毎週ショートショートnote|ときめきビザ
就労ビザ? それとも観光ビザ?
さすがの威圧感だ。
眼差しに威厳がある。
見つめ合っていると自然と体が震え出した。
「命の…ビザを……」
「……千畝?」
ごくっと喉が鳴る。怒られるかもしれないと、緊張が走った。
しかし男はふふっと笑い、「茶化しちゃだめだよ」と言った。
「偉大な方だ、あの方は」
わかっている。だけど僕だって命懸けだ。
ここを通れなければもしかしたら……。
「なんか久々に笑ったかも。ウケる」
ギャルのような話し方になった男は、書類を取り出すとサインをした。
「千畝ネタ、お好きなんですか」
「まあね」
男は僕に近づいた。
「忘れかけてたなぁって。いつも怖い顔して人を疑ったり、質問を投げてるばっかでさ。純粋に心が動く瞬間を感じるって大事だから。センス・オブ・ワンダー」
「……センス・オブ……ワンダー?」
男は僕に書類を渡した。
「小さいことを大切に」
・
「そんなこと、言ったかもな」
不正にビザを発行した罪に問われた男は、穏やかな顔で笑った。
(410字)
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チップとデールの違いを知りません。