「物語の作り方」は誰が教えてくれるのか?
ナイツの塙さんの言葉にハッとした
先日の土曜日のお昼過ぎにテレビをぼーっと眺めていたら
ナイツの塙さんが、ものすごい目の覚めるようなことをおっしゃった。
「ドラマを週に31本観る」
しかもそれは、連続ドラマ。毎週ちゃんと観るのだとか。
え? と思った。
カッコつけた人が「映画を毎日必ず1本観る」だとか「休みの日に洋画3本観ちゃいました」とか、
「それ何自慢?」と疑問に思うことを堂々と言う人がたまにいるけど、そういうことではない。
「ドラマを週に31本」だ。毎週だ。
その中に海外ドラマが含まれているのかどうかまではわからないのだが、
多分、国内のものだろうと思う。
そもそも週に31本もドラマ放送してるのか?と思ったけど
朝ドラや深夜ドラマ、9時台10時台…と、各局必ず何本かドラマが放送されている。
「これ、誰が観てるの?」と思われるような時間帯、チャンネル、内容のものだってある。
「若者のテレビ離れ」はどんどん加速中。
なのに、なぜ、今?
「俺、月9だけはこの10年欠かさず観てるんだ」
なんて言われても、たいしてカッコよくは…ない。
ときめかない。
なんだか古めかしくもある「ドラマ」をなぜ塙さんは31本もちゃんと毎週欠かさず観ているのか?
それはもちろん、「ネタ」のためであるというのは、何となくわかる。
ナイツの塙さんはテレビのお笑い番組や劇場だけでなく、ラジオも何本もこなしている。
ネタ元になるものは多ければ多い方がいい。
しかし、それだけではない。
私が「ハッとした」言葉というのは
「どんなにおもしろくないドラマでも最後の方にかけて必ずおもしろくなる」
!!
あっ!と思いましたね、私は。
そうなんです、なぜドラマをあまり観ないか、というと…。
おもしろくないから…ではなく
興味がない
だからなんですよね。
俺様なイケメンとか、キョトンとしたドジっ子ヒロインだとかが
最初はいがみ合っててもだんだん惹かれ合う、っていうのにも
興味ないし、
ご近所のボスママ集団に目の敵にされても健気にがんばるママ、とかにも
あまり興味はない。
たまに、「あ、観てみようかな」
と、思うものがあったとしても、1話観てみて
主人公がこの先どうなろうが、興味がない
と思ったら、観るのやめる。
これがまあ、普通…だと思うんですよね。
しかし、つまり塙さんは、そんなことは承知で、
「おもしろくない」「興味ない」
ものであっても、見続けると言うのです。
そうすると…
必ず「だんだんおもしろくなる」!
と言うのです。
いや、まいった。
なるほどね!
(と、言っても納得できない人が多数であることは私も承知の上です)
これはクリエイター目線でないと出ない言葉です。
で、これから何かをクリエイトしていきたいと思う人は
しっかりと心のメモ帳に書き込んでおいてほしい言葉なのです。
つまり、ドラマを「おもしろいから」観る
では足りないのです。
「おもしろくなくても見続ける」
ことによって、
様々なことが学べるのです。
(以下は塙さんの言葉ではなく私の推測ですが…)
一つは、「こんなにおもしろくないのに、この先どうやって続けるのか」を見守ることで、作り手の努力、創意工夫が学べます。
「おもしろくない」設定、人間関係、ストーリーであったとしても
ドラマは8話~10話、もたさないといけません。
そのためには、毎回何か新しい「事件」「ハプニング」を投入するしかありません。
その「何か」のバリエーションは、多く持っている方が有利です。
(使うか使わないかは別にして)
そもそも「おもしろい」ドラマは、そんなもの無理してひねり出さなくても、最初から自然と脚本家が溢れ出るように浮かび形にしているものです。
途中で「何かハプニングを投入しなければ~!」と頭を抱える時点で、もうそれは「おもしろくないドラマ」なのです。
とは言っても脚本家も人間ですからいつでも最高のエピソードが自然と浮かぶわけではありません。
これは訓練なのです。
この訓練を繰り返すことによって、脚本家は難なく多くのバリエーションを思いつくことができるように成長します。(多分)
しかし…そのため無理のある展開になり、収集がつかずストーリーがぐだぐだ、ぐちゃぐちゃになっていくことは、海外ドラマでもよくあります。
それでも…
ぐだぐだ、ぐちゃぐちゃになったとしても…
不思議と「最終回」には、それが何となく「収まる」ように
できているのです。何となく「あ、終わったんだ…」という瞬間を
観ると、途中イライラしたとしても、なんとなく観ている方も達成感を感じるのです。
二つ目は。「おもしろくないな」「興味ないな」と思っていても、
本当に最後、感動することがあります。
「おもしろくない」「興味ない」という理由は、そもそも主人公や、その環境、設定が自分自身とかけ離れてすぎている場合に感じるのではないかと思います。
例えば、私はアラフィフ独身女子です。
一般的なアラフィフ女子が好きなもの?といえば
イケメンや韓流です。
でも、私は最近の若いイケメンには興味ありませんし、韓流にも興味がありません。
なぜかというと、顔の区別がつかないからです。
(みんな同じに見える…というのは加齢のせいらしいです)
それに、その若いイケメンがヒロインに「おまえ」呼ばわりしているのも、壁ドンするのも、怖いです。いずれDV男になるのでは…と心配になります。
そして、独身ですので、嫁姑、ママ友いじめ、などにも興味ありません。
それでも、そういう「普段興味をしめさないジャンル」であったとしても、
10話も続けるとなれば、必ずどこか、共感する部分は出てきます。
10話もあれば、ドラマはイヤでも内面を掘り下げなければ続きませんし、
どんな人物であっても、掘り下げればユングの言うところの集合無意識にたどり着くのではないかと思われます。(知らんけど)
過去に、本当に、最初は全然興味なかったのに、だんだん「おもしろい」と感じてきて最終回にはドはまりしていた…というドラマもたくさんあります。
(誰も覚えてないと思いますが、深キョンとユンソナが主演で、女の子同士で服作って売るという話が好きだった。誰も覚えてないでしょう…)
なんとなく見始めたドラマを「おもしろい」と感じはじめる…。
これって生きていく上でのプチハッピーのような気がします。
「プチ」だけど、こういうのって大事です。
だから、塙さんの言葉で、私は「なるべく観よう!なるべく…」と
思い直すことができました。31本は無理ですが…。
誰が物語の作り方を教えてくれるのか
最近は漫画の専門学校やら、大学の漫画コースやら、
なにやら「ストーリーの作り方も教えてくれるらしいぜ」みたいな
場所も増えましたが、
ストーリーの作り方、というものは教えてもらったりするものではなく、
「ドラマを観る」とか、「映画を観る」とか、あとは
小説を読む、漫画を読む、といったことで学ぶしか方法はないのだと思います。
あとは、塙さんのおっしゃったように「週に31本観る」というように、
「好き」とか、「趣味」を離れて、頭に叩き込むようにして
観る、読む、ということが大事なのではないかと思います。
そして、もちろん、観る、読むだけではダメです。
「自分が作ってみる」という作業…しかも1回や2回ではなく
100回、200回の繰り返し繰り返し…が必要だと思います。
「はじめて描いた物語がめっちゃ名作でバズった!」
という人もいるでしょうが…。そういう人はまあそれでいいんでしょうが。
私は現在漫画家なのですが、30年ほど前に女性誌でデビューし、10年ほどはデビューした雑誌で描き、その後他社で描きはじめ「何でも描きます!」と時には魂を売りながら現在に至ります。
そこで、思いだすのは、デビューした当時の、担当編集者の厳しかったこと…
デビューが決まったら「漫画家でーす!」と名乗っても別にいいのですが、
その後、ネームが通りません。
何作も何作もネームを描いてもボツ。
通ったとしても、何度も何度も描き直し。
すごく辛かったけど、そういう繰り返しがないと、
ストーリーの作り方って、理解できないものです。
1話か2話くらいならすぐに浮かぶけど、
3話目、4話目、5話目…といくつも作っていくうちに
すぐにネタは切れます。
でも、私はネタ切れしてからが勝負だと思っています。
「ない!書くことがない!」と右往左往してから
どうあがくか、そしてどう乗り越えるか、で
その人の作家としての本質が決まる…のではないかしら?
生まれたときから天才的な才能があるのなら、そんなに苦労しなくてもいいのかもしれませんが、
私の場合は、そうやって何度も何度もボツをくらって描き直して…という
修行の期間はなくてはならなかったと思っています。
そのおかげで、「24ページの読み切り描いて」と言われても「あ、やっぱり100ページで描いて」と言われても、対処できます。
まあ、仕事としてならば…なんでも描けます。
ネタ切れとかは、多分これからも無いです。
でも、それは、昭和の時代の話…
のような気がします。(デビューしたのは平成ですが)
昔のように、担当編集者がストーリーの作り方を叩き込む、なんてことは
もう今では無い…ような。
(編集者がストーリーの作り方をわかっていない場合もよくあるので!)
昭和の、昔の「漫画家」というものは、デビューまでが
とても遠い道のりでした。
何度も何度も投稿して、編集者に認められて、やっと雑誌に載ればそれが
「デビュー」。
デビュー作が掲載されれば晴れて「漫画家」となったわけです。
でも、今は違います。
別に、どこかの雑誌の編集者に認められなくても…
個人で出した同人誌でいいじゃないですか!
本に載らなくても、SNSや漫画投稿サイトで充分。
はじめて描いた作品が「デビュー作」です。
昔は、「ボツ」をくらったら、永久にそのお話は
世に出ることはなかったのです。
でも、今ではたとえ編集者から「ボツ」をくらったとしても
自分自身がどうしても描きたいと思えば、描いて発表できるのです。
それがいい時代なのかどうかはわかりませんが、少なくとも、
「編集者に認められるため何度も何度も描き直す」という作業は
あまり必要ではなくなりました。
「雑誌」「編集者」という垣根がなくなった今、
じゃあ、ストーリー作りは誰から学ぶのか?
それはやっぱり、これしかない。
塙さんのようにドラマを31本観る(笑)
…というのも一つの方法です。
私は漫画以外にも、シナリオ教室でシナリオの書き方を
勉強したり、小説の学校で小説を書いてみたりもしていましたよ!
漫画以外でも、何でもストーリー作りが好きなんです!
ご参考になれば!
サポートしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。