親が知るべきポートフォリオ教育の極意:中編【“アート”と“投資”の視点で考える】
前回記事の冒頭で、ポートフォリオにはもともと、
1. アーティストが自身の創作物をまとめた作品集
2. 投資家の資産運用の組合せ
という意味があるとお伝えしました。
私はこれまで、教育におけるポートフォリオにも「アート」と「投資」という二つの側面が引き継がれるべきであるとの考えで、AO・推薦指導に携わってきました。
ところが、「アート」も「投資」も、一般的な中高生にとっての日常的な感覚とはかけ離れているため、このポートフォリオ作成のコンセプトの共有について、思った以上に苦労することが多くあります。
今回の中編では、なぜ、教育におけるポートフォリオが「アート」や「投資」に繋がるのかについて、具体的にお伝えしたいと思います。
前編で、ポートフォリオを作成する際の経験や活動の素材について、いくつかの要素をご紹介しました。
部活動、委員会活動、学校行事、習い事、趣味など、これまでのライフイベントやライフワーク、好きなことや得意なことなど、自分に関わることであればどんな要素でもポートフォリオになるのですが、問題は、それらはあくまでも「点」に過ぎないということです。
ところが、この「点」そのものがポートフォリオで、「点」の大きさや多さがその評価になると思ってしまうAO・推薦入試の受験生が少なくありません。つまり、受賞歴や受賞回数のようなことです。
自分の活動が表彰されたり、その回数が多かったりすることは、もちろん素晴らしいことですし、強みだと思いますが、それだけを並べても、魅力的なポートフォリオにはなりません。
点と点を繋ぐ、ストーリーがあるかどうかが、一番重要なのです。
実例を挙げればきりがないのですが、
例えば、、、
・「水泳部」の経験
・趣味の「ピアノ」
・得意科目の「書道」
一見すると別の事象に見える「水泳」、「ピアノ」、「書道」から、「流れ」に関心を持ったプロセスというストーリーでポートフォリオを作成し、「流体工学」という研究テーマにつなげたケースがあります。
「水泳」というスポーツで感じる水の「流れ」
「ピアノ」という演奏活動によるメロディの「流れ」
「書道」の筆の運びによる「流れ」
全く別々の経験から「流れ」という視点が生まれ、それが「流体工学」という独自のストーリーとして研究テーマに展開したのです。
受賞歴ももちろん価値あることですが、それぞれの経験や活動から、「自分が感じたことが何なのか」、その「独自の視点」こそが、自分だけのオリジナルのポートフォリを作成する鍵となります。
水泳部の人も、趣味がピアノの人も、書道を得意とする人も、世の中には大勢います。ですが、それぞれの経験や場面において、何をどう捉えたかは、人の数だけ違うはずなのです。
そして、これは、とてもアート的な考え方だと思います。
絵画でも彫刻でも、同じモチーフだったとしても、表現される世界観はアーティストの感性やセンスによって全く違う作品になることと、よく似ているからです。
それと同時に、投資的なセンスも重要でしょう。水泳や書道などの全く違う経験の組み合わせによって、より奥行きや希少性を感じるストーリーが、ポートフォリオから生み出される点は、自分の資産を未来のためにどう組み合わせるかといった考え方に通じるからです。
「アート」と「投資」というと、ちょっと難しく感じられるかもしれませんが、考え方のコツは、実は非常にシンプルです。
それは、一つ一つの経験を、その時の自分の「喜・怒・哀・楽」に寄り添って掘り起こしていくことです。
ただし、その時に必要となる視点が、「主観」と「客観」のバランスです。
(後編につづく)
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