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誹謗中傷はなぜ起こるか?

どうも、あおきです。医学部でコミュニケーション教育と心理学教育を行っている研究者兼心理カウンセラーです。今日は「誹謗中傷はなぜ起こるのか?そしてどうしたら止められるのか?」というテーマについて考えてみます。

SNSが普及した今、誹謗中傷は日常のあちこちで見かけるものになっています。なぜ人は他者を攻撃し、それを止めることが難しいのでしょうか?

誹謗中傷が起こる理由には、いくつかの心理的メカニズムが関わっています。

そのひとつは「匿名性による責任の希薄化」です。インターネット上では、自分の発言が相手に与える影響を実感しにくく、現実では言えないような攻撃的な言葉を簡単に投げつけてしまうことがあります。顔が見えない相手には、共感しにくくなり、攻撃のハードルが下がるのです。

また、「集団同調」と「バンドワゴン効果」も誹謗中傷を助長します。誰かが攻撃されている場面を見ると、「自分も参加していいのではないか」「みんながやっているから問題ない」と考えやすくなります。

特にSNSでは、短時間で多くの人の意見が共有されるため、攻撃の流れに乗りやすくなります。一度批判が始まると、それが雪だるま式に膨らみ、個人に対する集団的な攻撃へと発展することも少なくありません。

さらに、「自己正当化」も重要なポイントです。多くの誹謗中傷は、単なる悪意から生まれるわけではありません。攻撃する側の人は、「相手の言動が間違っている」「この人を批判するのは正義だ」と考えていることが多いのです。

つまり、誹謗中傷を行っている自覚がなく、むしろ自分は正しいことをしていると思っているケースが多い。これは、道徳心理学で言われる「モラル・ライセンシング(道徳的免罪符)」の一例で、自分が道徳的に正しいと信じることで、他者への攻撃を正当化してしまう現象です。

では、どうすれば誹謗中傷を止めることができるのでしょうか?

まず重要なのは「社会的な認識の変化」です。誹謗中傷が増える背景には、「批判と攻撃の違いが理解されていない」という問題があります。意見を述べることと、人を傷つけることは別のものですが、その区別が曖昧になっていることが多いのです。「この行動は問題だ」と指摘するのと、「この人は最悪だ」と攻撃するのでは、全く異なる影響を生みます。

また、「共感を育む環境づくり」も重要です。誹謗中傷が起こるのは、攻撃される側の気持ちを想像できないからです。教育やメディアを通じて、他者の立場に立って考える力を育てることが、長期的には誹謗中傷を減らす鍵になります。

さらに、「炎上を広げない文化を作る」ことも必要です。攻撃的な投稿を見たとき、それに乗るのではなく、スルーする・拡散しないという行動を意識するだけで、被害の拡大を防ぐことができます。「SNSでの正義感の暴走」が誹謗中傷につながることを理解し、一歩引いて考える習慣を持つことが求められます。

誹謗中傷は、私たちの社会が抱える課題のひとつです。個人の問題ではなく、社会全体でどう向き合うかが問われています。感情的になりすぎず、冷静に考えながら、自分の言葉の影響を意識することが、まずは第一歩になると思います。

優しい世界になってくれたらいいなと切に願います。

それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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