【無料公開します】書籍「全店舗閉店して会社を清算することにしました。 」 はじめに
こんにちは、福井寿和(@aomorio)です。
以前からTwitter等ではお知らせしてきましたが、noteの記事『全店舗閉店して会社を清算することに決めました』(5月8日投稿/note.com/aomorio/n/nd4264eabe912)をきっかけに、11月2日、実業之日本社より「全店舗閉店して会社を清算することにしました。 コロナで全店舗閉店、事業清算、再出発を選んだ社長の話」を出版することになりました。
そこで発売前ではありますが、「はじめに」を無料公開することにしました。
なぜ無料公開するのか?
出版もビジネスなので無料公開による販売促進の意味合いは当然ありますが、
全店舗閉店して会社を清算することに決めましたでも書いた通り、コロナ禍において、今この瞬間に会社をたたんだ人がここにいること、会社をたたんでも前向きに明るい人生を生きている人がいることを世の中に伝えていきたい。
そして、人生の決断に悩む人に、私の経験を通じて何かの気づきを得てもらい、そんな揺るぎない思いがあるからです。
会社をたたんだからと言って決して人生がどん底に落ちるわけではありません。
たたみ方さえ間違わなければすべての信用を失うこともなく、次のチャレンジをすることもできます。
私自身、廃業を経験するまでは全く想像できないことでした。
会社の倒産や廃業は表立って言うことでもないため、知見が蓄積されにくく、周りにも経験者が少ないために実際のところはどうなるのかわからないのです。
だからこそ、私の経験には大きな価値があると思いますし、それを発信していくことにはもっと価値があると信じています。
そのためにはこの書籍を多くの人に手にとっていただき、今大変な思いをしている方や決断に迷っている方に少しでも勇気を与えたい。そう強く思っています。
そこで導入部分である「はじめに」を無料公開することに決めました。
読んでみて共感いただける内容でしたら、ぜひAmazonや書店でご購入いただければと思います。
なお、本書は以下の構成となっております。
<目次>
■はじめに
■第一章
創業からコロナ襲来まで【創業〜2019 年末】
■第二章
コロナ影響開始〜閉店決断【2019 年 12 月〜4 月】
■第三章
会社清算開始〜「決断」の 反響【2020 年 4 月〜5 月】
■第四章
全店舗閉店後〜これからの挑戦【2020年5月以降】
■第五章
全店舗閉店の経営者が今だからこそ伝えられること
それでは「はじめに」を無料公開します。
はじめに
この本は、私が経営していた飲食店を全店舗閉店して会社を清算した、いわば廃業の経験を書いた本です。この本を手にとったあなたは、少なからず会社経営に興味があるか、実際に経営に携わっている方だと思います。もしくは、事業ではなくても、いま取り組んでいることを継続するか、撤退するか決めかねている方もいるかもしれません。
2020年4月、飲食店を5店舗経営していた私は、新型コロナウイルス感染症の影響により大きく売上を落とすことになりました。人々の生活スタイルはガラッと変わり、このまま店舗を経営していても近い将来立ち行かなくなることは明白でした。
4月下旬のこと、様々な葛藤と苦悩を乗り越えた末に、経営していた5店舗を全店舗閉店して会社を清算することを決断しました。この決断に至るまでの背景をつづったブログ『全店舗閉店して会社を清算することに決めました』(5月8日投稿/note.com/aomorio/n/nd4264eabe912)は、2日間で140万PVを超える反響をいただき、飲食店従事者をはじめ、経営者、著名人、政治家など多くの方から共感をいただきました。
その背景には、新型コロナウイルス感染症の影響により多くの経営者が経営難で苦しんでいたこと、休業や外出自粛により自宅待機が余儀なくされ、生活に影響が出た方々が多かったことがあると思います。
また、新型コロナウイルスが経済へ影響し始めると言われていた初期の段階で閉店を決断したことや、『全店舗閉店』というインパクトがある言葉がSNS上で拡散されたことも要因にあると思います。店舗が閉店するというネガティブなことにもかかわらず、従業員と私が笑顔で写真を撮っていたその関係性にも、多くの反響をいただきました。
国内で緊急事態宣言に向けた動きが広まる中、私が経営していた店舗の売上は大きく落ち込み、連日見たことがない売上を記録しました。
昨対比で70%、50%、25%と信じがたい数字が続き、店舗の現場で働いている50名弱の従業員にも不安と疲れが見られるようになりました。
「このまま続けても赤字が膨らむ。従業員も働くことを望んでいない」
4月上旬、悩んだ末に全店舗の休業を決断しました。
ゴールデンウィークが明けた5月7日、私が拠点を置く青森県では休業要請は解除されましたが、状況が急に変わるわけもなく、依然としてソーシャルディスタンスを求められる状況でした。根本的にコロナのリスクがなくなったわけでもありません。
今後の経済についてどう考えるべきか。コロナの終息を悲観的に考え、自分たちがコントロールできる範囲で、会社の数字を現実的に突き詰めて考える必要があると考えました。
私が運営していた飲食店の業態と会社の財務状況では、仮に3ヶ月以内に売上が70%程度に回復したとしても年内倒産が濃厚。銀行融資を受けることや助成金で当面のキャッシュを確保することも可能でしたが、返済が始まった後のキャッシュフローをどうするのか? ウィズコロナ・アフターコロナに則した収益モデルへの転換、そのための資金と労力なども考えると、来年以降も非常に厳しい状況が続くと考えました。
・座席の間隔を開けて店を営業して採算はとれるのか
・一日に何度も共有部分を消毒する労力とコスト
・万が一コロナが発生した場合の経営リスク
・お客様からの指摘、クレームによる現場の疲弊
これがいつまで続くのか先行きが見えず、コロナ以前の飲食店運営とは明らかに状況が変わることは容易に想像できました。
テイクアウトを強化しても従来の売上を補完できるほどのレベルではなく、営業すればするほど赤字になる状態です。ネット通販を始めることや店の業態を変えることも考えましたが、私の中では復活する将来像が描けず、新規事業をやるには飲食店を運営していることが重荷になってしまうという結論に至りました。
そして、4月の休業から営業を再開することなく、全店舗閉店することを決断しました。
再開を待ってくれていたお客様のご期待に応えられなかったことには、本当に悔いが残りました。「食べ納めしたかった」「コロナが終わったら行きたかった」と言ってくれたお客様には本当に申し訳なく思います。
しかし、コロナの傷が浅いからこそ、早期の事業整理が必要だと判断したのは事実です。仮に営業を再開して、予想通り従来の業績に戻ることがなかったとしたら、私の会社が倒産することで取引先の連鎖倒産の引き金になった可能性もありました。従業員に給料を支払えないまま倒産することも考えられました。守るべき人たちを最低限守れるのは、いまのタイミングしかないと考えました。
私はこの経験から多くのことを学びました。自社の倒産が現実味を帯びるまでは、廃業することは悪であり、事業を継続することこそが正義だと考えていました。廃業した先の人生はどん底で、もう二度と表を歩けないとも思っていました。
しかし、早期の事業整理は取引先や従業員を救う手段になり得ること、倒産という現実に実直に向き合い、一つ一つに誠実に対応していけば、必ず道は開けるということがわかったのです。結果として、取引先、従業員からも感謝され、金融機関にも最小限の損害にすることができました。
政府の新型コロナウイルス支援策がまだ見えていなかった状況下での今回の決断は、「非常に早かった」と言われます。
それは、このタイミングで決断したことに対する賞賛と、決断が早すぎるのではないか? 何か裏があるのでは? という疑問があるからだと思います。
しかし、この決断ができたのは、その背景に私自身がこれまで会社経営で培ってきた土台があり、閉店を決める際に確固たる軸を持つことができたからに他なりません。この学びと経験は、新型コロナウイルス感染症が終息した後の世界にも、広く伝えていかなければならないと、強く思っています。
また、こうして会社をたたむことになった人間が、次のステップに向けて明るい人生を送っている姿を伝えることで、再チャレンジできることを世の中に伝えていきたい。このような思いから本を書くことにしました。
人生は苦難と決断の連続です。読んでいただいた人に少しでも前向きに考えられるヒントを届けられたらと思っています。
〜おわり〜
最後に
少しでも共感した、続きが気になる、と思ってくださった方はぜひ書籍をご購入いただければと思います。
今後、書評キャンペーンや書籍購入者限定のイベントなど、本を買ってくださった方限定の企画も考えております。
その際はnoteでまたお知らせします。
また、感想はぜひSNSにも投稿お願いします。
ハッシュタグ「#全店舗閉店」に投稿していただければ、私も目を通しますしリツイートなどさせていただきます!