合格してから進路を決める総合型選抜のメリット
こんにちは。日本アクティブラーニング協会理事/人財開発教育プロデューサーの青木唯有(あおき ゆう)です。
これまで、総合型・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)指導に多く携わってきた経験から、総合型・学校推薦型選抜に象徴される大学受験の変化から見えてくる様々なことを、本ブログにて定期的にお伝えしています。
このような情報や視点を、受験生だけでなく保護者の方にもご認識いただき、大学受験を通じて形成される豊かなキャリアについて親子で考える際のきっかけとしていただければと思います。
※2021年度入試からAO・推薦入試は「総合型選抜・学校推薦型選抜」と名称が変わりますが、本ブログでは便宜的に旧名称を使う場合があります。
大学進学を希望する高校生が、自らの志望大学を決めるタイミングは通常いつぐらいでしょうか?
大抵の場合、高校1年生の秋ぐらいに次学年でのコース選択についての希望調査が取られ、その際に「いよいよ自分の進路を考えなくては・・・」となるのではないでしょうか?
文系に進むか、理系に進むか・・・?
はたまた国公立大学を目指すのか、私立大学を目指すのか・・・?
コース選択をきっかけに、大学の受験科目の違いなども認識するようになり、改めて自分の苦手科目にも直面するなど、本格的に迷ったり悩んだりしはじめるのではないでしょうか?
あるアンケート調査によると、志望大学を決める時期として最も多いのは高校2年生という結果もあります。受験を強く意識することで、志望大学の絞り込みもより具体的になるのでしょう。
ここでポイントになるのが、受験前に「目標として目指す志望大学」と受験後に「結果が出てから決定する進学大学」とは、多くの場合異なるという事実です。
“高い志をもつことで努力することが推進され学力を伸ばすことにつながる。よって、受験勉強の当初は、自分の今の実力よりも多少高いレベルの志望校を設定すべきである”
これは、受験においてよくある一般的な認識だと思います。
ですが現実は、第一志望校として掲げた大学に実際に合格し進学できるパーセントは非常に低いという状況があります。
この数値に関しては、多くの予備校は触れることはありませんし恐らく不文律になっているのだと思いますが、ある分析によると “第一志望大学合格率はわずか1.2%” という見方もあるようです。
10代後半の多感な時に、努力すれば報われると信じて大学受験という大きなチャレンジをしても、100人の受験生の中で第一志望に進学できるのはたった一人、99人は不本意な結果となる、、、という状況が実態だとすると、やはり不条理なものを感じざるを得ません。
ところが、私が前職で受験指導に携わっていた民間の塾では、こうした感覚とはやや異なる環境がありました。
第一志望大学をどこの大学・学部にするか決めるは決めるのですが、ちょっと曖昧な決め方なのです。
これは今思えば、総合型選抜に特化した受験指導であったが故の、第一志望大学に対する独特な感覚だったと思います。
言葉にすると誤解を受けそうなのですが、総合型選抜を受験する前提で志望校について受験生と相談していると必ずと言っていいほど、
「A大学の法学部でも良いけど、B大学の経済学部でも良いな。あ、でもC大学の国際関係学部も魅力的だな。どこが一番とはなかなか確定できないな。進学先は受かってから決めよう!」
みたいな感じになっていくのです。
こうした志望大学の設定の仕方は、「この大学に入学したい!と心に決めて一直線に努力する」というような受験指導や進路決定とは、ある意味真逆の受験方針として映るようです。
担当していた生徒から、「学校の調査票で第一志望から第五志望を書きなさいとあるのですが、私にとってはどこも進学したいと思える志望校だから優先順位がつけられないんです」という相談を幾度となく受けました。
なぜ、こうした現象が起きるのでしょうか?
総合型選抜の準備とは、要は自分のやりたいことを明確にしていくプロセスそのものです。自分はどんな人間なのかを深め、どうなりたいかを描き、大学での研究を実社会でどう活かすのかといったストーリーを構築していきます。さらに、そのストーリーを単なる絵に描いた餅にせず、高校生である今から行動に起こし試行錯誤してみよう、というのが受験準備になるのです。
これを進めていくと受験生自身にとって大学はゴールではなく、あくまでも手段に過ぎないという価値観になっていきます。
結果として、自分のやりたいことを実現するためには、A大学でもB大学でもC大学でもどこの大学からでもアプローチできるという考えに、自然と変化していくのです。
総合型選抜の多くが他の大学・学部の併願が可能なケースが多いことからも、受験生としては、「第一志望大学は絶対にこの大学!一択!」という設定の仕方よりも、「“第一志望大学群”として受験大学を選び、受験結果が出てから進学先を考えるもの有り」という感じになっていくのでしょう。
ですが、こうした志望校への考え方に対して、「総合型選抜のような入試は“この大学に進学したい”という受験生の強い意志が求められる。複数の大学を併願するなど不誠実なのではないか?」との指摘を受けることも少なからずありました。
ですが、実際に総合型選抜をはじめ人物を多面的に評価する多くの特別選抜の指導に携わった身として言えるのは、自分のやりたいことを実現させるために、こちらのアプローチの可能性もあちらのアプローチの可能性も、さまざまなルートを生徒自らが見出すことは本質的に間違ったことではないという確信です。
そして、第一志望大学合格率の圧倒的な低さから垣間見える「第一志望は一つだけ」という価値観がもたらす矛盾や不条理に対する解決も、総合型選抜に挑戦するプロセスによって見出せるのではないかと思うのです。
総合型選抜入試における独特な志望校決定のメカニズムについて、少しでもご理解いただければ幸いです。
次回記事のテーマは、“いよいよ一般選抜が変化している?!”についてです。
お楽しみに。
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