旅の風景と、その日 -結婚式当日編-
1日の始まり
朝目が覚めてすぐに行なったのは、
天気と眉間にできた大きなニキビの状態チェックだった。
天気は前日からよっぽど大丈夫と思えるくらいの晴れマークだったけれど、
改めて天気を見て胸を撫で下ろす。
ニキビは赤みは引いたものの、
なんでこんな日にと思う大きさであった。
あとはメイクさんに託す。
メイクや髪の毛はそのままでいいので、
簡単なスキンケアをして
朝ごはんをパパッと食べる。
野菜が摂れるようにスープと、
良質な糖質が摂れるようにバナナ、
たんぱく質が摂れるようにオイコス。
一応管理栄養士なので、栄養バランスはつい気にしてしまう。
朝ごはんを食べて着替えたら、
展示の様子を見に行く。
ひっつき虫(という壁に跡が残らない接着用品)でくっつけた何枚かのパネルが剥がれ落ちていたので貼り直し(日光でパネルが湾曲していたようだ)、入り口のスリッパを並べ直す。
ああ、今日まで準備してきたこの展示をみんなに見てもらうんだ、
とドキドキした。
テーブルのお花の水換えと、他の小瓶にも生け替えるためにお花のピッチャーを持って外に出ると、ちょうどスタッフさん達が車から降りてくるところだった。
お花を持った私をみて、「なんて素敵な朝の光景!」と笑っていた。
当日初めて顔を合わす方もいて、今日私たちのためにこんな多くのスタッフさんがこんな遠くまで‥と2人で恐れ多い気持ちになりつつ、とても嬉しかった。
お礼として事前にお菓子(住んでいる場所の近くだし、2人の好きなお菓子ということで鎌倉の銘菓くるみっこ)とお手紙を準備したので、
今日はよろしくお願いします!と挨拶をしながら皆さんにお渡しする。
私たちも準備の手伝いをしつつ、支度の時間になったので部屋に戻った。
2度目ましてのヘアメイクさん。
今日も明るく、たくさんおしゃべりしてくれる。ヘアメイクさん自身の結婚式の時にも顔の中心に大きなニキビができたらしい。
ヘアメイクさんの技術により、私の眉間の悩みの種は静かに隠れてくれた。
ヘアメイクリハの時にも思ったけど、この量のメイク用品からその人にあったものを選び、適量を適切なのせ方をし、その人の魅力を引き出してくれる‥さすがプロの技術。
見ていて飽きない。
アクセサリー選びにも苦戦したが、
ドレスとぴったりのものを選ぶことができたと思う。
ヘッドドレスはかすみ草のようなつぶつぶビーズがあしらわれたカチューシャ。ハンドメイドアプリで選んだもの。
ピアスはプロポーズの時にもらった誕生花である紫陽花のピアスを
一花と二花でアシンメトリーにつけた。
彼のヘアセットはもう!?と言いたくなるくらい、一瞬で終わった。
「いい感じにブローしてくれていたので‥」とヘアメイクさんが言うので、「多分ブローとかしてないと思います‥」と言ったら笑っていた。
私の剛毛で無駄に量が多い髪の毛も、瞬時に綺麗にまとめ上げてくれた。
最後に、ドレスに袖を通す。
試着で何度も着ているけれど、やっぱり軽くて、ドレスを着ている!という感覚がそんなにないのに、体をすごく綺麗に見せてくれる。
ベールまですると、照れくさく、
気持ちがシャンとするような、不思議な気持ちになる。
ヘアメイクさんに今日は泣きそうですか?と聞かれ、わからないですけど全然泣く気がしないです。と答えた。
本当に結婚式やるの?と言うくらいの平常心。
(のちに各場面で泣いて、ヘアメイクさんに直してもらった)
扉の隙間からプランナーさんがのぞいて、
わあ!綺麗です!と言ってくれて照れる。
可愛いとか綺麗とか言われるのに、あまり慣れていない。
ファミリーミート
私たちは各々の家族でお支度を終えた姿を披露する(と言うまで大袈裟ではないが)ファミリーミートの時間を作っていた。
家族にも手紙を書いており、彼は恥ずかしいからと言って渡すのみ、
私はせっかくだからと読み上げることにした。
彼はすでにファミリーミートをしているんだろうか。
そんなことを考えながら、花嫁のお支度部屋である浴室でひっそりと息を潜めていた。
私はというと、ヘアメイクをしていた浴室の窓からファミリーミートの会場となるテラスで、カメラマンさん2人が念入りに立ち位置を打ち合わせしているのを眺めていた。
しばらくして、ご家族到着しました〜との声。
ドア越しに、お父さんやお母さんの声が聞こえてきて、
本当にこの場所に家族が到着したんだと思った。
家族がテラスから川を眺めて私に背を向ける状態になったところへ、
私が手紙を持って立つ。
家族は、いい眺めだな〜とのんびりした口調で言っていた。
「振り向いていいよ」と声をかけ、みんなが振り向く。
母と妹が「きれい〜!」と言ってくれて、
お父さんが「シンデレラみたいだなあ〜」と言う。「最近実写版のシンデレラ見たからさあ‥」と、感動しているんだかしていないんだかよくわからないことを言っていた。
照れているんだろうか。
「せっかくなので手紙を書きました。読むので聞いてね」
手紙を読む。スマホにメモして、下書きをして、ペン入れをして、何度も読み返した自分の文章。自分でも驚いたのだけれど、なんか泣けてきた。
泣きながら読んでいるけど、父も母も飄々とした顔をして聞いている。
父に「結婚することで悩んでいる時、結婚は日常の延長線上のようなものだから、気張らないでいいと言ってくれたことが嬉しかった」と話したら
「そんなこと言ったっけ?」と笑っていた。
娘がハレ姿で泣きながら手紙読んでるのですが‥!と脳内によぎりつつ、両親は特に泣くことはなく、手紙を読み終える。
気持ちは届いているといいな。
テラスで記念撮影をした後、
彼とのファミリーミートを
式の会場となる川辺で行うことに。
ファーストミート
昨日見たまっさらな会場には、装花が作り込まれ、
ロケーションとも相まって天国のような美しい風景となっていた。
装花の担当の方からブーケを受け取る。
ずっしりと重い。
彼が川の方を向いているところを、
後ろからそろりと近寄り、声をかける。
振り向いた彼は、「わーすごい!」と笑っていた。
周りから見たら結構あっさり目な反応だったと思うけど、
ずっと見てきた私から見ると、思ったよりいい反応をしてくれたと思う。
本当にすごい、綺麗、と思ってくれている反応だった。(と思っている)
そのまま2人で記念撮影。
彼は始終手の配置が分からず、この時はレゴブロックのようなぎこちない手の配置となっている。
式が始まるまで
その後は両親と式の動きの流れをリハーサルする。式の会場までの道のりがハイキング並みに険しいので、お互い転ばないよう細心の注意を払う。
私も彼も両親と入場する形にしたのだが、自由に入場というところを、彼は父と母と手を繋いで入場していて、とても可愛らしくて素敵だなあと思った。
私たちは母にブーケを持ってもらい、私が長いベールの裾を肘にかけ、両親と腕を組むような形にした。
挙式リハで、それではお父さんは新郎に新婦の手を渡してください、と指示を受けた際、冗談で「だめ!渡さなーい」と言い、「しょうがないなあ」と渡してくれたところは少し胸がきゅっとした。
その後、ポートレート撮影。
カメラマンさんの的確な指示により、短い時間で素晴らしい写真を何枚も撮ることができた。結婚式中は、みなさんプロだなあ‥という気持ちに何度もさせられた。
ポートレート撮影時は、カメラマンさん、ヘアメイクさんが一緒に動いてくれたのだけれど、ヘアメイクさんがさっとブーケをもち、ドレスを直してくれ、前髪を直してくれ、ようやく撮影。
でもその動きが俊敏すぎて感動した。
畏れ多さと、ありがたさと、愛しさと、切なさと、心強さと。
撮影中に、両親がムービーの方にインタビューを受けている様子が目に入った。思ったより長い時間話していて驚いたが、後から聞くとうちの母はカメラを前にすると思ったように話したいことが話せず、後悔していると何度も言っていた。
待機
撮影がひとしきり終わり、
部屋にはやりきった顔をした新郎新婦が佇んでいた。
部屋には支度中にお願いしていたおむすびが3つ、お茶まで用意してくれた。おにぎりはなんと、会場のレストランスタッフさんがスタッフさんのために握ってくれたもの。とてもとてもおいしかった‥!
念の為、2人ともわかめやひじきのおむすびは避けておいた。
昼食はもう少し先。お腹が空くだろうと思って買っておいたパウチタイプのりんごゼリーも飲んでおいた。
スタッフさんがきて、お友達到着しましたよー報告をもらい、無事着けてよかったという安堵と、これからなんだな、という気持ちに。
友人には受付後、展示を見て待機してもらった。
私は直接反応を見ることができなかったけど、
カメラマンさんが展示を見ているみんなの表情を撮影してくれていて嬉しかった。
挙式
会場までの道のりに、みんなへの手紙を吊るし、受け取ってもらうことにした。私たちが入場する前に一斉に開いてもらい、式への気持ちを高めてもらう”スイッチングレター”という演出だ。
私たちも移動する時間になった。
移動中、遠くに友人が着席している様子が見えた。
すごく不思議な気持ち。
挙式会場への入り口は森。みんなが背にしている坂の上だ。
父はすでに全て忘れてしまったようで、しきりに動きの確認をしているし、母は私の友人に会えたことに興奮してすごくしゃべりかけてくるしで、ムードもへったくれもなかった。
彼の両親もソワソワ緊張している様子で、2人顔を見合わせて苦笑い。みんな初めてのことだもんね。楽しもう、ってアイコンタクトした。
彼が入場する。
入場曲はharuka nakamuraさんの「CURTAIN CALL(カーテンコール)」。
前撮りの時にも行った、大学時代から通っているお店でいつも流れていた曲だった。疲れた時、この曲を聞きながらご飯を食べる時間が幸せだった。
讃美歌のような神聖な雰囲気と、華美すぎず寄り添ってくれるピアノのメロディがぴったりだと思い、選んだ。
私たちの入場の番だった。相変わらず父は「つ、次なにするんだっけ‥」母は「見てみて、友達の〇〇泣いてるよー!」と話しかけてきたが、軽く返事をしつつ、その光景をしっかり感じていた。
その日は日差しが痛いくらいの晴れで、
光が真っ直ぐに届き、空間がしろく光っていた。
そばには川が流れ、木々は周りを囲うように高く生い茂っている。
その広大な自然の中で作られた小さな挙式の会場は、
私たちらしくささやかで、
でもどこか別の世界のような神々しさがあった。
母にベールダウンしてもらう。
父と腕を組み、歩く。
その行動の間、思い出に浸る余裕はなかったけれど
身体中で特別な時間を感じていた。
父と彼が握手する。笑う。
手を引き渡し彼の肘に手をかける。
一緒に歩く。
前を向く。
みんながこちらを見ていた。
誓いの手紙
私たちは誓いの言葉を、お互いの手紙で綴ることにしていた。
3つの誓いをお互いに立てることだけ決め、当日まで内容は隠していた。
彼から手紙をもらったのは、過去に一度だけ。
誕生日にお願いして書いてもらったのだ。
手紙を書くのも、読むのも、苦手なはず。
そんな彼が向き合い、話し始めた。
私たちは15時になるとコーヒーをいれておやつを食べる時間を大切にしていて、どんな適当なおやつでも、私がすっぴんメガネでも自撮りをすることが習慣になっていた。
もう途中からは涙と鼻水が止まらなくて、
あとで写真を見返したらベールに鼻水がついていた。
彼は片手に手紙、片手にマイクを持っていたので
救いようのない泣きじゃくる花嫁をただ眺めるしかなかったようだ。
ちなみに余談だが、彼は誓いの言葉の内容をすごく悩んでいたようで
ある2人の言葉を参考にしたということをあとで教えてくれた。
ひとつは、
「このなんでもない日々がすごく大切で幸せなんだと感じました。」
という言葉。
これは、私たちの大好きな漫画「進撃の巨人」に出てくるアルミン・アルレルトがクライマックスの時に主人公エレン、その幼馴染のミカサと3人でかけっこをした時の話した言葉を参考にしたそうだ。
また、割愛したが上記の内容の後に話した3つの誓いのうちの一つ
「思いやりを当たり前だと思わず」という言葉。
これは、私たちが応援する私立恵比寿中学の元メンバーであり、彼の人生初の“推し”である柏木ひなたさんが卒業ライブの最後に、母からの教えだと話した言葉を参考にしたそうである。
だいぶ余談だったが、結婚式当日の夜に
そんな話題でひと盛り上がりしたのであった。
続いて、私の番。
寝る前に、頭の中で何度も推敲した言葉たちだった。
目が覚めて、夢より今生きている世界の方がいい。
この世界に戻って来れてよかった、と思うことは何度もあった。
それってとても幸せなことだといつも思う。
そして、誓いの言葉の3つ目に
結婚式のカウンセリングシートでお互いをなにに例えますか?という欄があり、私は彼を“羽毛布団”、彼は私を”絵の具”と表現した。
付き合ってすぐの頃、彼は自分の過去のことを話してくれたことがあった。
悲しかった、辛かった思い出、他の人に弱さを見せないようにしていること、コンプレックス。彼が泣いているのを見たのは(ドラマや映画以外で)後にも先にもあの時が最後だった。
あの日から、私は彼の人生を明るくすると誓ったのだ。
遠い未来、私といてもいなくても、暗い過去が影を落とすことなく、
笑って、呑気に生きていてほしいと思った。
だからこそ、一年後の言葉は嬉しかったし、
この日の誓いの言葉にあった言葉は全て心に響いた。
別にお互いを幸せにする努力をせずとも、一緒にいるだけで、
生きている世界が少し明るくなれば良い。これからもずっと。
結婚証明書
その後、結婚指輪の交換で想定内のハプニングが起きた。
想定内であったので、全然焦らなかった。
彼の指は節が太く、指輪作りの際にも苦戦したのだが
はめるのも、もちろんつっかえて難しいのだ。
練習も何回かして、はめるより外す方が難しいから〜と呑気に笑っていたのだが、いざはめようとすると第二関節で完全にストップしている。
私が体勢を変え、力を込めて押し込むと、無事指輪がはまったが、
同時にゲストから笑い声が起きた。
その後、お互いに読んだ手紙を額装。
レイアウトは私が考えた。真ん中にはコットンペーパーに印刷した誓いの言葉の文字。両端にはスクエア型の丸窓があいたレターセットを配置した。
便箋は活版印刷で花の絵が描かれている。(雨上がりに咲く花をイメージしているそう。
ペトリコールレター:ギリシャ語で石のエッセンスという意味があり、雨が降る前や降った後に立ち込める香りをイメージした便箋。色合いが好きだった)
ここには私の自己満が詰まっている。
大抵、誓いの言葉の定型文を引用する事が多いけれど
英語で分からないし、私たちの好きな歌詞を入れ込もうと思ったのだ。
そこで選んだのが、2人が好きな私立恵比寿中学の楽曲「ヘロー」。結婚式で選んだ他の楽曲は大体私の趣味だから、ここくらいはお互いが好きな音楽にしようと思い、他の曲とも合うメロディラインのものを選んで、結婚証明書を額装する際のBGMにも使用した。
最後の歌詞を引用して、英語翻訳をして貼り付けただけだけど
門出の日らしいいい歌詞だなあと思っていた。
歌い出しの
”let’s go 今日はどんな話をして歳を取っちゃおうか
しわくちゃになっても僕ら変わんない馬鹿な暮らしをしたいだけだ
let’s go 明日はどんな話題で笑い声響かそうか
繰り返す生涯とやらに句読点も打てないね”
も好きだし、
”下らない平凡の延長です
つまりそれこそが未来で
おそらく僕らが願った将来で 確かなもんで”
も好きだ。
結婚証明書の披露を終え、退場。
退場曲は、天然水のCMにも使われている
高木正勝の「きときと-四本足の踊り」にした。
そばに川が流れているし、爽やかに退場したかったから。
これは、私の好きな映画
「おおかみこどもの雨と雪」のサウンドトラックでもある。
みんなに拍手で見送られながら退場した。初めてみんなの顔を見た。
すごく、いい笑顔だった。
退場してから食事会
退場してから私の涙と鼻水の跡を何も言わずヘアメイクさんがささっと直してくれた。ありがとうございます‥。
みんなと川辺で写真撮影。
集合写真でおめでと〜!(ありがと〜!)ってみんなで叫んだ写真、良い。
友人みんなの近くにも行けて、今日のためにヘアやネイルや、お洋服選びをしてくれたと思うとキュンとする。みんな可愛かった。愛おしい。
部屋に戻り、ひと息つこうと思ったが、忘れてた。私はヘアメイクチェンジをしなくてはいけない。
ヘアメイクさんは、ここまでもだいぶ暑い中動いてくれたのに、時間に追われながら可愛い髪型から可愛い髪型にチェンジしてくれる。
後半は、自分でお花屋さんで選んだ生花をあしらったローポニーでリラックス感を出すことにした。お花は白のトルコキキョウ。上品でドレスによくあっていた。
ピアスはジルコニアがアクセントのビーズのタッセルピアス。大ぶりで、上品で、お気に入り。
それに合わせて、指先に少しだけパールをつけてもらった。
この間も私の作ったペーパーアイテムを見ながらみんな楽しんで待っていてくれたようだ。嬉しい。
引出物は私の勤めている食器メーカーの器を一人一人セレクトした。
それと、2人が定期的に行くお店の焼き菓子と、近所の八百屋さんが自家製で作っているケチャップ。全て食に関するもの。笑
お手紙のように、引出物の説明用紙をつけた(デザインは、会社が発行する冊子のレイアウトをオマージュしている)のをみんなが持ってくれているのかわいい‥!
テーブルの装花も可愛くて、グリーンと白ベースにお野菜が散りばめられてる!白菜やそら豆がこんなに可愛くなるんだ‥と驚いた。
食事会
入場は、ささやかに。
結婚式場のような大きな扉やスポットライトはないので、
曲だけタイミングを合わせてもらい、ぬるっと入ってお辞儀をした。
曲は大橋トリオの「カラタチの夢」
2人で楽しみに見ていた、”きのう何食べた? season2 ”のオープニング曲だ。
テーブルは流しテーブル。
みんなと目を合わせることができるお誕生日席を作ってもらった。
基本的な進行も私たちで行うことにしたので、台本も用意した。
さて、お楽しみのお料理たち。見学時、試食はしていなかったのでずっと楽しみにしていた。
ダイエットからも解放。もう油も小麦も何も怖くない。さあ来い!
乾杯のスパークリングを手に持ち、乾杯のあとはみんなの周りをぐるっと回る。すごくいい時間。
みんなが笑っていて、美味しいお酒と、お料理。
美しい新緑に囲まれて。
お料理は、愛知県の三河地方の食材を中心に使って、アレンジを加えたイタリアン。前菜に五平餅が出ますとは聞いていたものの、こんなおしゃれな姿をして出てくるとは誰が想像できただろうか。
どれも軽やかで、味と味の重なりが美しくて、
思いやりも感じる温かいおいしさだった。
お皿の選び方、盛り付けの仕方、
全てが丁寧で、cureさんスタッフの人柄を表していた。
途中でゲスト紹介を挟んだ。
ゲストからのスピーチは無しだったけれど、少ない人数だしみんなのことを知ってもらいたい、という気持ちで組み込んだ。
一人一人に質問を急に投げかけてしまったにも関わらず、
素晴らしいお話をしてくれたみんなありがとう‥。
あとで妹が、なんて素敵な友達ばかりなんだと驚いたと話していて私は自分のことじゃないのに鼻が高かった。嬉しい。でしょう、私の友達、みんな可愛くて、自慢したいくらい素敵な人たちばかりなんだよー!(大声)
ドレスは下着も含め、普段より身に纏っている布面積が少ない分軽やかに動けたし、ご飯も花嫁かってくらいしっかりと食べた。それでも後半は苦しくなるくらいのボリュームで、もっと食べたいのにお腹いっぱい‥という気持ちになっていた。
特に段戸山高原牛のステーキは焼き加減が絶妙で、美味しかった‥!
空腹の状態でもう一度食べたい。笑
途中、看板猫ちゃんが乱入したりとのんびりした時間が流れていた。
可愛かった‥!
そして、私たちの展示や誓いの言葉を見ていたカメラマンさんが急遽考えたおやつの時間の撮影。笑
2人がおやつの時間を大切にしていると気づき、急遽2人の机を作った。
そして謎に始まったあーん!コール。
まあ、ケーキ入刀もファーストバイトも作らなかったので、ファーストバイト的な感じで良かったかもしれない。
同時あーんなので、”これからも2人でおやつを食べていこうね”的な意味合いになったと思う。
そして、両親に器と食べ物のカタログギフトを贈呈した。
両家の父から一言ずつもらうことに。そんな話せないと思ったし、時間も押している中だったから省こうかとも思ったけど一応お願いすることにした。
彼のお父さんが話、私の父の番に。
父は、私の小さい頃の話を、ポツポツと話していた。
手がかかる子だったこと。
全然寝なくて妹をおぶって、私をベビーカーに乗せて、
マンションの周りを何周もしたこと。
妹は寝ていたけど、私は全然寝なかったこと。
最初は童謡を歌っていたけれど、ネタがなくなって
その頃はやっていたJ-popを歌ったこと。
偏食がひどくて、いなり寿司の中身だけ食べていたこと。
こんなんで育つんだろうかと思っていたけど、
管理栄養士の資格をとるまで食に興味がある子になったこと。
何歳になっても娘は可愛いこと。
知らない間に泣いていた。
私は、関わってきた人たちの愛情で生かされている。
そして、最後の締めの言葉。
私たちから改めてみんなに感謝の気持ちを伝えた。
彼はアドリブでほとんど話していたが、しっかり話していてすごいなあと思った。あと、気のせいかもしれないけど「こんな綺麗な姿を見ることができて、いい1日でした」と言われた気がする。綺麗とか可愛いとか今までで一度も直接言われたことなかったから嬉しかった。
私は校長先生ばりの話の長さだった上に、
途中感極まって言葉に詰まり、ひどい有様だったと思う。
伝えたかったのは、願っていたのは
私たちだけじゃなく、ここにいる全ての人たちへの幸せだった。
今日みたいなハレの日ばかりじゃない、
なんなら記憶に残らない日のほうが多い。
みんなが小さな幸せに気がついて、私たちがみんなのことを大切に思っていて、その中で生きていることを思っていてほしいということだった。
帰り道、友人をタクシーで見送る際酔っ払った母が駆け出して「みんな幸せになってねーーー!!!」と叫んでいた。
スタッフさんが花嫁さんより見送ってる(笑)と言っていて、私も恥ずかしくて母に怒ってしまったが、あれが私の思いの全てだったとも思う。
式が終わって、お世話になったプランナーさんにも器を贈った。
結婚式は、チームだと思った。
その日の終わり
楽なワンピースに着替え、息をついた時にはドレスやベールはヘアメイクさんの手で綺麗にしまわれていた。本当に感謝しかない。
展示物も手早く片付けられていた。(あとで家族やゲストのみんながもっと見たかった!と言ってくれていて、それだけが後悔‥でも時間もなかったし仕方ない)
2人で少しだけ周りを散歩することにした。
建物の出口を出ると、夕焼けが綺麗だった。終わりの空にふさわしかった。
川辺におり、ベンチに座って友人からもらった手紙を読んだ。
この歳になると手紙を書く機会が少なくなる。友人もそんなことを冒頭に書いていた。読んでいて、色々な思い出が蘇ってきて涙が出てくる。いろんな場面で支え、支え合ってきた友人。今日という日を一緒に迎えることができて良かった。
夜は、私たちの部屋に集まりたい家族が集まって
ダラダラおしゃべりした。改めて、彼の家族のことが好きだし、自分の家族も好きだと思った。(父と母にはお酒の飲み過ぎ!と怒ったけどそれもまあいい思い出)
夜、早めに布団に入ったものの、2人ともアドレナリンでなかなか寝付けなかった。夜中目が覚めてトイレに行って、なんか眠れないよね。笑 と少しだけその日の思い出を振り返って会話した。
彼は、結婚式をしたくない派だった。
だからこそ、一日楽しそうで、幸せそうで、そんな姿を見ることができて良かったと感じた。いつの間にか眠っていた。
翌朝
寝付けなければ、翌朝目が覚めるのも早かった。
外は昨日の晴れが嘘だったかのように、しとしとと雨が降っていた。
お湯を張って浸かりながらLINEを開くと、
昨日の夕方空港に向かうと言っていたカメラマンさんからダイジェスト写真が送られてきていた。少し休んでほしい‥と思いながら湯船で開いた。
昨日の思い出が蘇ってきて、少し泣いた。
いい1日を過ごした、ということが写真から伝わってきた。
見ることのできなかったみんなの表情、仕草。
楽しい1日が終わってほしくないという思いはなかった。
全てをその日に置いてきたという気持ちだった。
それだけ、良い結婚式だったんだと思う。
帰るまでが結婚式
cure cafeさんの朝ごはんは想像を遥に上回る豪華さと美味しさで
仰天してしまった。
本当に、至れり尽くせり、初めての結婚式だったのに素晴らしいおもてなしをありがとうございました。
部屋でお互いの家族と少しのんびりしたら、出発の時間。
荷物を詰め込み最後のドライブをした。
帰りの道中食べた、昨夜の家族の集まりでおつまみにされていて残った芋けんぴがとてもおいしかった。
ドレスを返却し、家に帰ってレンタカーを返し、ある程度の荷物を片付け、翌日出発する北海道旅行の準備をした。
その後、1週間の北海道ハネムーンに出かけたため
ようやく落ち着いてきたところだ。
帰ってきた後は1週間ほど2人とも、常に疲れが抜けない、
朝起きても眠いという状態だったので、ハードな日々だったことがわかる。
また北海道旅行についてもnoteに書きたいと思っている。
帰ってきてから、妹からお礼の手紙が送られてきた。
結婚式に参加して、気持ちが溢れて手紙を書きたくなったとのこと。
しかも、夫にも。
朝一番の郵便で届いたので、朝ごはんを食べながら開けた。
何気なしに読んだけれど、泣きながらおかゆを食べた。
妹が妹で良かった。
そんなふうに、改めて家族や友人の大切さを知る1日でもあった。
彼も、結婚式をやって良かったと直接は言わないものの
あの日はいい1日だったと何度も言っている。
きっとこの先、あの1日が
ふと思い出すお守りのような風景になると思う
そんな日がこれから増えていくんだろう
家族を作るということは、そんなようなことだと思った