ゴルフで生じる外傷・障害とその予防「腰痛」
みなさんこんにちは!
今回はゴルフによって生じる外傷・傷害について書いていきます。
外傷・障害は種類が多いため、幾つかのテーマに分けて記事にしていく予定です。
今回は「ゴルフで生じる腰痛」をテーマに書いていきます!
ゴルフに関係なく元々腰痛がある方もいらっしゃると思いますが、今回はゴルフによって腰痛が発症する、または、腰痛が悪化する方を対象に書いていきます。
スポーツ傷害の分類
スポーツによって生じる怪我を総称してスポーツ傷害といいます。
スポーツ傷害は大きく「外傷」と、「障害」に分けられます。
外傷は、捻挫や肉離れ、打撲など一度に大きな衝撃が加わって発生するもので、
障害とは特定の部位に微細な力が繰り返し加わり生じるもの(使いすぎ症候群:overuse syndrome)で、慢性的に起こるものです。
ゴルフは、繰り返し行われるスイングによる障害や、筋力・柔軟性の低下によって、正しいスイングができないことによって起こる障害が多いです。
そのため、ゴルフでは、主にスイングに伴う障害が多いと言われています。
ゴルファーに特徴的な外傷・障害
ゴルファーに多い外傷・障害は主に以下のようなものがあります。
その他にも細かい部分で見ればもっと種類はありますが、今回は分かりやすいものを載せました。
私がトレーニング指導してきた中でも、腰、膝、肘に痛みがある方が非常に多かったです。
中でも腰痛がある方はかなり多くいらっしゃいます。
ゴルフで生じる腰痛のメカニズム
ゴルフスイングは、腰部への負担が非常に多くなります。特に脊椎の間にありクッションの役割をしている椎間板への負担はかなり大きいです。
ゴルフスイングは1回ではなく何度も行われるため、繰り返し腰に負荷がかかった結果、腰痛をきたしてしまいます。
柔軟性や関節可動域の観点から見ると、
①脊柱(特に胸椎)の可動域の低下や、
②股関節周りの柔軟性・可動域の低下
により、腰の骨(腰椎)で代償したスイングをしてしまうため、腰痛をきたすことがあります。
この2つを以下で詳しく説明します。
①脊柱(特に胸椎)の可動域の低下
腰を回すという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、腰椎は構造上5°程度しか回旋しません。脊柱を回旋させるときは、腰椎ではなく、胸椎を回旋させることが必要です。胸椎の回旋可動域は30°〜35°であるため、脊柱の可動域で胸椎の果たす役割はとても大きくなります。
本来5°しか回旋しない腰椎を無理やり動かそうとすれば、当然腰椎には大きなストレスが生じます。
そのため、胸椎の可動域低下により腰椎で代償をして回旋を行うことで腰痛になることがあります。
また、現代の人は首が前に出た猫背の姿勢になっている人が多いことも、胸椎の可動域低下の要因となります。
②股関節の柔軟性・可動域の低下
股関節周りの柔軟性・可動域低下による腰痛については、股関節の可動域低下や、股関節前後の筋肉、股関節を回旋させる筋肉の柔軟性が低下することによって、腰部の回旋や側屈(体を横に倒す動作)が増加してしまい、その結果腰への負担が増えて腰痛となります。
最近スイングで捻りにくくなってきた、または、スイング時の捻転が浅くなってきたと感じる方は、股関節周囲筋の柔軟性が低下している可能性があります。
股関節の構造、周囲の筋肉については、下の図を見るとイメージしやすいと思います。
股関節周囲には上の図ような筋肉が付着しています。
筋肉がたくさんあって難しいので、覚える必要は全くありません。本記事を見る上で、参考程度にご覧ください。
ここまで股関節周囲筋の柔軟性低下の影響により腰痛になることを説明させていただきましたが、実際にどの筋肉の柔軟性が低いことがスイング時の腰痛につながるのでしょうか。
股関節可動域制限のをきたす筋肉
ゴルフスイングで体を捻るときに、股関節は内旋という動きをします。
股関節の内旋とは、骨盤に対して太ももの骨(大腿骨)を内側に回す動きのことです。もっと分かりやすく言うとつま先が内側に向く動きのことです。
外旋とはその逆の動きのことを言います。
右打ちゴルファーの例では、バックスイングで右足重心の時に右股関節が内旋します。ダウンスイングでは左足重心の時に左股関節が内旋します。
スイング時の股関節の可動域が低下してしまうのは、股関節内旋の動きが低下しているということになります。
そのため、股関節内旋の可動域を制限している筋肉の緊張を取り除くことが必要になります。
また、股関節の可動域制限と、腰痛の関連を調べた研究によると、股関節内旋制限がある場合は、腰部の回旋や側屈が増大してしまうと記載されています。(腰椎へのストレスが増えて腰痛になります)
以上のことから、股関節の内旋可動域の低下は、スイングのパフォーマンスを低下させ、且つ腰痛に繋がってしまいます。
股関節内旋制限
股関節の内旋制限は、股関節外旋筋群の柔軟性低下により起こります。
以下に股関節内旋を制限をする可能性がある筋をまとめます。
股関節内旋を制限する筋肉
・深層外旋六筋(梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋)
・大臀筋
・中臀筋
簡単に言うとお尻の筋肉のことです。
少し難しい話になりますが、股関節内旋制限に関与する筋肉は、股関節が曲がっている状態と、伸びている状態で筋肉の作用が変わってきます。
本記事はそこまで難しいことは書きません。
上記の筋群の緊張を取ることを優先して行なっていただければ問題ありません。
以上のように、胸椎、股関節はどちらも柔軟性や可動域が低下することによって、腰部を代償して動かすことが多くなり、腰痛につながってしまうのです。
ゴルフ外傷・障害の予防
ゴルフで起こる障害は、痛い部位のケア(マッサージなど)をして、その時は痛みがなくなりパフォーマンスが上がったとしても、また同じ動作を繰り返してしまうことで痛みが再発します。
それを予防するためには、スイングの技術を向上させることや、身体機能(筋力、柔軟性、可動域)の向上、また、日頃からの身体のケアをして筋肉の緊張を取ることが必要となります。
理想的なスイングの習得には身体機能の向上はとても重要になります。
身体機能が向上すれば、動作も変わっていきます。
もちろんそれらを行えば100%外傷・障害を予防できるわけではありません。
しかし、外傷・障害の確率を少しでも下げることができれば、ゴルフのパフォーマンスは格段に上がっていきます。
筋の緊張をとる方法としては、胸椎、股関節周りのストレッチや、フォームローラー、テニスボールなどでリリースすることが有効です。
また、可動域が向上すると、傷害予防だけでなくゴルフのパフォーマンス向上にも繋がります。これは、可動域改善だけでなく、筋力強化も合わせて行うことが重要です。
ゴルフのパフォーマンス向上に必要な筋力に関しては、以下の記事をご覧ください!
ここまで読んでいただき、ゴルフで生じる腰痛のメカニズムを理解していただけたと思います。
実際にどんなストレッチやリリースをすればいいのかはまた別の記事で書かせていただきます。
次回は、ゴルフで生じる外傷・障害「肘」を記事にしていこうと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
少しでもゴルフ上達の手助けとなれば幸いです。
参考文献
・Sol-Bi Kim et al: Am J Sports Med. 2015 Jan.Lumbopelvic kinematic characteristics of golfers with limited hip rotation
・岩本潤「ゴルフ障害・外傷の疫学」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3
・鈴木一瑛、浜田純一郎「ゴルフにより生じる障害・外傷」『臨床スポーツ医学 』vol.33 No.3
・広瀬統一、泉重樹、上松大輔「アスレティックトレーニング学」文光堂2019/12/23