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あと幾たびのサンタかな
子供たちが小さかった頃は、寝静まってから枕元にプレゼントを置いておいた。寝ぼけて目を覚ました時にバレないように、白い髭や赤い帽子を着けて。成長するにつれて就寝時間が遅くなって、待つのが段々辛くなっていったけど、この眠気との戦いもあと何回出来るかなあと思っていた。ある年、とうとう眠気に負けてプレゼントをリビングのテーブルに置いたことがあった。「サンタさん、来なかった…」翌朝とぼとぼと起きてきた息子の、テーブルの上にプレゼントを見つけたときの「あった!」という地獄から天国みたいな喜びようは今でもはっきり覚えている。
その息子が、小学生になってから「サンタは実は親なのでは?」という疑問を持った。今年は何が欲しいか、サンタさんに教えない。それでも欲しいプレゼントが届いたらサンタさんを信用するという。初めは意気込んでいたものの、そこは未だ小さい子供のこと、ある時無意識のうちにフッと希望を(サンタにではなく親に)漏らしてしまって、その後暫くサンタを信じ続けることになった。当時、姉たちは既にサンタの正体に気付いていたが、存在を否定してしまうとプレゼントが貰えなくなるので、結果的に我が家にはずっとサンタが存続していた。
娘たちが大学生になって家を離れてからは、プレゼントの中にカードとCDを一枚入れるようになった。その年に聴いて良かったものとか、古いけど聴いておいてほしいものとか。多分趣味には合わないだろうけど、私の勝手な自己満足だ。ある年、何かの事情があって(単なる気分の問題だったかもしれない)CDを送らなかったことがある。別に期待されてもいないだろうと思っていたところ、正月に帰ってきた娘たちが、クリスマスに(最低限の保険のように?)届くはずのCDが無くて淋しかったみたいなことを言ってくれたのはちょっとうれしかったな。そのCDも、ネットに押され車にも無くなって、私自身最近めっきり聴く機会が少なくなってきた。先日久しぶりに聴こうとしたら、いつの間にかピックアップがイカレていて空回りする始末。クリスマスのCD企画もそろそろ今年辺りで打ち止めかなあ…。
私の育った田舎の農家には、煙突が無かったせいかサンタが来ることも無く、精々昔ながらのバタークリームケーキを食べる位が関の山だった。ああ、そう言えばあの頃、厚紙にフェルトを貼って駄菓子を詰めた赤い長靴があったな。お菓子を食べ終えると必ず履いてみたくなるやつ。当然直ぐ壊れるんだけど…、今でもあるんだろうか?