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詩詞評|『メルヘル小惑星』ナナヲアカリ②

ひとつの作品としてとてつもない完成度と魅力を持った『メルヘル小惑星』は、『ナナヲアカリ』というアートワークのなかでも非常に重要な役割を果たしています。本稿では、『ナナヲアカリ』というコンテキストを背景にしたときの作品『メルヘル小惑星』を読み解いていきたいと思います。

『メルヘル小惑星』と『フライングベスト』と『ナナヲアカリ』

『メルヘル小惑星』が収録されている『フライングベスト』の歌詞カードの表紙にはこんなことが書かれています。

Once upon a time, lived a hopeless angel at a place
slightly different from the earth called the heaven.
One day she thought to her herself
“I want my rumors in the street.”
And so, she dives down quickly to the ground,
her angel wings didn’t allow her to fly.
When she has fallen to earth, she met many different people
with rich personalities.
All their stories are gathered, right here, right now.

『フライングベスト〜知らないの?巷で噂のダメ天使〜』歌詞カードより

訳すとこんな感じになります。

むかしむかし、地球とはちょっと違う天国と呼ばれるところ、
どうしようもなく救いようのない天使がいました。
ある日 彼女は思いました。
「私は巷でなんて噂されているのか知りたい」
それから、彼女はすぐさま地面に向かって飛び込みました。
彼女の天使の翼では飛ぶことはできません。
地球に降り立つと、彼女はたくさんの個性豊かな人たちに出逢いました。
そんなみんなの物語を全部、いま、ここに、寄せ集めました。

筆者訳

アルバムのトップを飾る『ダダダダ天使』は、まさにそんな救いようのない「ダメ天使」自身の歌です。そして、ファンの間では常識であるように、「ダメ天使」とは『ナナヲアカリ』自身のことです。「そんなみんなの物語を全部、いま、ここに、寄せ集めました」とあるように、アルバム『フライングベスト』は、「ダメ天使」である『ナナヲアカリ』が地球に降り立ち出逢った個性豊かな人々の物語集です。

それでは『メルヘル小惑星』は誰が主人公の物語でしょうか?
『メルヘル小惑星』は、主人公が<空想>から<現実>に飛び出していく物語でした。つまり、主人公のヒントは「<空想>から<現実>に飛び出した人」です。

それは「ななをあかり」です。

『ナナヲアカリ』は舞台上での名前なので、『メルヘル小惑星』の主人公は、『ナナヲアカリ』を演じる等身大の人間の名前になるのですが、それは公表されていないので、ここでは便宜的に「ななをあかり」と表記します。

『フライングベスト』は『ナナヲアカリ』のメジャー1stアルバムです。それまでミュージシャンを志していた「ななをあかり」が、地元で活動したり、オーディションを受けたり、インディーズで活動したりしていたところから、メジャーデビューという大きな夢をひとつ達成することになります。そして、そんな『フライングベスト』が完結するということ自体が、「ななをあかり」の夢が叶うということをひとつ意味しており、セットリストの最後を飾る『メルヘル小惑星』は特にその象徴的な意味をひときわ強く持ちます。

メジャーデビュー直前の『ナナヲアカリはじめてのとうめいはん「♡」収穫ツアー』の最終ライブ@渋谷WWWは非常に印象的です。『メルヘル小惑星』は最後から2番目に演奏され、ライブは『ビビっちゃいない』で締めくくられます。『メルヘル小惑星』の演奏中、『ナナヲアカリ』は感極まるあまり歌を歌えなくなります。それでも『メルヘル小惑星』を歌い続けるオーディエンスの姿は、『ナナヲアカリ』を全力でサポートするとても心強い存在として映っています。そして、「メジャーデビューにビビっちゃいない!」の『ナナヲアカリ』の大きな一声で『ビビっちゃいない』を演奏し、ライブは幕を閉じます。メジャー1stワンマンライブが開催されるのは、そのおよそ5ヶ月後のことです。

『フライングベスト』と『ナナヲアカリはじめてのとうめいはん「♡」収穫ツアー』において、『メルヘル小惑星』は同じメッセージを持っています。ひとつは「ななをあかり」の夢が叶うこと。等身大の「ななをあかり」の物語だと読める『メルヘル小惑星』が『フライングベスト』の最後の曲であること、ライブ@渋谷WWWにて最後の『ビビっちゃいない』の前に『メルヘル小惑星』を演奏したこと、そして、その最中で『ナナヲアカリ』が涙したことはそれを象徴しています。そして、もうひとつのメッセージは、詞の最後のフレーズ、「惑わぬ星で今度こそ、一緒にいて」に集約されています。ライブ@渋谷WWWにて『メルヘル小惑星』を演奏する直前に『ナナヲアカリ』が話したことを抜粋します。

みんながいなかったらCDもMVも出せない。
ナナヲアカリは私1人じゃなくて、
ナナヲアカリっていうプロジェクトだから、
みんながこのプロジェクトの一員だって思ってくれたら嬉しいと思っています。

『フライングベスト〜知らないの?巷で噂のダメ天使〜』初回生産限定A版DVDより

『メルヘル小惑星』で「あたし」が「あなた」に言った「一緒にいて」は、「ななをあかり」がリスナーに向けて言った「一緒にいて」でもあります。『メルヘル小惑星』は、「ななをあかり」の夢が叶う瞬間の歌、そして、「ななをあかり」が一緒に夢を叶えてほしいと口説く歌でもあります。本当にその夢が叶うかどうかは、「みんな」にかかっているんだと思います。

まだ知らない人も、もう知っている人も、
今一度、ナナヲアカリに口説かれてみてはいかがでしょうか。

歌詞『メルヘル小惑星』

ダーリンダーリン あなたと今からふたり

宇宙を漂いつづけて
あなたに出逢えてみたけど
ふたりの糸がつづくのは
あたしじゃ見えない場所みたい

メルヘル気取りな態度も 間違っているならごめんね
自分のダメなとこ全部、全部知っているさ

そのスポットライトに当たっていたいから
夢見遊びをしようか

(3、2、1、小惑星!)

ねぇダーリンダーリン あなたと今からふたり
小惑星a.k.aマイワールドで 愛のあいだ超えダイブ
理想妄想が不正解だって あなたが好きだ
それ以上も以下も 要らない!

(うぉーおーおーおー)夜空にも手が届きそう
(うぉーおーおーおー)星が周るまであなたと、ずっと一緒

夢見てたいと願うとき
もっとあなたが遠ざかっていく
きっと近づくだけ離れるのは
違う星で見上げているからだ

ずっともしものもしもでいいなら
心地いいのは逃避メルヘンさ
だけどほんとのもしもがあるなら 全部あなたに使うよ

ヘルかヘブンかわかんないから
もう夢見遊びはやめた

ねぇダーリンダーリン あなたと今までいた
夢みたいな場所まで

(3、2、1、小惑星!)

ねぇダーリンダーリン あなたとさよならしたら
小惑星a.k.aマイワールドから果ての果てへダイブ
惑星外は不安定だって あなたが好きだ
それ以外の気持ち要らない!

(うぉーおーおーおー)あなたにも手が届きそう
(うぉーおーおーおー)惑わぬ星で今度こそ、一緒にいて

『フライングベスト〜知らないの?巷で噂のダメ天使〜』歌詞カードより

MV『メルヘル小惑星』


下記、前編

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