夜空の星たちのように
スーパームーンだった月は、毎日少しずつ痩せながら明け方の空に留まっている。日の出はいつの間にかもう6時近くにまでなっているから、午前5時はまだ暗い。影が出来る程の月明かりに誘われて頭をもたげてみると、南の空にはもうオリオン座が出ていることに気付く。子供の頃、中央の3つ星の並びに惹かれてよく眺めていたが、その頃は外側の4つの星には気付かなかった。この間見たらその周りにも明るい星がいくつもあって、そう言えば冬の大三角形ってどれだっけ?と思って調べてみたら、それを一辺とした冬のダイヤモンド(大六角形)というのもあることを知った。カペラとかアルデバランとか、子供の頃にインターネットがあったら天文学者になっていたかもと一瞬思ったが、図書室に行けばよかっただけの話で、流星群のことを調べて学校の屋上に昇ったこともあったのを思い出した。残念ながら私の夜空への関心はその程度止まりだったらしい。
ずっと気になっていた空音央さんの「HAPPYEND」をようやく観てきた。高校の卒業を間近に控えた仲良し五人組の群像劇。近未来を想定した日本の社会にも管理化とか差別とかいろいろ問題が(より深刻化して)あるけれど、結局一人一人が一つずつ自分で選び取っていくしかなくて、初めてそれを意識する時期を青春と呼ぶのかもしれないなとか。冒頭もラストも劇中にも印象的なシーンがたくさんある中で(影の描写がよかったなあ)、個人的にグッときたのは夜中に延々と台車でスピーカーを運ぶところだった。学生時代に音楽サークルを作ったものの部室はなく、お金を出し合って買ったPA機材をキャンパスに一番近い部員のアパートに置かせてもらっていた。狭い部屋の半分を占めようかという機材をコンサートの度に台車に載せて運んでいたけれど、途中の踏切りを渡るのにいつも難儀したっけ。
恥ずかしながら映画館に行くことが少ないので、昔の感覚からすると上映されている作品の数が随分と多く感じる。その分上映プログラムも複雑で、期間も結構フレキシブルなようだ。選択肢が多いのは有難いけれど、選んでもらう方は大変だろう。娘がまだ学生だった頃、ある日突然自分の部屋を映画の撮影に使ってもいいかと訊いてきたことがあった。フォローしている監督が撮影に使える部屋を探しているのだと。心配だけど無下に駄目出しするのもなあと思って「大家さんの許可が要るだろう」と伝えたところ、予想に反してすんなりOK。新宿のミニシアターで遅い時間に上映されたその作品には、確かに見覚えのあるポスターの掛かった部屋が映っていた。当時新人だったその監督さんは、今ではメジャーな存在となってコンスタントに作品を発表している。今どんどんと映画界に現れている才能に満ちた方々も、夜空に煌めく星たちのようにその輝きを増していって、いつかみんなが星座みたいになったらいいなあ。
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