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シッピング・ダメージから保険を考える

今回は悲しい話題です。
物流の仕事でシッピング・ダメージなどの事故は避けて通る事が出来ません。

利益を上げるはずだった製品が到着してみると破損していたという場面にどうしても遭遇します。こうなると緊急対応、深夜、休日対応での作業で再出荷になり、海上輸送だったものが航空輸送になり、ドタバタになります。利益どころか、大きな損害になってしまいます。

事故時に輸送業者に腹を立てる荷主の気持ちは良く分かります。しかし、冷静になってシッピングダメージについて考えてみましょう。

事故が当たり前の世界


残念ながら輸送中の貨物の破損は日常的に発生しています。

輸送中はどのモードであっても加速度や振動、揺れが発生します。

トラックであれば避けられない急ブレーキや急ハンドルもあるでしょう。船であれば悪天候の高波で揺れるのは当たり前です。航空機であれば気流の影響で急降下やハードランディングも当然、起こり得ます。

更に荷扱い時にもリフト、クレーン、手作業での荷積・荷卸と事故が起きるポイントばかりと言えます。

この環境を前提に製品の出荷をしていかないといけない世界なのです。

不十分な梱包


ダメージの中には不適切な梱包が起因しての事故も少なくありません。

固縛が不十分、梱包箱の強度不足など、そもそも輸送に耐えられない梱包もよく見かけます。フォークリフトの爪が入らないパレットや持ち上げると簡単に曲がってしまう梱包もあります。重心が大きく偏っていて荷崩れ、落下事故を誘発させる貨物もあります。

製品の特性でやむを得ないものもありますが、重心位置をマークする、クレーン・フック位置をマークするなどして、事故のリスクを少しでも減らす努力はしたいものです。

輸送環境を良く研究した上で、適切な梱包を設計しないといけません。


保険でカバー?


この様な状況で輸送中の事故は保険でカバーされるべきものとして考えられています。

何故なら輸送事故の都度、輸送業者に求償していては輸送サービスが成り立たないからです。実際に裁判で争われた例は多数ありますが、ほぼ荷主の敗訴で終わります。起こりうる事故に対して保険を掛けていない人が悪いという結論です。

ただ現実はこれで簡単に済む話では無いです。

実際どうなるかと言うと
事故発生→保険掛けてない→輸送業者へ求償→調整難航→輸送契約打切りで脅す→求償に応じる
と言った具合です。
力関係で輸送業者がほぼ負けてしまいます。(最近では下請法違反、独禁法違反になりますのでおもむろに脅す会社は少ないと思いますが、無言の圧力は掛けられるでしょう。)

この様なトラブルになるのは製品が高額の場合です。輸送業者は利益が飛ぶだけで無く、大赤字に陥る場合も少なくないでしょう。仕事が無くなるか、大きな損害を出すか、輸送業者の経営者は苦渋の決断を迫られる事になります。

部外者が聞くとかなり酷い話ですが、荷主の担当者も損害の責任を社内で強く問われているはずで、死に物狂いで交渉に挑まざるを得ない状況に追い込まれていると思います。

ただ問題はシンプルで、荷主が保険を掛けていない事が問題です。保険は必ず掛けましょう。
損害、遅延はやむなし、求償では無く、せめて保険で損害額を最小限に抑えるのがビジネスとしては正解です。

輸送業者の方は付保しない荷主の輸送は受託しないと言う強いポリシーを持ってもいいでしょう。中々、切り出すのは難しいかも知れませんがいざ損害が出ると、その仕事をしない方が良かったという事になりますので、何かの機会にお客さんと保険について話あってみてもいいでしょう。


物流の自動化


物流の自動化が急速に進んではいますが、すべての貨物が規格化される訳でもなく、自動化が適用されるのは当面はごく一部だけです。手で持てるダンボール程度であれば、ロボティクスの活用も可能ですが、海上コンテナのような何10tもある貨物は従来方式が効率的で出来ても部分的な自動化に留まると思います。

船舶や航空機の操縦はかなり前から自動運転は可能になっていますが、自然と戦い臨機応変な対応が必要となる事から、人による操作が求められ続けています。

自動化されれば事故のリスクも減りますが、新たな事故も想定され貨物のダメージがゼロになるのは、かなり先の話です。

ダメージへの対策は荷主自身が行なっていかないといけない状況はしばらく変わらないです。


まとめ


私自身、シッピング・ダメージは輸送業者の立場でも、荷主の立場でも幾度となく見てきました。事故で誰も得することは無く、撲滅したいと切に願っていますが、現実は難しいです。

多くの荷主が輸送環境について理解する事、そして輸送業者も荷主が事故時に非常に苦しんでいる事を理解して、お互いの品質を常に上げていく努力が重要では無いかと思っています。物流に関わるすべての人の物流リテラシーが向上する事を願っています。

以上、今回はここまで。
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