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彼の文章がガラリと変わった、たった一言のヒントとは?

文章って、こんなに変わるものでしょうか!?

大人のための文章教室をスタートして、早10年……。
これまで何千回もの講座を通して、何千人もの受講生さんたちの文章を拝読しているが、
毎回毎回、とんでもない方向に感情が揺さぶられたり、
制御不能なほど心が震えたり、驚きと発見の連続なのだ。

何がスゴイってね、
受講生のみなさんが講座スタート時に書く文章が、
講座が終了する頃には、
まるで魔法にかかったように、
ぐんぐん変化し、みるみるうちに魅力的になっていく
のだ。


・・・と書くと、なんだか、
ものすごい秘伝の文章テクニックを教えてくれる講座なのか?
と思われるかもしれないが、そんなことは、もちろんない。

そんな秘伝があったら、私も教えてほしいくらいだが、
東京青猫ワークスで大切にしているのは、
一人一人の文章の魅力をぐっと惹き出し、
圧倒的に伸ばしていくための適切な言葉がけだ。

これにはけっこう自信がある。

たとえば、40代後半のAさん(男性)。
職場ではバリバリの国際派ビジネスパーソンながら、
プライベートでは、朗らかで柔和なお人柄と、和やかな笑顔が印象的な方である。

「仕事で書くような文章とは違う、魅力的なエッセイが書けるようになりたい」
そんな理由で講座に参加されたAさんが、初めて書いたエッセイは、
特に文句のつけようがない、きちんと整ったものだった。

いや、この「文句のつけようがない」というのが、エッセイを書くには、じつにやっかいなわけで……。

社会人としてのマナーが行き届き、品よくまとまってはいるけれど、
遊び心や奥行きを感じられない、親近感の湧かない文章になってしまい、
読んでも印象に残らない。

ビジネス文書や学校のレポートならいざ知らず、
「魅力的なエッセイ」という観点からみると、、、うーん、キビシイ。。。


しかし、ここからが講座の本領発揮である。
Aさんが最初に綴った、まるで化粧箱に入った贈答品のフルーツのように、きれいだけど、どこかよそよそしく、すました文章が、
書けば書くほど変化し、血の通った人間性を感じる文章になっていったのだ。

講座終了後、Aさんにお話を伺うと、
「こころ先生の、あの一言を聞いてから、自分の中で文章への意識がガラリと変わりました」
とのこと。

その一言とは・・・・・・たった、これだけ。

「正論を書かないでください」。

たとえば、
「タクシーに乗車するときは、マナーを守ることが大切だ。
運転手だけでなく乗客側も、狭い空間でお互いが心地よく過ごせるよう、思いやりの気持ちをもつべきだと思う」
という文章。
これを読んで、あなたならどう思うだろう?

言いたいことはわかるけれど、
いたって当たり前、想定内の内容ですよね。

「マナーを守ることが大切だ」って、そりゃあそうでしょうよ。
ツッコミどころがまったくない、まさに正論である。

このような文章を読んでも、
多くの人は右から左に流すだけで、脳内へのインプットはおろか、
5分後には読んだことすら忘れてしまう。

・・・人間てやつは、天邪鬼な生き物なんです。
正しいことやきれいごとをストレートに突きつけられても、
まともに受け止めてはくれないわけで。

じゃあ、どんなアプローチをすれば、
読み手を惹きつけられるのか?

「タクシーは、哀しくもせつない、人生の縮図である。
狭い車内で運転手に乱暴な態度をとりたがり、なぜかエラそうな物言いをする人は、実社会で十中八九、仕事ができず、空回りしている人間なのだ」

「手をあげてタクシーを呼ぶ。その瞬間から、あなたはすでに試されている。狭い空間だからと侮るなかれ。これまで多くの客を乗せ、会話し、ありとあらゆる人生のドラマを垣間見てきた運転手は、たったの3分で、その人の本質を見抜くことができる」

上の2つは、いま思いついた、テキトーな文章ではありますが、
こんな内容なら、「車内マナー」がテーマだとしても、
思わず注目してしまいませんか?

そう、
読み手が欲しているのは、
教科書みたいな正しい理論や整った言葉でなく、
自分の中にはない、意外性や新たな発想、着眼点なのだ。

「へぇ~、おもしろいことを言う人だな」
「なるほど、ユニークな考え方だな」
と思われる要素がないと、読者をぐいぐい自分の世界に引っ張っていくことはできません。

ちょっとだけ意識を変え、物事の本質をずらして考えてみる。
そんな「ずらし」の観点が、
おもしろい文章を生み出すコツ
だと思います。


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