誰も知らない“オンライン面接試験”のリアル:中編【就活の変化】
<参考記事>
前編【慶應SFCの判断】
大学のAO・推薦入試よりも一足先にオンライン型採用を実施しているのは、企業の新人採用の場面でしょう。
会社説明会や採用面接、その後の人財研修まで、これまで対面型で実施してきたものを、ほぼすべてオンライン化することで、そのメリットやデメリットが徐々に見え始めてきています。
よく企業の採用担当の方から伺うのは、説明会など、物理的な会場での実施の場合は参加者数がどうしても限られてしまうところ、オンライン開催にした途端に参加者が5〜6倍になり、これまで以上に全国、あるいは海外の幅広い人財に情報発信ができるというメリットはあったようです。
面接に関しても、オンライン実施にすることで、移動時間などの制約が緩和されたことにより、色々な社員との面接も可能になったようです。
これまでの対面による面接では、面接官はせいぜい1〜2名だった状況から、オンライン面接にしたことによって、企業によっては面接官4〜5人で対応できたケースもあると聞きます。たしかに、一人の学生に対して、より多角的な視点で評価できるメリットは大きいでしょう。
ただ、やはり、オンライン面接によるやりにくさも指摘されています。
その多くが、表情や雰囲気などが伝わりにくく、相手の熱量がわからない・・・というもの。
たしかに、会って初めてわかるその人物の持ち味のようなものがあると思います。オンラインでは、そうした個性が見えにくいというのです。
ただ一方で、オンライン面接では、そうした雰囲気や勢いのようなものが封じられる分、その人物が「本当に考えていることが何なのか」といった思考の流れの一貫性が浮き彫りになりやすいそうです。
これには、私も心当たりがあります。
AO・推薦入試の面接指導に携わっていると、
自分のキャラクターを作り込み、そこだけに委ねたやり取りに終始してしまう受験生に遭遇します。
元気で、明るくて、ハキハキとやりとりできる・・・。
でも、対話の質そのものには全く内容がなく、まったくもって薄っぺらいという状況があるのです。
私はこうした状況を「雰囲気芝居」と呼んでいます。
経験が豊富で鋭い面接官は、そうした「雰囲気芝居」を看破します。
そういった意味では、良い人財を採用するためには、雰囲気にごまかされない面接官の真眼が強く問われます。
ところが、企業の採用担当者の話によると、オンライン面接では、人当たりの良さや勢いで「何となく良いかも?」という感覚を生み出しやすかった対面の場とは異なり、空気感のようなものが見えない分、その人の「本当に考えていることの深さ」が表れやすいのだそうです。
人の本質を見抜く百戦錬磨の面接官の知見に頼らなくても、オンラインによって、そうした「人間としての地力」が驚くほど見えてくるのだそうです。
実は、今、こうした企業の就職試験にとどまらず、大学のAO・推薦入試においても、オンラインだからこその意外な効果を狙ったと思われる、これまでにはなかった全く新しい選抜方法が続々と打ち出されています。
(後編につづく)