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スポーツアナリティクスの本
スポーツデータの分析についてはまだ決まった用語がないみたいでスポーツデータサイエンス、スポーツアナリティクスなどありますが、日本スポーツアナリスト協会があるとのことで「スポーツアナリティクスの本」ということで進めます。
私が読んだ中で面白かった本を挙げてみます。類書も増えてどれから読んだらいいかあるいはタイトルからは見つけにくい本もあると思うのでご参考までに(類書も増え嬉しい限りですが、他にも興味深い本がありますがまだ読めていない!)。
以下は、前提知識が必要だからこの順番でということではなく、大体このような位置付けの本たちかなというレベルの一つの目安程度のものですのでお好きな本からどうぞ。
```mermaid
flowchart
全般--->野球
全般--->サッカー
subgraph "全般"
direction TB
ge0(勝敗の法則) -.-> ge1(スポーツデータサイエンス)
ge0 -.-> ge2(スポーツ競技とAI)
end
subgraph "野球"
direction TB
ba999(マネーボール) <-.-> ba0(統計学が見つけた野球の真理)
ba0 ---> ba1(Rによるセイバー<br/>メトリクス入門)
ba0 ---> ba2("デルタ・<br/>ベースボール・</br>レポート")
ba0 ---> ba3(セイバーメトリクス<br/>の落とし穴)
end
subgraph "サッカー"
direction TB
so0(サッカーアナリストのすゝめ) ---> so1(サッカーマティクス)
so0 ---> so2(アナリティックマインド)
end
```
全般
選手育成等のスポーツ科学としてのデータ分析等は古くから研究があるようです(調べると統計学的にスポーツを扱った専門書などはまぁまぁあります)。
スポーツアナリティクスの定義にもよりますが、ここではファン視点としてそのスポーツをデータとして楽しむことに主眼を置いてます。そうするとスポーツアナリティクス全般についての入門書や専門書はあまりないようです。
野球やサッカーの本は多いですが、スポーツアナリティクス分野の俯瞰、こんな研究があるんだの入門としては下記が良いかなと思います。
勝敗の法則
まず入門に
スポーツデータのうち、勝ち負けに焦点を当てた本です。
野球(セイバーメトリクス)の概要、サッカーのゴール期待値、バスケットボールの3ポイント導入での影響、ランキング・レーティング手法、バレーボールやサッカーの順位予想
引用が充実しているので、そこからさらに深く学ぶことも出来ます。
スポーツデータサイエンス
数値で表現しにくいスポーツをどう扱うかの事例集として
どちらかというとアカデミアの視点での本ですが、スポーツデータ全般について俯瞰的に知ることができます。
スポーツデータにはどんなものがあり、どう扱うかから始まり、サッカー、投てき競技、水泳、ラグビー、バスケットボール、ドーピング、アスリートの年齢や早生まれについてなど幅広い競技や選手そのももの属性についてのデータ分析の事例があります。
数値化できない動きをどう捉えるか(集団競技の指標化、画像解析)も含まれております。
ごく一部のみですがRによるコード例あり。
出版社のサイトにも目次がないのでこちらに
第1章 スポーツデータサイエンスとは
第2章 スポーツ科学と統計基礎
第3章 スポーツ科学における統計分析手法
第4章 機械学習
第5章 データ資源の生成:パスの測定を事例として
第6章 投てき競技における動きの分析
第7章 オープンウォータースイミングにおける戦略の性別差
第8章 ラグビー・バスケットボール:深層学習を活用した競技分析と戦術立案
第9章 サッカーにおける集団プレーの抽出とその指標化に向けて
第10章 サッカーにおける得点化傾向の時間依存性
第11章 ドーピングと競技
第12章 アスリートの相対年齢効果と出生順位効果
人工知能 Vol.34 No.4 (2019年7月号)「スポーツ競技とAI」
先端研究ではスポーツデータをどう扱っているかを知る
人工知能学会誌の特集です(「深層学習による言語生成」と2つの特集の号)。
初心者がこれを読んで何かができるようになるというわけではありませんが、データで表現しにくい部分を先端の研究ではこう扱うんだと知ることができます。
AI活用の概要と、ラグビーやバトミントン、水泳の動きの画像解析、ロボットサッカー、サッカーの動きのボロノイ図・トラッキングデータでの表現、アスリートの脳機能、体操の自動採点、バスケットボールの守備プレイのGANによる自動生成!
関連書籍
テニス、卓球、サッカ、ゴルフ、陸上、スキージャンプ、フィギュアスケート、大相撲、他 と広い競技の例を知ることができます。
野球
セイバーメトリクス(アメリカ野球協会=SABR+指標のメトリクスの造語)という言葉はよくないですね。でも一番進んでいる。元祖データアナリティクス。
『マネーボール』
ご存知『マネー・ボール』スポーツデータの重要性を一般に広めた功績は大きいですね。
統計学が見つけた野球の真理 最先端のセイバーメトリクスが明らかにしたもの
セイバーメトリクスの伝道者鳥越氏による入門書。
類書が多数ありますが、データ好きであればまずはこれが詳しくわかりやすいですね。機械学習でどうこうという視点はないですがどういった指標があるかなど。
Rによるセイバーメトリクス入門
豊富なRコード例により、野球のデータをどう扱うかを詳細に解説した本。手を動かしてセイバーメトリクスを体験したいというならこの本ですね。
『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート4』
『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート5』
セイバーメトリクスにどっぷり浸かりたいならこれ「デルタ・ベースボール・リポートシリーズ」
私は2巻しか読んでませんが
「セイバーメトリクス・リポート」シリーズとして5巻
「デルタ・ベースボール・リポート」シリーズとして現在6巻
出ています。とにかく濃い。一例を挙げると
横浜DeNAベイスターズの「8番投手」の効果検証
二軍の守備成績の捉え方
フレーミングスキルの比較
等々。一番グッときたのが「テーブルスコアを活用した通史的な出場状況特定」。現代のようにデータが豊富にある状況とは違い、昔のスコアブックレベルのデータ(ボールカウントと、そこに打ってアウトか塁打だったか等)のデータからでもここまでわかるんだよという研究。
『セイバーメトリクスの落とし穴」
独学ながらダルビッシュさんと交流もある在野のセイバーメトリストお股ニキさんの論考
独学でもここまでできるのだという一つの頂点。
関連書籍
鳥越氏のセイバーメトリクス入門
同じく鳥越氏のセイバーメトリクス入門。タイトル通り通説とは違う結果が出ているの観点での入門書
『マネーボール』のその後を描いた位置付けの本
『マネーボール』のその後を描いた位置付けの本
選手育成のために野球のデータをどう活かせるか、大谷翔平の凄さをデータで見ると、といった本。
サッカー
野球に比べるとデータが取りにくいこともあり、これから、って感じですが
2022年のNHKスペシャルの記事ワールドカップ “日本とドイツは互角” アナリストが徹底分析(わ、分析通り勝ち目あったね)や、国内最大級の分析ユニット、海外クラブと提携… 東大サッカー部のテクニカルスタッフが語る「Jのクラブにはない強み」とリアルな学生生活の記事などサッカーの分析も熱く・厚くなって来ました。
でも、野球のセイバーメトリクスみたいな言葉がないので、サッカーのデータ分析本は見つけにくい。
『サッカーアナリストのすゝめ』
サッカーアナリスト第一人者の杉崎健のサッカー分析本
サッカーアナリストに求められるスキルとは、サッカーのデータの種類や指標とは等何が必要かなどは俯瞰で全体像がわかります。
具体で分析した結果ではなく、アナリストを増やしていこうよという本なのでその点はやや物足りないですがまず最初の1冊なのかなと。
『アナリティックマインド』
サッカーアナリストとして日本サッカーを強くするためにはデータ分析が必須だよというある意味アジテーションの本。サッカーについてだけれど、スポーツを分析するならば、分析の観点なのかその対象への熱意なのか、もっと言えばスポーツを超えてあらゆる分析は分析目的なのかその対象への熱意なのか。
サッカー好きであれば熱いでしょうし、データ分析観点であればある意味厚い内容なのではないか。
サッカーマティクス
野球と違って動きのスポーツなので、データで捉えるには難しい面があるサッカーを。陣形を幾何学的に捉えるとか、パスの流れ、最後はブックメーカーの勝敗予想へ確率論的に。数学者の立場から、そうだねサッカーは、より、数学者的なテーマと思う。国境のない全世界的でお馴染みなのはサッカーと数学だものね。
「この次」をどう考えるか、の示唆に富む本。
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2024-01-02お正月にTV東京で観た『川島明の辞書で呑む【『あ』から始まる日本語だけをツマミに呑む辞書番組】』で「ア式蹴球」が出て、そんなの使わねーよとなったけれどさっそく出てきて熱かった。
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