「私の文章のダメなところはどこ?」と聞く人は、自分のカラを破れない
長らく文章講師として仕事をしていると、ときどき、いや、けっこうな割合で、こんな受講生さんに出会う。
「先生、私の文章のダメなところを教えてください」
「私の文章には何が足りないのでしょうか?」
「どこを直せばもっといいものになりますか?」
「この部分をこう直せ、と具体的に指摘してください」
そう、名づけて「ダメ出しクレクレ星人」たちである。
誤解のないように言っておくが、このような質問をしてくる受講生さんたちは、すでに一定レベルの文章スキルをもっており、総じて、まじめで誠実で、真摯に自分の文章と向き合おうとしている「受講生の鑑」のような方たちだ。
ある程度のライティングはできるけれど、何かが足りない。自分自身、納得できる文章には至っていない。もっと魅力的な文章が書きたい!!
そんな向上心があるからこそ、「ダメ出しクレクレ星人」となって、
前出のような質問を私に投げかけてくるというわけだ。
はっきり言おう。
どんなに具体的なダメ出しをもらって、部分的にちょこちょこと修正しても、それだけでは、何も変わらない。変われない。
テストの模範解答を見ながら、自分の答えを同じように書き直し、何となくわかったような気がして安心する。それだけのことだ。
「○○さんに、この記事の執筆をお願いしたい」と、あなたの名前で執筆依頼が来るような書き手になりたいなら、ダメ出しをもらうことなんかに時間をかけている場合ではない。
いま、あなたに一番必要なのは、「自分を知ること」。これに尽きる。
・自分にしか書けないテーマは何なのか。
・自分にはどんな魅力や強みがあるのか。
・自分にはどんな文体が合っているのか。
・自分は文章でどのようなセルフブランディングをしたいのか。
・自分らしい個性やキャラクター性とは何か。
・読み手はあなたの文章に何を求めているのか。
もちろん、ダメ出ししてもらっても意味がない、と言っているのではない。ある程度書き上げた文章を、プロの目によって「世の中に出せるものかどうか」評価してもらうのは、至極真っ当で、意義のあることである。
プロならではの指摘や添削によって、自分では気づかなかった、語彙や文法の間違いを正したり、構成を整えたり、新たな表現方法を覚えたりと、プラスになることは間違いない。
つまり、優先順位でいえば、
まず「自分の魅力や強みを知り、しっかり伸ばすこと」。
その上で「プロのダメ出しによって文章の悪癖や曖昧な点を修正し、洗練された発信力の高い文章にしていこう」という話だ。
私が主宰している文章講座では、必ず最初に、
「この講座では、自分自身とじっくり向き合い、対話し、自分の中にあるさまざまな感情や想いを知り、言葉を引き出すことに焦点を置いてほしい」と伝えている。
そして私も、受講生のみなさんが講座で書いた文章と全力で対峙し、全身全霊を傾けて読ませていただく。すると、文面のあちこちから、その人にしか書けない細やかな思いやほとぼしる感情、ハッとさせるような気づき、ユニークな観点などが浮かび上がってくる。
そうやって発見したことを、できる限りの言葉でお伝えし、自分の魅力や個性に気づいていただくことが、講師の役目だと思っている。
・・・・・・と、ここまで書いてから、私自身、ある習い事の先生に、
「もっとどこをどう修正したらいいか、具体的に教えてほしい!」と思っていたことに気がついた。
ふぅ。まだまだ修行が足りないなぁ……。
「ダメ出しクレクレ星人」は、私のことだったのね。