詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ②
ひとつの作品としてとてつもない完成度と魅力を持った『メルヘル小惑星』は、『ナナヲアカリ』というアートワークのなかでも非常に重要な役割を果たしています。本稿では、『ナナヲアカリ』というコンテキストを背景にしたときの作品『メルヘル小惑星』を読み解いていきたいと思います。
『メルヘル小惑星』と『フライングベスト』と『ナナヲアカリ』
『メルヘル小惑星』が収録されている『フライングベスト』の歌詞カードの表紙にはこんなことが書かれています。
訳すとこんな感じになります。
アルバムのトップを飾る『ダダダダ天使』は、まさにそんな救いようのない「ダメ天使」自身の歌です。そして、ファンの間では常識であるように、「ダメ天使」とは『ナナヲアカリ』自身のことです。「そんなみんなの物語を全部、いま、ここに、寄せ集めました」とあるように、アルバム『フライングベスト』は、「ダメ天使」である『ナナヲアカリ』が地球に降り立ち出逢った個性豊かな人々の物語集です。
それでは『メルヘル小惑星』は誰が主人公の物語でしょうか?
『メルヘル小惑星』は、主人公が<空想>から<現実>に飛び出していく物語でした。つまり、主人公のヒントは「<空想>から<現実>に飛び出した人」です。
それは「ななをあかり」です。
『ナナヲアカリ』は舞台上での名前なので、『メルヘル小惑星』の主人公は、『ナナヲアカリ』を演じる等身大の人間の名前になるのですが、それは公表されていないので、ここでは便宜的に「ななをあかり」と表記します。
『フライングベスト』は『ナナヲアカリ』のメジャー1stアルバムです。それまでミュージシャンを志していた「ななをあかり」が、地元で活動したり、オーディションを受けたり、インディーズで活動したりしていたところから、メジャーデビューという大きな夢をひとつ達成することになります。そして、そんな『フライングベスト』が完結するということ自体が、「ななをあかり」の夢が叶うということをひとつ意味しており、セットリストの最後を飾る『メルヘル小惑星』は特にその象徴的な意味をひときわ強く持ちます。
メジャーデビュー直前の『ナナヲアカリはじめてのとうめいはん「♡」収穫ツアー』の最終ライブ@渋谷WWWは非常に印象的です。『メルヘル小惑星』は最後から2番目に演奏され、ライブは『ビビっちゃいない』で締めくくられます。『メルヘル小惑星』の演奏中、『ナナヲアカリ』は感極まるあまり歌を歌えなくなります。それでも『メルヘル小惑星』を歌い続けるオーディエンスの姿は、『ナナヲアカリ』を全力でサポートするとても心強い存在として映っています。そして、「メジャーデビューにビビっちゃいない!」の『ナナヲアカリ』の大きな一声で『ビビっちゃいない』を演奏し、ライブは幕を閉じます。メジャー1stワンマンライブが開催されるのは、そのおよそ5ヶ月後のことです。
『フライングベスト』と『ナナヲアカリはじめてのとうめいはん「♡」収穫ツアー』において、『メルヘル小惑星』は同じメッセージを持っています。ひとつは「ななをあかり」の夢が叶うこと。等身大の「ななをあかり」の物語だと読める『メルヘル小惑星』が『フライングベスト』の最後の曲であること、ライブ@渋谷WWWにて最後の『ビビっちゃいない』の前に『メルヘル小惑星』を演奏したこと、そして、その最中で『ナナヲアカリ』が涙したことはそれを象徴しています。そして、もうひとつのメッセージは、詞の最後のフレーズ、「惑わぬ星で今度こそ、一緒にいて」に集約されています。ライブ@渋谷WWWにて『メルヘル小惑星』を演奏する直前に『ナナヲアカリ』が話したことを抜粋します。
『メルヘル小惑星』で「あたし」が「あなた」に言った「一緒にいて」は、「ななをあかり」がリスナーに向けて言った「一緒にいて」でもあります。『メルヘル小惑星』は、「ななをあかり」の夢が叶う瞬間の歌、そして、「ななをあかり」が一緒に夢を叶えてほしいと口説く歌でもあります。本当にその夢が叶うかどうかは、「みんな」にかかっているんだと思います。
まだ知らない人も、もう知っている人も、
今一度、ナナヲアカリに口説かれてみてはいかがでしょうか。
歌詞『メルヘル小惑星』
MV『メルヘル小惑星』
下記、前編