小説詩集6「夏の浜辺の探し物」
夏の砂浜でいつまでも探し物をしてた。
たった一つの言葉が、貝殻のように砂に埋まってて、波に洗われるのを見てた。
砂浜は胸元みたいに息してる。
だから波がよせるたび酷く痛むんだ。
「これだね、」
とか、彼がわざわざそばに来て埋まったものを一緒に見てくれた。
私は引き裂かれて倒れそうだったから、身じろぎもしなかった。
「言葉が理解できなきゃよかったんだ」
「なるほど、」
とか、彼が唸る。
「あんな人がいなかったらよかったんだ」
「そうだな、」
とか、やっぱり唸った。
「あんな会社潰れればいいんだ」
「しかし、それは困るんじゃないか」
今度は私が唸った。
「デスクのとなりでさ、電車の中でさ、道端でさ私は見ごろしにされるんだ」
「いつもそうだな」
「でもさ、今回だけはもうだめだよ」
貝殻みたいなのが胸に刺さってるから、声に力が入らなかった。
「どれぐらいまったら、この貝殻みたいなのは波に砕かれるのかしら」
「どれぐらいかなあ」
「秋までこうして、海辺を彷徨うのかしら」
「そうだな、」
そうだな、は静かにこだまして、私は久しぶりに眠りに落ちていた。
ハッとして目覚めた。
日差しが容赦ない。
ざわめきが戻っていた。
「秋まではかからなかったな」
「そうね」
「探し物はみつかった?」
「ううん、だって誰だって自分の正義の中で生きてるんでしょ」
おわり
❄️なぜか毎日がゲシュタルト崩壊みたいな中で、書きました。そしてアップしました。心が整理できない潮目があるのでしょうか、、、。