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日常雑感 「注射」

先日入院した時の話である。

日々代わる代わるに看護師が来ては私の体の世話をしてくれた。

色々な看護師がいる。

大体は忙殺されているので、当たりが強いのだが、たまに本当に天使が舞い降りたのかと思うほど優しい看護婦もいる。
中堅どころはあらゆる仕事を任されているようで、忙しさのあまり疲れ果て恐らく本人にも気づかないうちに何処かに怒りを溜めている、ように見える。
新人と現場の超ベテランは割に当たりが柔らかい。
 
入院中は体力が落ちているのでそれに対して色々と思わない。何かを感じたり思うのも面倒で、非日常の緊張感で独特の躁鬱状態な為、自分の身体が良くなる事を願うだけである。
ただ、今振り返るとどちらの看護師も必要なのだなと思う。

当たりが強い者がいることで患者を統率し、そうでない者がガス抜きをし、患者が我儘になりすぎずかつ不平不満の声が上がらぬよう管理しやすい仕組みができている。
飴と鞭。看守と囚人と同じだなと思う。
適正とか任意ではなく集団になると自然とそうなるのだろう。
患者も患者で、相手を見極めながら時に「聞き分けの良い患者」の振りをし、時には何でも良いわけでは無いということを知らせるために主張したりする。
ある患者には婉曲に、ある患者は我儘に。

それはただの仕組みである。
私はやはり空から見た無数にある小さな点の一つなのだ。

そして無数の点も一つもそれなりにその場所に馴染む。

だから勘は大体当たる。
 
ある朝、やたらと日焼けした二の腕の太い看護婦が、注射とゴムチューブのようなものを銀のトレーに載せてきた時、嫌な予感がした。
採血しますね、
と言ってその看護婦は、一昨日手術した切ったばかりの私の腹にトレーをポンと乗せた。

痛かったか痛くなかったかについては書かない。


(終わり)


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青乃
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