新しい教育モデルの最先端【揺らぐ大学の真価について】
こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事の青木唯有(あおき ゆう)です。AO・推薦入試オンラインサロンのナビゲーターも務めています。
これまで長くAO・推薦指導に携わってきた私自身の経験から、AO・推薦に象徴される大学受験の大きな変化から見えてくる様々なことを、本ブログにてほぼ毎日お伝えしています。
このような情報や視点を、特に保護者の方に認識いただくことで、大学受験を通じて形成される親と子の自立した関係「親子軸」を育むヒントにしていただければ幸いです。
つい先日、コロナ禍による影響で、立命館大学の学部生のおよそ1割が退学を視野に入れていることが大学独自の調査により判明したという記事を目にしました。
経済不況の中で、親の収入が減り学生自らもアルバイトができずに、経済的な見通しが立てられないということが大きな理由のようです。
またアメリカでは、キャンパスが立ち入り禁止となった上に講義はオンラインのみという実態は ”高額な学費に釣り合わない” と、100を超える大学が学生から集団訴訟を起こされているそうです。
日本の大学でも、学費を一部返金したり学生に対して大学が支援金を給付したりと、ある程度の対応を講じる動きがあるようです。
教授による講義だけでなく、図書館や体育館、実験施設などの設備環境の利用や学生同士の人脈作りなど、大学に所属することによる複合的な機能が享受されなくなってしまった今、大学の価値とは何なのかが改めて問われています。
逆を言えば、コロナによって、これまで認識されていないような新たな価値の提供が大学には求められるようになるのでしょう。
ちなみに、日本の教育基本法では、大学は以下のように定義されています。
“大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。”
今までは大学内の研究活動において、新しい価値を創造し、その成果を社会に提供することが大学としての使命だったわけですが、これからは、もはや「大学という機能そのもの」に対する、同様のイノベーションが求められていくように感じます。
そして、こうした時代の変化を先取りするかのような、従来の教育の常識からはかけ離れた斬新なコンセプトと手法による新しい教育システムも注目されています。
「Ecole 42」というプログラマー養成学校をご存知でしょうか?
2013年にフランスのパリで設立され、その後、アメリカのシリコンバレーやモロッコ、ベルギー、ロシアなどに広がり、日本でもいよいよ今年「42 Tokyo」として開校しました。
「Ecole 42」の特徴は非常にユニークです。
・完全無料
・24時間体制で365日年中無休
・約900台のMacがあり、先生は一人もいない
・18歳以上なら学歴も国籍も不問
・Piscine(ピシン)という4週間の入学試験がある
・卒業まで3〜5年を想定したカリキュラムだが1年で卒業した人もいる
教える先生は一人もいませんが、ビデオ教材はあります。
24時間いつでも学べるそうで、学生はいつでも自分のカリキュラムをゲーム感覚で進めていくそうです。
この、教科書もなく、一斉授業もなく、先生もいない「Ecole 42」の学習システムを支えているのは、「Peer-to-peer learning」です。
学生同士が互いに協力しあって学び合うのだそうです。
その様子は、まるで大学の自習室が学ぶためのメイン会場になっている感じです。
カリキュラムの課題を解決するためにわからないことがあれば、まず自分で調べ、それでもわからなければ他の学生に聞きながらクリアしていきます。
さらに、各学生の成果物の採点・評価は、プログラム(機械)によるチェックと他の学生によって行われます。
誰かに聞いて解決することももちろん重要ですが、何よりも、他者に教えることや他者への採点制度によって、どんどんと技術が身についていくそうです。
ちなみに、「Ecole 42」は、卒業資格が与えられますが、教育機関として国からの公式な認定は受けていません。
ですが、「Ecole 42の学生」が優秀であることが事実として企業に強く認識されており、就職率はなんと100%です。
この型破りの教育環境が、果たして大学なのか専門学校なのか、そうしたことはもはや問題ないのかもしれません。
わたしは、「Ecole 42」は、大学としての本当の価値とは、結局は「人財価値」を実態的にどれだけ高められるかにあることを示す象徴的な事例なのではないかと思っています。
お子さんの進路選択や大学・学部選び行う際の、一つの視点として参考にしていただければ幸いです。
次は、「一般入試がAO・推薦入試に変化する!?」です。
お楽しみに。
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