。
チョコレートコスモスは紫がかった深い茶色で、ああ、あの酒瓶にあうと思った。酒瓶は水色で、つい二日前後輩カップルに飲み干して貰って酒瓶から花瓶にジョブチェンジを果たしたところだった。でもまだ花は生けていなかった。
透き通る水色に水墨画のような長雨の絵、大好きな作家さんの短歌が短冊のようにかかっていてとても綺麗な花瓶だった。
きっとチョコレートコスモスはとてもよく似合う。
ケチの思考が出てくる前に追加の注文が口をついて出ていた。でもお会計は三三〇円だった。安かった。
茶色いコスモスとみどりいろの花。家にいくつか花瓶はあるのだけれども陶器の茶色い一輪挿しをもってきた。もしかしてこちらにチョコレートコスモスが王道ではなかろうか。花をあててみるがピンとこなかった。覇道を行こう。水色の元酒瓶に茶色い花、うすい茶色の陶器にみどりいろ。
読みたかったけど仕事のせいで読めていなかった小説を読み終えた。血肉湧き踊る、なお話でずっと拳を振り上げ奇声を上げながら読んでいた。ひとりでよかった。わたしは元気だ。
圧倒的読後感のままお昼寝。目が覚めてチョコレートコスモスをチェキで撮った。白飛び、まっくろ、三枚目でようやくそれらしく撮れた。この酒瓶は思い出深くて、でも今後はもうただの花瓶として働いてもらいたいものだった。そういうとき、この茶色くてかわいい花は供養に向いていた。
思い立ってチョコレートコスモスの花言葉を調べて、鼻から勢いよく空気が出た。鼻でわらっていたのだ。出来過ぎてて。
みどりいろの花にカメラをかざす。名前と花言葉。今はなんでも調べられて面白くない。