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FIFO

今回はFIFOに関するポストまとめです。

思いつくままにポストしたので、どこから読めばいいか分からなかったと思います。物流の基本が沢山詰まった重要な用語ですので、しっかりと整理したいと思います。


大きく異なる2つの意味


FIFO

物流用語でありながら2つの大きく異なる意味を持つ言葉です。

  1. First In First Out

  2. Free In Free Out


です。
これをそれぞれ解説していきたいと思います。

First In First Out


“先入れ先出し”を意味しています。

これは倉庫内で先に入れたモノを先に出す事です。耐用期限がある商品では特に重視されます。当たり前のように聞こえますが実際には難しいのです。倉庫ではスペースに限りがあるので、次から次へと荷物を被せ、手前の新しく入ったモノを先に出した方が楽なのです。コレをさせないためにFIFOを要求します。

これの究極の改善策はコンビニの飲料です。
後ろから搬入して、前から取り出します。スロープになっているので取り出されると、前に滑り、後ろが空いていきます。そこに新たに補充する仕組みで、正にFIFOを実現しています。

Free In Free Out


“荷揚荷役料荷主負担”の意味です。FIOと略す場合もあります。

バルクや傭船契約をしていないと馴染みがないかもしれません。本船の荷渡しをどのポイントで行うかを表しています。FIFOでは本船上での引き渡しを意味しています。トラックでいうところの”車上渡し”に相当します。
この契約では荷受け側が本船荷役の手配と費用を負担します。この契約を行う場合は相当な金額の取引をしていて荷役費用も大きくなりますので重要な契約事項です。

FIFOの対義語としてBT:Berth Termがあります。コンテナ船は全てこの契約です。ターミナルで荷物を受け取らざるを得ないためです。荷主が個別に荷役費用を負担する事は基本的にはありません。こちらが一般的になりFIFOの言葉自体を使う人は少ないのではないでしょうか。

倉庫のFIFOで苦戦した話


倉庫の要求仕様が整備されてない時に古い在庫ばかりが残っている事が分かり、倉庫側に古いモノから出して下さいよとお願いすると

「そんな事は指示受けてないです。そもそも入荷予定が分からないじゃないですか。たまに貰える予定も全然違うじゃないですか。どうやって計画して並べるんですか?今からやってもいいですけど追加料金下さい!」

何も言い返せません…。フォーキャストの精度は宝くじレベルでした。

そこで新規立ち上げの倉庫には見積取得前に要求仕様書を作成してFIFOを盛り込みました。予定の精度は悪いですがそれも含めて見積もってもらう事で揉め事は無くなりました

次にWMSで自動的に古い在庫から搬出するように作業指示を出しました。これで全て解決です。作業者も適当に奥に置くと、毎回奥から取り出さないといけなくなり自ら首が締まるので、必然的にFIFOになるように配置していきます。

WMSのFIFOの指示も当たり前では?と思う人も多いかもしれませんが、実際にはかなり難しいです。納入単位で在庫を管理しておく必要があります。一般的な在庫管理はある商品が入った、出た、の数量を記録しているだけだからです。これだと、どの在庫が古いのか識別できませんので自動で指示が出来ないのです。在庫管理方法を根本的に変える必要があり、FIFOを意識しておく事はWMS、在庫管理上とても重要なのです。

船のFIFO


本船の契約をしてるにもかかわらず、FIFOを知らない方は少なからずいます。良くあるのが知らないまま安くFIFOで本船契約をしてしまい、本船到着後に高額な荷役費用が請求されて泣くパターンです。

港湾の営業をしている時は、新しい本船の到着予定が来ると必ず荷役前にBTですか?FIFOですか?と確認してました。

えっ?と返ってきたら、ほぼ負けパターンです。商社の新しい担当の方で安く契約出来た!と喜んでいる人が多い印象があります。(個人の主観です)

コンテナ船のFIFO


さて、この話はバルクだけの話と思いきやコンテナ船でもFIFOで揉める事はあります。

それはコンテナ船をチャーターをする場合です。

コンテナ船だから当然、コンテナを降ろしてくれると思っていると大間違いです。チャーターの場合には見積がBTなのかFIFOなのか、しっかり確認しないといけません。

トリッキーなのが着岸する岸壁によってBTとFIFOが使い分けられている点です。

今まで請求無かったじゃない?何で今回は荷役費用の請求来るの?と思い見積を見ると確かに…。

そして荷役会社が請求先を間違える場合もあります(私も良く間違えそうになりました汗)。鵜呑みにせず、しっかり契約を確認しましょう。

もう少し余談をすると、通常のコンテナ船でBTでないものもあります。FIFOではないのですが、艀などから起重機船などを使ってターミナルを経由せず直接コンテナ船に積み込むものです。特殊な積込みで艀の手配や専用吊り具も必須で、これも荷主側の負担となる場合が多いでしょう。

コンテナ船の代理店費用


更に深掘りすると

FIFOのコンテナ船の船舶代理店の費用はどちらが負担するのか?という問題もあります。

FIFOで荷揚げから荷受人の手配と考えると着岸するまでの費用なので本船側が負担と言えます。

ところが実際には荷役と密接な業務ですので荷役費用の一部とも解釈できます。

実際のところはっきりしておらず、契約にも見積にも記載がない事も多いので揉め事の一つです。

こちらは私も明確な答えを持っていません。契約によるという結論でしょうか…。個人的な印象としては岸壁によって異なるです。

ではなぜ岸壁によって扱いが変わるのか?

コンテナ船独特の事情があります。

コンテナ船の場合は定期航路を持っている場合が多く、その航路の岸壁であれば阿吽の呼吸で手配してくれる代理店と荷役会社がいる訳です。そこに荷主が荷役手配するとゴチャゴチャになります。原価がバレてしまう問題もあります。それならBTの方がスッキリする筈です。

一方でチャーターするという事はそれなりの数のコンテナが一度に出荷されるので、プライベートバースからの引き渡しも多いです。ここの荷役を船社が手配するのは無理があります。荷役機器が荷主の持ち物だからです。必然的にFIFOになる訳です。

ここまではクリアですが、問題は引き渡し場所が定期航路以外のコンテナ船岸壁です。定期航路と隣接しているのか、対岸なのかでも変わります。荷役会社が同じなのか、違うのか、これでも変わるでしょう。ここはもう船社の営業担当者のさじ加減です。これに遭遇した時はしっかり確認をしていくべきでしょう。

まとめ


という事で全て読んで頂いた方はFIFOをしっかりと覚えて頂けたと思います。

倉庫で在庫がいつまでも出ないとお悩みの方やモーダルシフトなどでコンテナ船チャーターを検討される方も増えると思います。ぜひFIFOを頭に入れて上手くご対応下さい。

今回はここまで。
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