#75 半世紀×2=1世紀
先日、ある施設でBGMにイエスタデイワンスモアが流れていた。お、懐かしいな。カレン・カーペンターの歌声はほんとにきれいだった。この曲がヒットしたのは中1の時だから'73年か。ということは…。ここまで考えを辿ってきて愕然とした。今から50年前?ええっ!半世紀前ってこと?何ということだ、曲のタイトル通りつい昨日のことのような記憶が半世紀前とは!
思えば、似たようなことはこれまでにもあった。40になった時は二度目の成人式を迎えてしまったなあと思ったし、50になったときは自分に当たり前のように30年、40年前の記憶があることに驚いた。還暦の時にはジョン・レノンの1.5倍も生きてしまったなあと思ったものだ。がしかし、やはり50年という半世紀の重み、インパクトはまた格別のものがある。そうは思いませんか、ご同輩の皆さん?
若い頃は、とかく夭逝に憧れがちだ。立原道造、中原中也、正岡子規に宮沢賢治、文学関係だけでも枚挙に暇がない。村上春樹も何かに書いていたではないか、詩人は21で死ぬし、革命家とロックンローラーは24で死ぬと。そもそも、若い頃には30歳になった自分のイメージはない。ロックは若者のものだと思っていた。まさか80歳になったミック・ジャガーが新曲を歌っている姿を目にできる未来が来ようとは夢にも思わなかった。侮り難し、Life goes on!
とは言え、いつまで驚いてばかりもいられない。せっかく半世紀という尺度を手に入れたのだから、それを2倍して1世紀をイメージしてみるのはどうだろう。子供の頃は、100年前と言えば雲をつかむような大昔だった。ところが、既に手元にはその半分のリアルな記憶がある。それを使えば全く無関係だった100年前が少し身近に感じられるのではないだろうか。100年前と言えば、第1次世界大戦が終わって日本は大正デモクラシーの時代。でもその後の展開はご承知の通りだ。半世紀分のリアルと精一杯のイマジネーションをフルに活用したいものだ、同じことを繰り返さずに済むように。