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#04' 坂本龍一さんのこと('23.4.3)

 一年を通した個人的な坂本龍一歳時記とでも言うべきものが自分の中にある。春は音楽図鑑、梅雨時はスイートリベンジ、夏はビューティーで、秋には/'04、/'05。冬は1996で、気持ちいい夏の夕暮れにはCASA、雪のドライブにはBTTBウラをかけて、仕事が忙しい夜はアクアを聴きながら水の中に沈むように眠る、といった具合だ。
 YMOもいけないルージュマジックも衝撃的だったけど、かっこいいなあと印象に残っているのは、六本木WAVEで音楽図鑑のアナログ輸入盤が面でディスプレイされているのを見た時だった。存在の仕方がズルい!と思った。
 当時はまだ独身で、SONYのモニター(TVではなく!)とβ(!)のビデオデッキを買った頃に音楽図鑑のビデオが発売された。セルフポートレートという曲が大好きで、どんな映像になっているのか観てみたかったのだが、結局そのビデオを買いそびれた後で、今度は音楽図鑑の本、文字通り図鑑が出た。アルバムの1曲1曲が見開きのビジュアルで構成されていて、その中に確かマンデルブロ集合の画像があった。よく分からないけれど、ある数式で表される集合をビジュアル化すると、細部の中にまた更に細部が宿る無限曼荼羅みたいになるというもので、私の中では手塚治虫の火の鳥を彷彿とさせる世界観だった。マンデルブロ集合のことは、確か中沢新一や浅田彰の本にも出ていたような気がする。'80年代、ニューアカブームの頃の話だ。
 今手元にある1996は2枚目で、1枚目は失くしてしまってどこにあるのか分からない。その1996と結びついた記憶に雪うさぎの思い出がある。ある冬の日、ひどく哀しい思いを抱えて帰宅すると、家の前で近所の小さな女の子がその日降った雪で雪うさぎを作っていて、何を思ったのか、掌にのせた雪うさぎをハイと私に差し出してくれたのだった。今はもうお母さんになって子育てをしている本人は覚えていないだろうけど、その雪うさぎがどれ程その時の自分に慰めとなったことか。
 ひょっとすると、人はお互いそれと気付かないうちに誰かを救ったり慰めたりしながら生きているのかもしれない。そして勿論、誰かの作った曲や歌が知らない誰かの暮らしや人生を励ましたり癒したり感動させたりすることは世界中で毎日、今この瞬間にも起こっているはずで、つまり、何が言いたいかというと、要は、私が伝えたいのは、どうやったって表しきれるはずのない、最大限のありがとうございました!だ。


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