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おっさんずラブ in the sky
途中に約3か月くらいの空白期間を挟みながら、全8話をサブスクで見終えた。今回は細かいストーリーを追わずに、印象と、見終わってはじめに思ったことだけを書きたい。
◍異性を好きになるのは「あたり前」ではないんだ
ドラマを見ながらあらためて思ったのは、異性を好きになるのは「あたり前」のことではないんだな、ということだった。登場人物たちが好きになったのが同性であったりもした。自分の感情に素直になった時、恋愛感情の対象が同性であった。私の場合はたまたま、好きになる対象が異性だったにすぎないのだろう。そして、いずれでも構わないという人が、バイセクシュアルと言われる人なのか。うん、それは感覚的にわからなくもない。
◍だからといって「性差がない」わけではない
その上で思うのは、「同性を対象とした感情」=「男女に性差がない」ではないのだろう。ドラマの中でも、男の登場人物たちが、好きという気持ちが、「友情」か「尊敬」か「恋愛感情」かで悩んだり葛藤したりしている。男性性の中では友情という感覚が強く前面に出る傾向が強いため、恋愛感情との差で迷うのではないか。だから、ウェットな感情でありつつ、どこかドライというか爽快な感じになるのだと思う。
「性差がない」わけではないと思うのは、このドラマのキャストの男女を入れ替えると、まったく違うドラマになると思うからだ。感情の動きがもっとウェットな感じになるのではないかと想像する。
また、ドラマの中では恋愛がプラトニック寄りに描かれており、キャストに清潔感があることもあって共感しやすいのだろうと思った。キスについて葛藤する場面が何度もあり、キスシーンはあるものの、ベッドシーンやそれを想像させる場面は今回はなかった(前回のテレビシリーズは少しだけあったように記憶している)。
◍安心して見られるのは
もうひとつ感じたのは、「敵」がいない、ということだった。これは多分、最近のドラマではかなり珍しい設定なのではないか。「半沢直樹」や「下町ロケット」のような明確な敵ではなくとも、例えば「現実社会」や「リアリティ」という敵や、また、「同性の恋愛について理解のない人」のような敵もいない。葛藤は、あくまで個々の内側にあるのだった。
さらにはライバルも含めて、お互いを認め合っているチームとして描かれているので、人と人のいがみあいが、ドラマの中にはない。この心地よさは、私がかつて「めちゃイケ」を見ていた時に好きだった仲間感で、だからその世界に安心して没入できるのではないか。
以前に床屋で、たまたま私の隣りに当時プロ野球チームの監督だった落合博満が座って髪を切っていたことがあった。その時に、彼と床屋のおじさんが、「この間落合さんが出ていたバラエティ番組のこと」を話していた。落合さんが「ああいうのは罪がなくていいやね」と言っていたのが印象的だった。
そう、悪や毒や敵対心や猜疑心や、そんなものがない世界は、とても心地いい。今、そんな場所を私たちは求めているのかもしれない。あたたかい世界を描いているドラマだった。
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文:Ⓒ2020青海 陽
写真:©テレビ朝日
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