AO・推薦入試の盲点!大量の情報の扱い方【“情報メタボ”になっていませんか?】
こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事の青木唯有(あおき ゆう)です。AO・推薦入試オンラインサロンのナビゲーターも務めています。
これまで長くAO・推薦指導に携わってきた私自身の経験から、AO・推薦に象徴される大学受験の大きな変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、特に保護者の方に認識いただくことで、大学受験を通じて形成される親と子の自立した関係「親子軸」を育むヒントにしていただければ幸いです。
私たち人類の歴史を振り返ると、社会全体としていくつかの大きなステップを経ながら進化をしてきたことは周知のことと思います。
狩猟社会
農耕社会
工業社会
情報社会
この4つの段階を経た上で、これからの社会はいよいよ「Society 5.0」に入ると言われていますね。
内閣府のオフィシャルサイトを見ると、「Society 5.0」が実現する社会について、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」だと定義されています。
奇しくもコロナ禍により「サイバー空間とフィジカル空間の融合」は、私たちの日常において喫緊の課題になっています。
そうした仮想と現実の空間に流れる血液のような存在が、今回記事のテーマにもなっている「情報」です。
現代社会において人が発信する「情報」は、テレビ、新聞や雑誌、SNSや各種WEBサービスなどの発達によって、ここ10年間で530倍にもなっているそうです。
その結果、私たちが1日に接する情報量は、江戸時代の1年分に相当するとも言われています。
日々、大量の情報が雨あられのように降り注ぐ中で、その中から良質で自分にとって本当に必要なものを如何に取捨選択できるかは、AO・推薦入試の準備を進める上でもますます重要なリテラシーとなるでしょう。
志望理由を構築し研究テーマを深めるためには、色々な文献を調べたりデータを分析したり専門家による複数の見解を比較したりと、情報収拾は欠かせませんよね。
ただ、情報量が圧倒的に増えた現代社会においては、それだけ「情報が埋もれやすい」という可能性があります。
必要な情報が埋もれてしまうことで、本来理解すべき内容を捉えられなくなったり意思決定ができなくなったりするリスクが高いということです。
こうした現象のことを「情報オーバーロード」と呼ぶそうです。
本来は自分の養分として得るはずの情報が、過剰な脂肪のように蓄積してしまい「情報メタボ」のような状態になってしまっているイメージです。
たしかに、AO・推薦入試の指導をしている中で、いろいろなツールを使って情報を収集することばかりに勤しむがあまり、自分自身が思考し考察することを忘れてしまっている受験生に出会うことが少なくありません。
「あれも調べました。これも調べました。」と主張する受験生に対して、「一生懸命に調べたのはわかるけれど、それで結局 “君の考え” はどうなの?」と聞くと、
「・・・それは、まだ調べが足りなくて。・・・調べ直します。」と答えるのです。
これでは、情報の収集をやればやるほど「受動的な姿勢」が推進されるだけですから、いくら情報にアクセスしても自分の考えを深められるはずがありません。
こうした状況に陥らないために、まずは情報の「断捨離」をすることをおすすめします。
情報を受け取るタイミングを、定期的・一時的にシャットアウトする習慣を持つのです。
SNSを使う時間を「何時から何時まで」と決める
というルールを家族内で設定するのも良いかもしれません。
時間を制限することで、「ダラダラと情報を受け取る姿勢」ではなく、「自分から情報を獲得する姿勢」になります。
そうすることで、自分にとって本当に必要な情報が何かを徐々に判断できるようになるはずです。
また、「読書」というスローなツールも効果的です。
AO・推薦入試においては、自分が興味のある分野について新書や専門書などの書籍に触れることは必然だと思いますが、それらを多くの情報を得るためではなく、「自分の思考を深めるため」に活用するのです。
速読にこだわらず、あくまでも自分のペースで読み進め、読んでいる時の自分の感覚に集中してください。
「なるほど、たしかに同意!」
「これは気がつかなかった視点だな」
「ん?これはよくわからないな・・・」
「なぜ、こうしたことが起きたのだろう?」
など、読み進めていく中で自分が感じたことをメモしたり書き出したりしながらじっくりと書籍に向きあうのです。
そして、自分がなぜそう感じたのかを、後からでも良いのでなるべく「言語化」するとより自分の思考が明確になるはずです。
以前、ある保護者の方から、
「息子がAO・推薦入試の準備をするようになって、我が家は同じ本を必ず2冊購入するようになりました。親用と息子用です。同じ本を読みながら、互いの考えを話し合ったりしています。」
と教えていただいたことがあります。
これはとても健全で効果的な方法だと思います。
何のために情報を得るのか?
それは、情報の洪水に溺れるためではなく、むしろ、おびただしい情報の中においても本質が何であるかを見失わないために、
「自分の中から生まれた考え」に出会い、育むために他なりません。
そのためにも、受動的な情報収拾ではなく、能動的な情報収拾のあり方について、ご家族の中での習慣や協力体制などが非常に効力を発揮するのではないかと思います。
次は「“問題発見能力”ってどうやったら伸ばせるの?」です。
お楽しみに。