冬至に貢献できなかった話
冬至には、南瓜を食べて柚子風呂に入る。
子どもの頃から欠かさずそうしてきたのに、
「知ってる!知ってる!」
と冬至の話を頭の片隅に追いやっていたことが原因だった。
突然だが、イオンは20日と30日がお客様感謝デーで5%オフだ。
今週の火曜日は、お客様感謝デーと火曜デーが重なったので、絶対に買い物に行くぞ!と決めていた。
そこでも、南瓜売り場には”冬至には南瓜を”と書かれていた。
それを見ても、私は頭の中で、
「そんなこと知ってるよ!食べるよ!」
と思い、半分にカットされた南瓜を買って帰った。
するとどうしたことか、翌日にチキンを、ひしお(『万葉集』にも掲載されている日本古来の伝統調味料)に漬け込んで煮込む時に、
かぼチキン(我が家では、南瓜+鶏肉を煮込む料理をこう呼んでいる)に仕上げてしまったのだ!
そう、かぼチキンは水曜日の出来事で、木曜日が冬至だ。
それに気付いたのが冬至の当日だった。
鍋の中に少しだけ残ったかぼチキン(家族分は到底足りない)をお皿に移し替えながら、子どもたちに聞いた。
「今日の給食、何だった?」
私は必死だった。
給食で南瓜を食べていたら冬至に南瓜を食べたことが達成されるし、何より、家族分には到底足りないかぼチキンで冬至を迎えているという罪悪感が少しでも和らぐ気がしたのだ。
「かぼちゃのサラダと〜・・・」
と言い始める子ども達。
よし!!!小学生組と幼稚園組は、南瓜を食べたことは達成された!!!
中学生には、お弁当にかぼチキンを入れていたのでセーフ!!!
と、ここまでは良しとしよう。
残るは柚子風呂だ。
ご飯を作りながら、チラチラ視界に入る柚子を見ながら、
「知ってるよ!お風呂に入れるから!」
と思っていた。
ところが、ダラダラご飯を食べる子ども達。
他の兄弟のお迎えの時間も迫ってくる。
お迎えの前にお風呂に入れないといけない。
洗い物も済ませなければ!
・・・とバタバタしている内に、柚子の存在はすっかり頭から消え去り、この日のために取っておいた柚子は、なかったものと化した。
それに気付いたのは、お迎えの時間。
「しまった!!!柚子風呂!!!!!」
と思い出しても仕方がないので、まだ他の兄弟が柚子風呂に入るチャンスが残っている。
帰宅してから、またご飯の準備をして、
小さい子どもたちの寝る準備や歯磨きなどバタバタしていたら、
「しまった!!!柚子風呂!!!!!」
というわけで、もう最後の最後、中学生組が帰宅してから、ご飯の準備をして・・・
・・・
柚は、まだ柚子風呂の役割を果たせないまま鎮座している。
それは何故か。
「知ってる!知ってる!」
と何度も頭の中でかき消してきたからだ。
知っていることを、知ってる!と流さずに、初めて聞いたかのような面持ちで捉えていれば、南瓜も柚子風呂も心地良く達成されたはずなのだ。
冬至というその日しかできないからこそ価値があるのであって、翌日に入っても価値が半減される気がするので、不思議の国のアリスの「なんでもない日」状態の気分に持っていかないといけない。
これは、知っていることでも流さずに聞きなさいということへの戒めだなと感じた。
当たり前のことを知っていると思わずに、当たり前のことを当たり前にできることって、尊いんですよというメッセージが今年の冬至に降ってきた。