2024年9月の記事一覧

禅/大乗仏教【仏教の基礎知識20】

日本でよく知られている禅宗には二つの主要な宗派がある。その一つである曹洞宗は、座禅を中心とした修行を行うが、もう一方の臨済宗は公案や禅問答を含むため、理解が難しいとされることが多い。これから、「禅の悟り」や「喝」の意味について解説する。 臨済宗臨済の人物像 臨済義玄は、中国唐代の禅僧であり、臨済宗の開祖。当初は経典を学んでいたが、心の安らぎを得ることができず、禅の道に転じて黄檗希運の門に入る。そこでの厳しい修行を経て、大きな疑問に直面した後、大愚に師事し、その一言で悟りを

如来蔵思想/大乗仏教【仏教の基礎知識19】

法華経 仏教における三乗の教説は、伝統的に異なる救済の道として理解されてきた。すなわち、菩薩乗(大乗)は仏を目指し、声聞乗と独覚乗はそれぞれ阿羅漢と独覚を目指すとされる。しかし、『法華経』はこれらの三乗を方便とし、究極的な真理として一乗を説く。この転換は、仏教の解釈における重要なパラダイムシフトであり、すべての修行者は最終的に仏に至るという普遍的な救済観を提示する。 まず、三乗の伝統的な役割を再検討する。声聞乗と独覚乗は、自利的な悟りを目指す道と見なされ、そのために各々が仏

唯識説/大乗仏教【仏教の基礎知識18】

サーンキヤ学派の諸原理 八識とサーンキヤ哲学諸原理対応 チッタ(Citta)⇒アラヤ識(阿頼耶識) チッタはサンスクリット語で「心」を意味する言葉で、非常に広い意味を持つ。仏教やヨーガでは、心の活動全般を指す。この「チッタ」が仏教の阿頼耶識(あらやしき)に対応するという考え方がある。阿頼耶識は、八識説における最も根本的な意識で、過去の経験や業(カルマ)を蓄える倉庫のようなものであり、すべての意識の根源とされる。 アハンカーラ(Ahaṃkāra)⇒末那識(まなしき) 我執: