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職場の車で合法的に運転練習そして運転の意味を考えた|ジムニーSJ30までの道のり④
免許を取ったので運転したくてたまらず、とにかく理由をつけては職場の車に乗っていました。今回のお話は、「車が買えなかったので合法的に職場の車で運転の練習をした」です。ジムニーSJ30への道のりは遠いのです。遠ざかり、もはや登場しなさそうな空気になってきているため、今回は題名からSJ30を外しました。やるやるサギみたいなのでね。スミマセン。
🔷職場の軽に乗りまくる
免許を取ってからはすぐに、用事を作っては、職場の軽バン「スバルサンバー スーパーチャージャー」に乗っていました。ハンドルが重めの車でしたが、教習所の車よりもはるかに車幅が狭く、運転席は高く、ボディの前が短く見切りがいいため、楽な気持ちで乗ることができました。
とにかく徹底的に乗りました。というのも、「免許を取ってすぐに乗らないと、運転感覚が体に定着していないから、感覚を忘れてすぐにペーパードライバーになる」とよく聞いていたからです。お金も時間もかけ、教習所に通うのが大変だっただけに、それだけは避けたかったのです。
仕事に必要な大きな資材を買いに行く時はもちろんのこと、自転車で行かれるような小さい文房具を買いに行くのにも、車を使わせてもらいました。
というのも、当時たまたま運転免許を持っている職員が少なかったのです。そして、職場側にも、私が運転できるようになると業務がスムーズに回る場面がいくつも想定されていました。それで、運転に慣れるための行動は寛容に見てもらえていたのです。
私のいた職場は、午後3時過ぎに休憩時間が一時間ありました。私は用事を作って車で出かけて、休み時間一杯かけてあちこちの道を走ってみていました。坂の向こうにある高級住宅地や、以前住んでいたアパートや、卒業した小学校の裏にある好きだった子の家の前など。そう、職場は私が育った町にあったのです。
🔷少しずつ遠くに行ってみる
近隣の道に慣れると、少しずつ遠くに出かけました。
当時、私は福祉施設に勤めていました。事業で畑をやっていたため、農耕資材を頻繁に買いに行く必要がありました。
それまでは、2㎞くらい離れたホームセンターに、自転車で買い物に行っていました。鶏糞や牛糞等の肥料は一袋(いったい)約20㎏ありますが、これを自転車の後ろに4つくらい積んで帰ります。後ろに80㎏の荷物が載っていることを忘れて、信号待ちでサドルから降りてしまったりすると、前の車輪が跳ね上がって派手に転倒してしまうことが時々ありました。
また、農業の資材は支柱などの長い物が多く、長尺物の端を自転車の後ろ側に縛り付け、もう一端を片手で持ちながらペダルをこぐという無理なことをずっとやっていました。
この点で、スバルサンバーは快適で、肥料十袋も悠々と運んでくれます。
それで、畑の植え付けの時期には、それまで行かれなかった隣の県の農業用資材の専門店に車で行きました。農家が買いに来るその店は、小さいけれど品揃えが充実していて、ホームセンターの趣味を相手にした少量・高値販売と違い、業務に必要な単位販売で、単価はセンターの十分の一程度でした。
当時私がやっていたのは無農薬無化成肥料の野菜栽培でした(このことはまた別に書きたいと思います)。そのため、例えば葉の裏まで反射光を入れてアブラムシを減らすための銀のポリマルチ(畝に掛けるビニール)100m巻や、害虫を避けるトンネルを作るための長巻の寒冷紗と大量のトンネル用支柱等が必要でした。また、害虫を避けるために希釈して噴霧する木酢液や、堆肥発酵時に微量入れるニンジン酵素麹等を、この店では安く買うことができました。
その年の土づくりの時期には、サンバーの機動性を生かして、張り切って何度も鶏糞牛糞堆肥を大量に運搬しました。
ところが、これが管理者を怒らせてしまいました。というのも、サンバーは給食食材運搬用の車でしたので、「糞を積んではダメだ」と。「荷室に肥料の匂いが残っている」という調理員の申し出により発覚して、以後「サンバーで肥料は禁止」になりました。
🔷ハイエースに乗る
私は、その頃には既に軽バンのサンバーはスムーズに運転できるようになっていましたので、次の段階では懲りずに、もう一台の社有車ハイエースワゴンで用事を済ませに行くようにしました。
ハイエースは車体が長いため、曲がり角では内輪差が大きく、内側に巻き込むような動きになります。だから、角を少し通り過ぎてからハンドルを大きく切って曲がります。それがトラックやバスのような挙動となるため、「運転している」という感じがして、気分が良いのでした。
ハイエースは一見大きく見えますが、車幅は普通乗用車とは変わらず、また、運転席の位置が高くて見切りが良く、乗ってみると意外と運転しやすいことがわかりました。その上、乗用車と比べると前輪が前の方についていて、前輪の切れ角がとても大きいため、小回りが利き、バックでの縦列駐車もとてもしやすいのでした。
職場の人は、ハイエースでの住宅街への運転を嫌がりましたが、私は進んで申し出て運転していました。私は「お金を払っても運転の練習がしたいくらいなのに、運転して給料がもらえるなんて素晴らしいな」と思っていました。
ハイエースはその荷室の長さにより、野菜の無人販売所を作るための長い角材やコンパネ(合板)、トタン等を運ぶのにとても重宝しました。
それと、このハイエースは8人乗りワゴンだったため、時々少しずつ人を乗せて運転するようになりました。
この時に初めて、後ろに乗る人の命を預かっているという緊張を感じました。また、運転によって人を体験したことない場所に案内できることや、緊急時には助ける手段になることも、運転の経験を経るごとに知るようになりました。
単なる運転免許と思っていたのが、実は運転という行為は、様々な人や意味を運んでいるのかもしれないと感じ始めたのが、この頃でした。
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🔷休みの日にも乗りたくなる
そんな風にして、私は運転感覚を忘れないようにしながら、新鮮な運転体験をしながら約半年を過ごしました。
そのうち、だんだん自分の時間に自分のために運転したくなってきました。
元々海に釣りに行きたくて免許を取ったわけですから、当然のことではあります。
それでもまだ、車を買うお金は貯まっていませんでした。
悶々と考えた結果、「レンタカーを借りればいい」というアイデアに行き着きました。
けれども、数社にあたってみてわかったのは、レンタカー会社は、免許を取って一年未満の人には車を貸してくれない、ということでした。
いくつもの会社に断られたため、車を借りるのはあきらめました。
それで、電車でのテント釣り小旅行をまだ続けていました。
(つづく)
文・写真:🄫青海 陽 2022
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