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データサイエンティストのためのマーケティング全体像と略史、必読本
本記事のめあて
データ分析支援においてマーケティング関連のことを学ぶ時に、土地勘がないのでずいぶん苦労しました。全体像の中のどこについて議論しているのかと
マーケティングに関する書籍紹介記事は多数あるのですが、データ分析の観点からだと正直分かりにくい各論ばかりの本が多いです
全体像と略史により、書く考えがどの議論をしているのかがわかるように試みようとしています。今後各論を記事化していきます
Qiitaで書いていたのですが誰にも読まれないので、こちらにダブルポストしてみました。やはりこっちか。でもデータサイエンティストとかにも重要な話なんだけどな。
今後の記事化予定
コトラー流
マーケティングの主流であるコトラー的な考え方
(作成予定)仮)「N1分析とは
コトラー&シャープ
(作成予定)仮)「パーセプションフローモデル」とは
シャープ
コトラーだけじゃない『ブランディングの科学』を知ろう
(作成中)仮)「確率思考の戦略論とは」
(作成予定)仮)「MMMとは」
その他
(作成予定)仮)ブランド
(作成予定)仮)Pythonによるマーケティング分析
(作成予定)仮)カスタマージャーニー
(作成予定)仮)ネットプロモータースコア
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要点
フィリップ・コトラーが大家としている
顧客重視を唱え、顧客のロイヤルティ(そのブランドへの忠誠心)を育てていこう
そのためには市場がどうなっていて、どう差別化して、どの位置を目指すかのSTPというフレームワークを重視している
バイロン・シャープが上記に異を唱え出している
上記はエビデンスに乏しい
エビデンスによれば
ロイヤルティは原因ではなく結果なので操作できない
市場浸透率を重視しよう
データサイエンスの立場からするとエビデンス重視が正しいと思われるがコトラーの考えが全否定されているわけでもないので、両者の対立点や共通点などを知ることが大切ではないかと思われる
略史
レビットやライズの研究を元に顧客重視のフレームワークをコトラーが推し進めた
エビデンスを元にするとそれはちょっと違うのではとシャープが唱え出している
「」で囲む研究発表は原著の発表年
『』で囲む書籍の発表は断りがない限り日本への影響を考えて訳書の刊行年
```mermaid
gantt
title マーケティング研究の流れ
dateFormat YYYY
axisFormat %Y
section 源流
レビットの研究: 1959, 42y
レビット「マーケティング近視眼」: 1959, 1y
レビット『T.レビット マーケティング論』: 2007, 1y
section ポジショニング
ライズの研究: 1972, 53y
アル・ライズ「ポジショニング時代の到来」: 1972, 1y
アル・ライズ『ポジショニング戦略』: 2008, 1y
コトラーの研究: 1971, 54y
コトラー『マーケティング・マネジメント』初版: 1971, 1y
コトラー『コトラーのマーケティング3.0』: 2010, 1y
コトラー『コトラーのマーケティング4.0』: 2017, 1y
コトラー『マーケティング・マネジメント』原著第16版: 2022, 1y
コトラー『コトラーのマーケティング5.0』: 2022, 1y
section エビデンス
シャープの研究: 1997, 28y
シャープ ロイヤルティに関するエビデンスに基づく最初の研究: 1997, 1y
シャープ原著『ブランドの成長:マーケターが知らないこと』: 2015, 1y
シャープ・ロマニウク『ブランディングの科学』: 2018, 1y
シャープ・ロマニウク『ブランディングの科学 新市場開拓篇』: 2020, 1y
ロマニウク『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』: 2022, 1y
森岡『確率思考の戦略論』: 2016, 1y
芹沢『未顧客理解』: 2022, 1y
芹沢『戦略ごっこ』: 2023, 1y
小川『その決定に根拠はありますか?』: 2024, 1y
```
それぞれの主張と主著の流れを図式化した。
```mermaid
graph TB
subgraph ポジショニング重視
direction TB
k1([セオドア・レヴィット]) -.-> k2([アル・ライズ]) -.-> k3([フィリップ・コトラー]) -.->|エビデンスに基づいたN1分析|k4([西口一希])
end
subgraph エビデンス重視
direction TB
b1([バイロン・シャープ]) -->|確率思考| b2
b1 -->|エビデンスを<br/>さらに強調| b3
b1 -->|エビデンスを<br/>さらに強調&MMM| b4
b2([森岡毅])
b3([芹澤連])
b4([小川貴史])
end
エビデンス重視 & ポジショニング重視 -.-> center
subgraph center[両者を取り入れている]
subgraph パーセプションフロー
c1([音部大輔])
end
end
```
注意
ざっくりとした流れと分類であり、
直線矢印は直接な影響を受けている
点線矢印は考え方を取り入れた感じで必ずしも直接的な影響でない場合あり
また、矢印の終端が必ずしも最先端ということではなく、それぞれ研究が続いており、目的に応じて応じて住み分けているというところ
それぞれの主著と入門書の読む順番の目安
入門
「マーケティング入門」と称する本は多数ありますが、多くが持論を述べているだけで体系化されていません。なのでその本に書いてある内容はわかっても、他の考えとどう繋がるかが分からないです
本書は体系化されており、頻出の用語がほぼ網羅されているので、他の本を読む土台として一番かなと思います
基本、コトラー系の考えをまとめており、シャープ系の考えは入ってません。ただ、シャープ系の本はコトラー系の考えが違うよ、と否定する形で論を組み立てており、コトラー系の考えを知らないと分かりにくいです
ですのでどちらの考えを知るためにもまず本書が良いと思います
まとめ記事を書きました。
(これもnoteに移行します)
コトラー系の考えを学ぶ
入門は上記『グロービスMBAマーケティング』で良いと思います。
コトラーはマーケティングを自分以前とその後、そして定期的にマーケティングn.0と表現しています。
```mermaid
timeline
title マーケティングの進化 (コトラーの考える 1.0〜5.0)
section コトラー以前
マーケティング 1.0 : 製品中心
section コトラーの提案
マーケティング 2.0 : 顧客中心 : STP, 4P : 『マーケティング・マネジメント』
マーケティング 3.0 : 人間中心 : 信頼, 社会的価値 : 『コトラーのマーケティング3.0』
マーケティング 4.0 : 体験中心 : SNS, カスタマージャーニー : 『コトラーのマーケティング4.0』
マーケティング 5.0 : 技術と倫理の融合 : AI, SDGs : 『コトラーのマーケティング5.0』
```
主著『コロラーのマーケティング・マネジメント』を改版しながら、マーケティング3.0から5.0の本があり、その他多数ありますがどれがどう違うのか私には正直分かりません。
強いていうならば『コトラーのマーケティング・コンセプト』『コトラーのマーケティング5.0』を挙げる方が多いかなと思宇野で話を合わせるには読むと良いかも(太字は私も読みましたが入門は『グロービスMBAマーケティング』あと深く知るために主著1冊で良いかなと)。
コトラーのマーケティング入門
コトラーのマーケティング原理
コトラーのマーケティング・コンセプト
コトラーのマーケティング思考法
コトラー 新・マーケティング原論
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント基本編
コトラーのマーケティング3.0
コトラーのマーケティング4.0
コトラーのマーケティング5.0
コトラーのリテール4.0
コトラーのイノベーション・マーケティング
コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践
コトラー8つの成長戦略 低成長時代に勝ち残る戦略的マーケティング
(他にも多数)
バイブル
バイブルとしてはこれ、厚いし正直読みやすいとは思えない
1つの概念に枝葉的な話が長いので、丁寧と言えば丁寧なのですが、繰り返し読むしかないでしょう
言い訳すると私は改版待ちでその時々の最新の『基本編』→『入門』と読んできて今本書にたどり着いたのでまだ読んでいる途中です
上にも書きましたが、コトラーの著作のうち最新の考えを知るという意味で追加で読むとしたらここら辺かなと思います
コトラー系の流れを組む考え
西口一希
STPのTターゲティングで顧客を絞り込んでいくわけですが、抽象的なターゲットではなく一人を具体的に掘り下げた方がいいよという提案ですね
(『グロービスMBAマーケティング』にも「個のマーケティングまで行くと行き過ぎ」の趣旨を書いてあったと思うのだが見当たらない、ごめん)
シャープ系からはコトラー系はエビデンスがないと言われますが、本書ではデータとフレームワークにより、どうやってその一人を選ぶのか、そこから他の顧客にどう広げるのかが詳細に分かります
コトラー系の源流を知る
T. レビット
申し訳ないですが未読。源流なのでいつか読まないと
アル・ライズ
コトラー流のSTPセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの原点ですね
源流というよりもなぜポジショニングが必要なのかの入門としても良いかなと思います
また、本記事では対象外にしていますがブランディングについても言及があります
シャープ系の考えを学ぶ
入門兼バイブル
シャープ系は入門書がまだありません。
バイロン・シャープのエッセンスが詰まっている主著と言っていいですかね
シャープの考えを積み上げながら解説しているというよりもコトラー系の考えを一つずつ否定しながら解説という感じなので、ではシャープの考えをまとめると?が読み解きにくいです(早く入門書でないかな)
正直とっつきにくいところがあり、私もまだ読み解けていないですが、図解などしてみました
(これもnoteに移行します)
応用
「ブランディングの科学」シリーズ
新市場を開拓するにはどうしたら良いかの応用編です
上記までは一定規模のブランドを持っている人の話で、本書はブランドを育てるにはどうしたらいいか編です
森岡毅(確率思考)
USJを復活させたでお馴染み森岡氏の本
シャープの考えをもとにして、新市場を開拓するときにデータから考えていこうというものです
負の二項分布などがとっつきにくいですが(これも苦労している方が多いようで記事化を試みたい)、市場により、どれだけ客が買ってくれるかが決まっている分布がある、それに則って考えよ、というような主張ですね
今日届いたこれから読む
芹澤連(エビデンスをさらに強調)
シャープが言っていることを最新の研究からUpdateしている本ですね
姉妹編として
もあります
小川貴史(エビデンスをさらに強調&MMM)
では具体的にデータで何が言えるかをMMM(マーケティングミックスモデリング)を中心に解説しています
1/29に Excelで学べるデータドリブン・マーケティングが出るようです。既刊書の改訂版でMMMをExcelでやるには?の本ですね
コトラー系とシャープ系の両者を取り入れた
音部大輔(パーセプションフロー・モデル)
パーセプションとは認知、知覚。顧客のそのブランドへの認知をどう購買に繋げるか
マーケティングの各施策がバラバラで分かりにくいのを認知から購買までどう繋げたら良いか、を方法論化したものです
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その他関連書などを別記事に書いてます。少し古い記事となりましたが良書ばかりです
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ペルソナについて調べていた時、いい加減な記事が多いなと思い、深く調べ始めました