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母との夢 |詩


京都が好きだった母。
一緒に行った職場の人達と
清水寺の前で子どもみたいに笑って写真を撮っていた。
その笑顔は夏の太陽に負けないぐらいに輝いていた。

京都が好きだった母。
修学旅行に行く私に
しおりを見ながら二条城には行くの?と聞いてきた。
その目は実際に行く私に負けないぐらいわくわくに満ちていた。

京都が好きだった母。
京都が好きだったことを知っている家族みんなで
遺影の写真に金閣寺でのベストショットを選んだ。
黒い服を選んでしまったけど
好きだった猫のTシャツにすればよかったかな。

あれからもうすぐ十年。
私は、
後輩に制服を譲って
幼馴染と振袖で寄り合って
親友と袴で門出に立って
二十代の折り返し地点を爆速で駆け抜けて。
身長は十年前と変わらないのに、
身体はしっかり十年分歳をとってしまった。

あれからもうすぐ十年。
私は、
初めて一人暮らしをして
初めてお酒を飲んで
初めて同棲をして
初めて地元じゃないところに住んで。
気持ちは十年前とあまり変わらないと思うのに、
考え方はしっかり十年分大人になってしまった。

そして今
私は
母が好きだった京都に住んでいる。
清水寺には何回も行ったけど、
母も私も色気より食い気だから
やっぱり三年坂での食べ歩きが一番ね。

私は
母が好きだった京都に住んでいる。
金閣寺には何回も行ったけど、
母も私も花より団子だから
やっぱり茶所での和菓子が一番ね。

私は
母が好きだった京都に住んでいる。
二条城にはまだ一回も行っていないけど、
まだまだ人生は長いから
いつか一緒に見に行こうね。


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