事業承継において、組織の熱量を増やすも減らすもやり方次第。これも心理的オーナーシップが大事で、ちゃんとセレモニーを開催しましょう!
事業承継の相談を受ける事も多々あるのですが、みなさん物理的オーナーシップの話ばかりするような印象を受けます。
・取締役登記のタイミング
・株式の譲渡(1株あたりの金額算定)
・退職金支給
これらの物理的オーナーシップの変更ももちろん重要です。しかし、先に心理的オーナーシップの承継プロセスを進める事のほうがもっと重要であると進言します。
心理的オーナーシップの承継については以下のプロセスでイメージしてください。
①.個人から個人へ(複数人で前社長の役割を分担する事はできません)
②.前社長と新社長の双方の※心理的同意が何より重要である
③.承継は一瞬にして行われ、後戻りは不可能である
④.③が行われた後、セレモニーを行いましょう
※心理的同意については後述します
このような4ステップで心理的オーナーシップの承継が行われます。
詳細に見ていきましょう。
①.個人から個人へ(複数人で前社長の役割を分担する事はできません)
心理的オーナーシップは、物理的オーナーシップとは異なり、本人が自覚するものです。物理的オーナーシップの代表とも言える会社の株式、これを一人一つ保有する平等な会社であったとしても、誰か一人の熱量が世界を動かしていくものです。
支配的ヒエラルキーではなく、自由な流れを促進させるための階層構造を組織内に持つべきです。これは自然界を見ても明らかです。
・大きな河と小さな川で河川は成り立っています。
・大きな幹と小さな枝で木は成り立っています。
・マザーツリーと若い木を菌糸ネットワークがつなぎ森は成り立っています。
このように、自然界は自分たちの繁栄のために上手に階層構造を作っています。支配構図を取り除いた階層構造は良いデザインには欠かせないのです。
よって、支配構図を取り除いた階層構造をシステムデザインし、誰か一人がそのフィールドを保持し続ける必要があります。それが社長の役割でしょう。
②.前社長と新社長の双方の※心理的同意が何より重要である
心理的同意があってはじめて、前社長は心安らかに幕を下ろす事ができます。もちろん、人生の幕を下ろす訳ではありません。フィールドを保持する役目に幕を下ろすという事です。
当然ながら、新社長がまだ準備できていないのに強引に渡そうとして失敗する事例も多いです。
あの日が心理的同意と言える日だったな〜。というほどに、心にグッとこみ上げてくる瞬間が来ます。その日まで承継し続ける事が大事です。
前社長は、自分が社長として行ってきた歴史を語る必要があるでしょう。出来事だけではなく、その時の想いを乗せてください。それを語り尽くすまでは承継はスタートできません。新社長は質問をしてください。その出来事についてもう少し詳しく教えてください。というように、二人だけの対話の時間が必要です。
③.承継は一瞬にして行われ、後戻りは不可能である
②をきちんと時間をかけて行ったのであれば言わずもがなですが、②を充分に時間をかけなかった場合でも、承継が起こってしまったら後戻りは不可能です。前社長は全部を手放せていない・新社長は全部を受け取れていない。このような状況から膠着して何も動かなくなります。
船頭多くして船山に登る
という状況が起こるのです。皆さんも目にし、耳にする事も多い筈です。①の原則とも乖離するので、組織はどんどん生命力を失っていきます。いわゆる無気力状態が続きます。
②をきちんと時間をかけて行う事がなにより大事です。
あ!これだ!と感じる瞬間まで承継を続けてください。
④.③が行われた後、セレモニーを行いましょう
きちんとセレモニーを行ってお祝いしましょう。ホテルの披露宴会場で盛大にやりましょうとは言いません。身内だけで結構です。前社長・新社長の好きな食べ物や飲み物なんかがあると良いですね。
できれば物理的な何かの交換もあるとさらにメモリアルな日になります。
事務所のマスターキーとか、創業時の写真とか、そのようなものを前社長から新社長に引き継いで、セレモニーを締めくくると良いでしょう。
というわけで、事業承継における心理的オーナーシップのお話でした。
物理的なオーナーシップの承継も大事ですが、まずはこの心理的オーナーシップを先行して進める事をオススメします。
ではまた!
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