世界に通用するSDGsポートフォリオ教育:前編【時代遅れの予備校】
こんにちは。青木唯有(あおき ゆう)です。
日本アクティブラーニング協会理事およびAO・推薦入試オンラインサロンナビゲーターを務めています。
さて今回は、「ポートフォリオ」に関するテーマの記事になります。
AO・推薦入試に関する「ポートフォリオ」についての基本的な情報については、以前の記事でお伝えしましたので、よろしければご一読くださいませ。
(参考記事:「親が知るべきポートフォリオ教育の極意:前編【新しい評価指標】」)
この記事では、「ポートフォリオ」について、SDGsの視点からさらに踏み込んでみたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称のことです。2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき世界共通の課題です。
途上国における貧困や飢餓などの課題はもちろんですが、先進国の中で浮上するクリーンエネルギーや経済成長への課題、さらには、途上国にも先進国にも関わる気候変動などへのリスクなど、全世界が一丸となって取り組むべき「17のゴール」と「169のターゲット」が、非常に具体的に示されています。
企業などでも、自らの事業がこうしたゴールに向かっているかを見直し、持続可能な体制を形成できるよう、新たに「SDGs推進部門」などを設置するケースも増えています。SDGsに対する健全な取組み度合いが、企業のブランドイメージを形成したり、今後の事業の成長を表す指標として投資家の判断に影響したりするからです。
私も、就職活動中の学生などから相談を受ける際、
「SDGsに貢献している企業であるかどうかで、入社したい会社を選んでいる。」という意見を、最近よく耳にするようになりました。
日本の教育においても、2019年に「総合的な探究の時間」という科目が、高校1年生からスタートしています。これは、それまでの「総合的な学習の時間」から進化した科目なのですが、一人ひとりの生徒が、自らで研究テーマを設定し様々なフィールドワークを行うなど、より自由度の高い環境で、自発的な学びを推進するものです。このような探究学習の中でも、SDGsの各ゴールを深めることは、非常に重要な観点となっています。
兎にも角にも、「SDGsに向けた事業の推進」や、「その意識を十分に有する人財の育成」に向けて、国や自治体だけでなく、民間企業や教育事業までもが一丸となって向かっていかなければ、もはやこれからの社会からは取り残されてしまう・・・!!
そのぐらいのインパクトを、私は感じています。
2019年4月、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が、新しい枠組みでの世界大学ランキングを発表しました。
これはなんと、大学の社会貢献の取り組みを、まさにSDGsの枠組みを使って可視化したものです。
このランキングでトップに輝いたのはニュージーランドのオークランド大学でしたが、その他の上位大学を見ても、これまでの格付けとは全く違う顔ぶれが並んでいました。
そして、間違いなくこうしたランキングは、大学を志望する受験生にも影響することと思います。
「いくら営業成績が好調でも、SDGsに貢献しようとしていない企業には入社したくない」と言っていた学生のように、
これからの時代は、「いくら偏差値は高くても、SDGsに貢献しない大学・学部は志望したくない」という受験生も増えるのではないでしょうか?
今の中高生が実社会に出ている2030年の世界のあるべき姿に向けた課題がSDGsです。彼らは、まさに、その時代を生き抜かなければならない当事者世代なのです。
逃げ切ることができる大人の世代とは全く異なる価値観であろうことは、容易に想像できます。
だからこそ、経験や活動などの自分自身の紆余曲折に意味付けし、実社会を見つめる目を肥やし、自分の中から生み出される課題や研究テーマを行動に変えていくプロセスを記録していく「ポートフォリオ教育」は非常に重要です。
また、そうしたポートフォリオをどのように評価し、人財の成長に寄与できる新しいカリキュラムやプログラムをいかに開発できるかが、「SDGs人財」の育成に欠かせないことだと思います。
民間の教育業界においても、そうした新機軸を打ち出せる教育事業体が、結果として、長く残るのではないかと思います。
ただ、こうした「SDGsポートフォリオ教育」の推進において、特に、大学受験を対象とした塾・予備校は、世界の潮流からかなり遅れてしまっているのではないかと、強く感じています。
(中編につづく)
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