ざっくり学ぶ、在庫管理のきほん2
今回は前回の「ざっくり学ぶ、在庫管理のきほん」の続きです。
前回説明しきれなかった部分をもう少し掘り下げていきます。
それでは早速、ざっくり学んでいきましょう。
原材料在庫
原材料在庫については、調達してきた資材を一時保管しておくものです。
目的は生産変動でもラインに安定供給するため保管する事です。
どの部品、どのロットにその資材が投入されるか明確では無く、製造原価に紐つかないので保留されている状態です。そのため会計上も別管理しておく必要があります。
保管場所は製造ラインに近い場所がより安全ですが、輸送費や保管費を考慮すると、サプライヤーの拠点とラインへの供給方法等からバランスを見極める必要があります。
製品在庫
製品在庫については販売計画や顧客との契約により在庫とするものです。補修部品などのサービスパーツもこの製品在庫として管理されます。
目的は顧客に対して安定供給する事で、急な注文にも迅速に納入するために保管します。
販売機会を逃さないため、契約納期を守るために在庫としますが、逆に売れ残りの可能性もあり、安易に在庫にするとリスクがあります。
どこで保管するかも顧客の動向により変わり、市場を見極めて、戦略を立てる必要があります。
仕掛在庫
仕掛在庫は最も在庫管理が難しい在庫です。
仕掛在庫は原材料や製品の様に倉庫に保管して置くものでは無いからです。
原材料在庫から払い出され完成するまでが仕掛在庫です。しかしながら、日々大量に各工程で生産されていて、荷姿が変わっていく資材を管理するのは至難の業です。
稀にボトルネック工程の前後で倉庫や保管エリアを構える場合があります。全体の影響を与えないように、原材料や作業の完了した半製品を一時的に保管します。
仕掛在庫は生産に合わせて動いていくため、早い回転で在庫が変動していくのが一般的で、在庫把握は非常に難しいです。そのため無理に全て在庫管理するよりは保管エリア・倉庫を設置しているポイントを重点的に管理するのが妥当でしょう。
在庫回転率
在庫の健全性を見る指標です。
在庫が1アイテムだけであれば非常に管理は簡単ですが、現実は多数のアイテムを同時に保管します。この際に適正な在庫量なのか確認する方法が在庫回転率です。
単一アイテムの在庫であれば数量でも良いのですが一般的にはSKUが異なる様々なアイテムを在庫としていますので金額で見るのが最適です。
一般的な計算式としては以下の通りです。
在庫回転率=売上原価(売上金額)÷平均在庫金額
在庫の健全性を見ているので、必ずしも上記数値を使わなくても大丈夫です。在庫が何回転しているか分かればいいのです。
年間払出金額÷(期首在庫金額+期末在庫金額)÷2
が比較的簡単かもしれません。
1年の在庫期間で測定した在庫回転率が「1」であれば、1年に1回しか使われなかった、つまり1年間保管されていたという事になります。安全在庫でもない限り、指標としては非常に悪い数値です。1年も保管せず、1ヶ月前に納入して使えば良く、その資金や倉庫費用は無駄だったとなります。
もし1ヶ月でキレイに回っていれば在庫回転率は「12」です。業界や製品にもよりますが、「12」を上回っていれば、比較的良い数字でしょう。
アイテム単位で回転率を算出し、それぞれの在庫計画、購買計画を見直すという利用もでき非常に便利な指標といえます。
在庫管理作業の生産性
在庫管理作業の生産性についても説明したいと思います。
在庫管理していると、その管理作業の人員が妥当なのか、作業価格が妥当なのかもよく議論になります。無駄な管理費用を使っているのではないかと社内で疑義が掛けられるからです。
これに対しては1個当たりの作業時間や1人当たり1日の作業個数などの指標(KPI)を設定し常に監視しておく事が重要になってきます。
また作業者にもこのKPIを毎日共有する事も重要です。朝礼、昼礼、掲示物などで指標の実績や推移をグラフなどで共有するとモチベーションが上がります。
「今日はもっと数値を上げよう!」「他のチームに負けないようにしよう!」と言った具合です。数値が上がらないと自発的に新しい手を講じようともしてくれます。これはゲーム心理です。私自身も実績グラフを見せられると何とかしようと思ってしまいます。
逆に何も目標がないと、早く仕事終わったらいいなとか、軽めに流して行こう、なんて心境になりますよね?これを防ぐためにもKPIの共有です。
作業を委託しているなら生産性の改善目標を数値(例:KPIを○○%削減)として契約に織り込むのも一つの手でしょう。勿論、丸投げではなく達成できない障害があれば、それを積極的に取り除くの事を契約で約束しておくと、信頼関係も高まり、次の改善に繋がります。
KPIの実績推移や改善状況を説明できれば、人員が多過ぎるといった不毛な議論から解放され時間の節約ができます。コストだけで議論する担当者の目を実務に向けさせ、より建設的な議論もできるでしょう。
まとめ
財務的な話と実作業の話と混ざりましたが、どちらも重要でバランスを持って管理できると物流がより一層良くなるのではと期待しています。
広い俯瞰的な視点と現場の視点、どちらも大切にして貰えればと思います。
以上、今回はここまで。
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