それらを捨ててまた作る。(BRUSHUP デザインのひみつ vol.1 TRIANGLE)
友安製作所さんから発表されたBRUSHUPシリーズ
一気に6つの製品が発表されたというインパクトもあり、おかげさまで大好評なのですが
これまで1つ1つの製品についてお話する機会がなかったので、このnoteではあらためて1つずつ取り上げていきたいと思います。
第一回目はこちら。
三角形が特徴的な
TRIANGLE(トライアングル)のお話です。
1.一緒に何か作りたい
ケンケン
そもそもは、どうやってプロジェクトがスタートしたんでしたっけ?
アオキ
たしか友安製作所のみなさんが下北沢のTENTのTEMPOに遊びに来てくれて「TENTさんと一緒に何か作りたいです!」「たとえばアウトドア用のホウキとチリトリなんてどうですか?」って言われて始まったプロジェクトですね。
ケンケン
そうでした。「ホウキ以外でも、なんでも大丈夫だけど」って感じでしたよね。それからたしか、TENTのみんなで集まってアイデア出しをやりましたね。
アオキ
そう、いつものMETHODを使って、たくさんの案を描きまくりました。
アオキ
その当時の僕は『TENTのTEMPO』のお店番の日には、必ずホウキとチリトリで店内を掃除してて、少なからず不満があったんです。
たとえばチリトリを使うためにしゃがまないといけなかったので、年齢のせいなのか使うたびに腰が痛くって。
たしか、この時点で僕は「腰が痛くならないホウキが欲しい」って話してたんですよね。なので立ったまま片手で使えるホウキとチリトリが欲しいなあって思ってました。
2.呼び水としての試作
ケンケン
誰よりも早くアオキさんがガンガン試作してた記憶があります。
アオキ
ひとまずのゴールは設定できたんだけど、良い形が思いつかなくて。まずは使い心地を先に試したくなって、すぐに試作1号機に着手しました。
アオキ
そしたらもう、絶望的なくらいめちゃくちゃ格好悪いんですよ。
アオキ
この試作を見た僕は早々に諦めて「僕の案はダメだ。今回のプロジェクトは若い人たちに任せます!」って高らかに宣言しました。
そしたらTENTのみんなが「いやいや、まだいけますよ」って励ましてくる。
ハルタ
ていうか「あ、この人やめようとしてるな。やめさせないぞ」って。
アオキ
だからもうちょっと頑張ればやめさせてもらえるかなって、次の試作を作ったらやっぱり良くない。でもそこでまた「格好良いと思いますよ」とか励まされて。
ケンケン
アオキさんの中では、どのあたりがターニングポイントになったんですか?
アオキ
試作4号機あたりかな。三角のホウキが三角のチリトリの頂点に誘い込まれて磁石でくっつくっていう方式を思いついたんですよね。
アオキ
さっそく磁石とダンボールで作ってみたら、すごく気持ち良いものができてしまったんです。
ケンケン
一気にすごいアイコニックなものになりましたよね。ホウキとチリトリの一体感みたいなものが生まれて。
アオキ
そうそう。でも当初は「チリトリを足で踏んで使う」っていう想定をしていたので「三角になると踏みづらいし、どうしようか」って悩んでたんです。
でもこの試作を使ってみたところ、わりと問題なさそうってことがわかりました。すぐにTENTのみんなに「見て見て!」って。たしか家に持って帰って、子どもたちにも「すごいだろ!」って見せましたよ。
1号機から4号機まで、たしかその日のうちに至った気がする。
ケンケン
めっちゃ早かったですよね。試作もだけど、感情の変化も。
ケンケン
データ見返すと、ここまではデザインスケッチや図面も描いてないんですね。
アオキ
そう!衝動に任せて作ってるからスケッチや図面もないのです。三角のプランに定まってから初めて描いたスケッチがこれ。
カラーバリエーションを描いた時点で、自分の中での「勝ち」を確信しました。なんというか、フライパンジュウ以来のすごい構造を考案してしまった感覚です。
ケンケン
こうやってアオキさんが一人ガンガン進めているもんだから、みんなもリラックスして着手できた気がします。
アオキ
そうそう、このプロセスで、あらためて試作って大事だと思いました。
1つは自分のためで
格好悪い試作でも、一度作っちゃうと視界に入るじゃないですか。だから放っておけなくて改善策を考えちゃう。そして2号機3号機と作りたくなっちゃって、続けてたらいつの間にか突破口が見つかるんですよね。
アオキ
2つ目はチームのため
なかなか進まない難しいプロジェクトでも、一人が試作を始めると周りのみんなも「なんか楽しそうだな」って試作しはじめる。
アオキ
僕はこれを呼び水って言ってるんですけど、そのプランの良し悪しより「誰かが先に着手して楽しそうにしてる」っていうのが、チームとして躍動するきっかけを作るんだなって思いました。
ケンケン
たしかに今回それはすごいありましたね。
アオキ
でしょ。無駄でもいいからとにかく1つ、呼び水としての試作。今後も大事にしたいです。
3.制約が生み出す構造
アオキ
そこからは細かい構造の部分で友安製作所さんと何度もやりとりしましたね。
1つは、サイズ。
ホウキをつけ外ししやすくしたくて、結構大きなチリトリにしてたんだけど、存在感がすごくて部屋におきたくないなって思ったので、ギリギリのサイズを狙って何度も調整しました。
あと2つめ、磁石の位置。
TRIANGLEは簡単に着脱ができるところがポイントなんですけど、持ち上げて傾けるとゴミが捨てられるというのも重要なポイントだったんです。
アオキ
着脱しやすく、傾けても外れない。その実現が意外と難しかった。
アオキ
正直、たとえば樹脂を使えればもっと簡単に実現できることではあったんです。でも友安製作所さんが金属加工の工場なので金属だけで考えなければいけない。ここが本当に難しくて。
アオキ
最初は「ホウキにマグネットを埋め込んじゃえ」なんて考えてて、実際にその構成で量産試作を作ったら、あらぬ場所でいちいちくっついちゃう。
ケンケン
なんなら掃いているときにくっつくこともありましたもんね。
アオキ
そう、使えなくはないけど、地味にストレスで。それにホウキの柄の部分を外せたほうが、小さくできて送料が抑えられるので、その辺も考慮しつつ悩みまくりました。
アオキ
最終的に、チリトリ側に磁石をつけてホウキ側に板金パーツを追加することで問題を解決した。
んだけど、組み付けしやすくて十分な磁力があるマグネットを探すのにまた苦労したり。
ケンケン
とはいえ、そういう制約の多さが結果的にシンプルな構造を生みましたよね。
アオキ
そうなのよ!制約って良いヒントになるんだなあって思いました。
4.掃除のハードルを下げる
ケンケン
いまアオキさんは、自分の家で使ってるんですよね、実際に使ってみてどうですか?
アオキ
めっちゃ気に入ってます。僕は玄関にいつも置いてるんだけど
見えるところに置いてあってもサマになるし、だからこそすぐに掃除ができる。おかげで土間をこまめに掃除できてます。
アオキ
しゃがまないで片手でも使えるし。すごく気軽で掃除へのハードルがすごく下がるので、たくさんの人の暮らしで使ってもらえると嬉しいなー!と思います。
ケンケン
ちょうど大掃除の季節ですしね。ありがとうございました。
アオキ
ありがとうございました!
ちなみに
BRUSHUPシリーズのコンセプトとして、こんな文章があります。
アイデアを生むには余白が必要だ。 そして膨大な失敗やゴミも必要だ。
書いて描いて作って使ってそれらを捨ててまた作る。 その繰り返しからアイデアは生まれるのだから。
さあ、掃除しよう。 新しい世界を創造するために。
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