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光の春

 寒い中でも、立春を過ぎて少しずつ強くなってくる光に感じる春を「光の春」と呼ぶらしい。立春は来週だけど、ふとその言葉を思い出したのは、通勤中のカーオーディオで「リトルラム ドラゴンフライ」が流れるのを聴いたからだ。この曲は、ポールマッカートニー&ウィングスが'73年に発表した2枚目のアルバム「レッドローズ スピードウェイ」のA面の最後5曲目に収められている。アコースティックな前奏から始まって、ゆったりとした優しいメロディーがどんどんと展開していくポールらしい曲だ。この曲を聴いて思い浮かぶのは半ドンの土曜日、風はまだ冷たいけれど、ガラス越しの陽射しを浴びてポカポカとした廊下に置かれた古いソファだ。そのソファに横になってこのアルバム、この曲を聴きながらウトウトするのが好きだった。その頃、学校はまだ週休二日ではなく、土曜日には午前中の授業があった。半ドンの語源には諸説あって、半分のドンタク(休日=ドンタクの語源はオランダ語のzondag)というのが有力らしいが、個人的には、確か鴎外がどこかに書いていた「お昼に大砲(空砲)がドンと鳴る」という方を推したい。
 田舎の中学生だった私は、特に深く歌詞の意味を考えることもなく曲を楽しんでいたが、そんな中でも何となく好きだった歌詞は Sometimes you think that life is hard, and this is only one of them というところ。「時々君は思う、人生は困難だと。そして、これもその一つなんだ」みたいな意味だろうか?(当時の困難って何だったんだろう?)高校の頃は How did two rights make a wrong ? という部分に惹かれた。ちょっと哲学的な感じ。どうして二つの正しさが一つの誤りを?二人とも正しかったのに…みたいな?ドラゴンフライってトンボだよなあ、それが窓辺に飛んでる。トンボは途中から出てくるんだけど、当時はリトルラム(子羊)のことはあまり意識になかった。今読み返してみると、この歌詞はトンボから子羊への語り掛けと子羊からトンボへの応答部分に分かれているのではないだろうか?ポールには「メアリーの子羊」という曲もあって、ポールのお母さんはメアリーだから子羊はポールで、そうなるとトンボはトンボ眼鏡のジョンか?その前提で書かれた時期(ビートルズの解散後だった)も踏まえて読んでみると、内容がストンと腑に落ちるような気がするのは私だけだろうか?今度の休みには、久しぶりに午後の陽射しの中で「レッドローズ スピードウェイ」を聴いてみるかな…。

https://youtu.be/1iPaRZT7XSc?si=KYUui_BFDysQa2_s

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