ファシリテーターからみたコンフリクト・マネジメント
※この原稿は、小中学校の校長先生や教頭先生向けの雑誌に掲載されたものを加筆・修正したものです。
みなさん、こんにちは。ミーティング・ファシリテーターの青木将幸と申します。ふだん、家族会議から国際会議まで、あらゆるサイズ、様々なテーマの会議を進行する仕事をしております。たまたま今年は子どもが通う小学校のPTA会長を拝命し、学校に出入りすることが多くなりそうです。学校には様々な苦情やご意見が寄せられることと思います。あるいは、職員同士でも物事のとらえ方が異なることで、ぶつかりあうシーンもあるでしょう。どちらかサイドが折れたり、流れでスムーズに解決できる場合もありますが、場合によっては、それらはコンフリクト(衝突、対立、葛藤など)として現れることもあります。そんな時、どのような対処法があるのか?について、様々な会議のファシリテーションを手掛けてきた立場から、いくつか考察を試みたいと思います。
●「それはちょうどいい!」
わたしたちがよくやるワークの1つで、『解決社長』という遊びがあります。ちょっと余談っぽく感じるかもしれませんが、コンフリクト解消のヒントになるのでご紹介しましょう。この遊びは、3人組みで行います。じゃんけんをして、勝った人は社長役、負けた2人は社員役となります。社長はイスに腰掛け、どんと座ります。社員役2名はそこから2mほど離れたところに並んで立ちます。そして、社員役のどちらかが「社長、大変です!」と言って社長のそばにかけより、会社でおきそうな仮想のトラブルやコンフリクトを報告するのです。たとえば「社長、大変です!我が社が販売しているお菓子を食べて、お腹を壊したと、おっかない暴力団風の男がどなりこんできてます!」とか「営業部と開発部の部長同士が、業績が悪いのはお前の部のせいだと罵声をあびせあってます」とか「我が舎の倉庫から火が出て、全焼する勢いです!」といったトラブルを報告するのです。すると、社長役の人は、余裕しゃくしゃくで、まずは「それはちょうどいい!」とこたえます。そして、その数秒間で、何か、そのトラブルをポジティブに捉えて、テキトーな解決策を言う。それがどんなに突拍子もない解決策だとしても、社員は「さすが、社長!すぐにその方向でとりかかります」ともといた位置にもどります。するともう1名の社員が、また違うトラブルをかかえて「社長!大変です」と入ってくるという遊びです。
社長が発する解決策は例えば、先ほどの例だと「それはちょうどいい!これをきっかけにその筋の方々とも懇意にしていざという時に助けてもらう関係性をつくろう。丁重にお迎えして!」とか「それはちょうどいい。営業部長と開発部長を入れ替えて、それぞれの苦労を味わってもらおう」とか「それはちょうどいい、あの倉庫はちょっと古くて使い勝手が悪かったから、これをきっかけに最新式の倉庫を建てよう。お金は保険で出るから心配するな」とかいったことでいいのです。
このワークで身につけたい視座は「想定外のトラブルやコンフリクトを過剰に怖がらないで、これはちょうどいい機会だととらえてみる」ということです。人間、だれしもトラブルやコンフリクトは苦手です。でも「いやだな、苦手だな」と目を背けてばかりでは、いい解決策は出にくいもの。トラブルやコンフリクトが起きたら「お、それはちょうどいい」という気持ちを持ってみる。すると、案外よい解決策を発見しやすいものです。ほんの数分でできる遊びですので、皆さまの職場でもぜひやってみて下さい。
参考:絹川友梨さん著「インプロ・ゲーム 身体表現の即興ワークショップ」晩成出版
●コンフリクト解消の流れ
それでは、実際にコンフリクトが起きたとき、どのような手順でそれをうけとってゆくとよいのか?について、問題解決の流れを考えてみましょう。子どもとのトラブル、保護者とのトラブル、あるいは教職員間のトラブルの可能性もありますが、基本的な手順は同じです。
1,トラブル発生をキャッチする
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