噂の真相 【ドローンの課長】
「あいつみたいになるなよ」
部長は氷を鳴らしながら、ハイボールを一気に飲み干したあと、そんなことを呟いた。
「失礼ですが、あいつって?」
僕の言葉に、部長はゆっくりと虚ろな目を向けた。
「誰も口には出さないが、お前だってわかっているだろう」
部長の言う通り、思い当たる人がいる。
やたらと顔が利く課長だった。昇進も早いだろうなと感じるほどの人脈を持ち、あちらこちら、仕事でも飲み会でも、どこへでも出向く人だ。
会社から重宝されていたし、人気もあったし、頼られていた。だけど突然姿を消したんだ。なぜだろう。
「部長、聞いてもいいですか?」
ああ?と言った部長は身を乗り出した。
「あの方はどうしていなくなったんですか」
部長は一度テーブルに目を落とし、グラスから落ちた水滴を指で触ってから再び顔を上げた。
「地に足が着いてなかったんだな。あちこち飛び回っていい顔して。やりすぎたんだよ。だから飛ばされた。人の足ではなかなか行けないようなところだ」
[完]
今週もよろしくお願いします°・*:.。.☆
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