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"香典PayPay"の奥深さたるや

昨日IPPONグランプリを拝見。
お題が数あるうち、Aグループの第1問目がまあ難しいものだった。

「『おでんツンツン』『醤油ペロペロ』の彼らをも忘れさせる程の悪行を教えてください」

まず分かるのは社会問題を取り扱ったお題であること。次に、隠れたルールとして、『○○+△△(擬音or擬態語)』を加味するのも重要になる(なくてもいいのかもしれないが)。加えて、そもそも『おでんツンツン』と『醤油ペロペロ』が実際、常軌を逸した忘れられない悪行だったこと。
こんなにもがんじがらめに縛られた鎖を潜り抜けて面白い回答をしなければならないという、1問目にしてはかなり高い壁が立ちはだかっていたと思われる。

その中でも大喜利界のキング、バカリズムさんはここでも秀逸な回答で会場を湧かせる。そのひとつが

『香典paypay』

だ。これを見た時は笑いすぎたと同時に腰抜かした。あまりにも華麗な一言である。

この面白さがどこからくるかを僕なりに見解を述べたいと思う。

①香典というのは基本的に現金で納めるアナログな方法が一般的であり、フォーマルとされる文化である。それとPayPayを組み合わせることで、デジタルな手段かつカジュアルな納め方といった2種類の対立構造が生まれる。これだけでもかなり奥深く、プロの業としか言いようがない。
②香典そのものに、"中身に何があるか"以外に遊びを入れるおもしろ回答が普通見当たらない。香典で面白さを含ませるには恐らく現金があるか、ないかの2択だろうか。少し捻れば、「香典の中身が数万円分のデパート商品券だった」なども考えられるが、paypayがくっつくとpaypayの中身が『香典』となり、香典自体の中身は無視して「デジタルな方法を取った香典のシステム」といった意味に変わる。
③『ツンツン』『ペロペロ』は『ツン×2』『ペロ×2』の擬音語系であるが、paypayにしたことでシンプルに英語表現。この擬音語から外れて斜め上を行く変化の付け方が絶妙。その発想は出てこない。
④言葉を受けて、想像してみる。納め方が、いやもっと砕けた表現すれば、支払い方法がPayPayということは、多分実際に葬式に赴かなくてもやれるかもしれない。またはQRコード決済か。そうなると、人手も手間も省けて楽ちんである。だが、フォーマルから外れるので『亡くなった方への悪行(や親戚などへの悪行にも?)』として周りに認められてもおかしくない。揉める画が見えてくる。
⑤大喜利には欠かせない、お客様との共通認識である。いかに多くの人間に簡潔で分かりやすく、絶対知ってるであろうことを組み合わせて笑いをとるか。そうなれば、香典もpaypayも多くの方が体験、もしくは知っていることだろう。けれど両者は分離して考えられている。そして無意識のうちに実現可能性を排除している。そこを突いてきたのもグッとくる。
⑥言葉の音からでも腹立たしさが込み上げてくる。ツンツンやペロペロは元々その言葉に悪いイメージなく使われるものだが、シチュエーションのせいでその擬音語が汚く見えてしまう。特にペロペロのペの鼻濁音は発音の軽さもあってか、より汚らわしさを増す効果があるように思える。PayPayも同じ鼻濁音の発音。よって中身の軽さが浮き立ち、ヤバい画が鮮明に描かれるのかもしれない。

思いついた効果だけでこれだけ書いてみたが、改めて凄いなぁと感心。

話は変わり、外国人にお笑いの面白さをどう伝えようか悩んでいる。漫才でさえ説明が難しいのに、大喜利の文化はどうしたら理解してもらえるのか、、、

しかし、日本語の表現の細かな違いと日本の文化、日本人の価値観が分かればわかるほど、お笑いが高度に練られた芸術かがよく伝わってきます。だから私は漫才もコントもモノマネも大喜利も意味がわかって堪能出来る日本で産まれて良かったなぁと思います。

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トロロ
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