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何もない
タイムラインに流れてきたルー・リードが気になってベルリンを聴き始めた。'73年のアルバムだ。ルー・リードはヴェルヴェット・アンダーグラウンドをやっていたのか!'80年代に聴いていた記憶があって、活動時期が合わないと思ったらフェアグラウンド・アトラクションと勘違いしていた(同じなのはグラウンドだけ!)。ローリー・アンダーソンと結婚していたんだな、知らないことばかりだ。アルバムの中に女の子が思いっきり泣いてる声が入っていて、娘たちが小さかった頃を思い出した。
'70年代の前半は自分の10代前半で、洋楽を聴き始めた当時、ラジオにはビートルズを解散した4人やカーペンターズ、エルトン・ジョン、ギルバート・オ'サリバン、ミッシェル・ポルナレフといった人たちの曲が流れていた。キャロル・キングやカーリー・サイモン、ロバータ・フラックもいたっけ。全体的にメロディアスでアコースティックな時代だった。でも今になってみると、その頃田舎の中学生が知らなかったジョニ・ミッチェルやルー・リードも活躍していた訳で、そこを掘るだけでも大判小判がザックザクという感じで、老後に暇を持て余す心配とかこれっぽっちもないな。
久しぶりに施設に母を訪ねると、新緑会と称して外に設営されたテントの下で、母は車いすで机に向かって天ぷらうどんを食べていた。ようやく面会コーナーの透明なビニールの仕切りが外されて、随分話がしやすくなった。施設での生活にも大分慣れた感じで、当初より落ち着きが感じられる。最初の孫の結婚式には辛うじて出席できた分、来月の式に出られないことを残念がっていた。会うたびに、少しずつ母が小さくなっていくように思えるのは気のせいだろうか?
高速をやめて信号の少ない緑の県道を抜け、薔薇の庭を眺めて帰宅すると、娘から母の日と父の日を兼ねたシルクスクリーンが届いていた。仕事で訪ねたアトリエで刷らせて頂いたらしい。全くの素人画だけれど、一応サインも入っているし、気持ちを額装して飾ることにしよう。歳のせいか、最近はちょっと無理をすると翌朝に疲れが残るようになってきた。その一方で、あれをやらなくちゃというセカセカした気持ちは少し薄らいできたようだ。本を読む時間が取れない日があったとしても仕方ないなとか。ずっと何かに追われるように過ごしてきたけれど、勝手にそう思い込んでいただけで、やらなければいけないことなんて元々何もなかったのかもしれない。