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植物をもっと、暮らしのそばに。(HACHIデザインのひみつ)

家の中で過ごす時間が長くなり、
お仕事中や勉強中、食事のひとときにも

できるだけ視界に入る場所に、
僕たちは植物を置きたくなりました。

今までよりももっと、暮らしに近い場所で植物を育てたい。

そんな気持ちと、藤田金属の職人によるヘラ絞り加工技術が結びつき、新しい植物鉢プラントポット「ハチ」が生まれました。

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そうは言っても、ものづくりはそんなにスムーズに行くものではありません。

これまでフライパン工場だった藤田金属にとって、植木鉢は初めてのこと。完成させるまでには長い道のりがありました。


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今回は『プラントポット ハチ』製造までの紆余曲折をお話していきます。



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1.見た目だけでなく理に適ったものを

藤田金属株式会社 藤田さん(以下 藤田 と表記)
そもそも、なんで植木鉢やることになったんでしたっけ。


TENT青木(以下 アオキ と表記)
僕たちは日頃から、自分たちが次に欲しいものは何だろう?ってよく話し合ってるんですけど、治田さんが数年前から。


TENT治田(以下 ハルタ と表記)
そう、植物に関連する製品は、何年も前からずっとやりたかったんですよね。自分の家でも観葉植物を育て始めたこともあって。

ただ、植物関連のものって言っても世の中にはすでに素晴らしい製品が沢山あるじゃないですか。

それらと同じようなものを作っても意味がないなあと思って、一旦そこで考えを止めてたんですよね。

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写真左から、TENTハルタ、藤田金属 藤田、TENTアオキ


藤田
それがなんで今、やろうってことになったんですか?


ハルタ
あるとき藤田さんから「フライパンじゃないもの考えてみませんか?」って言われて。それをきっかけに、もう一度、植物のことと向き合ってみたんです。

藤田
たしかに言いましたね、2019年末くらいでしたっけ。


ハルタ
はい。それで家にある植物たちを改めて見てみたら。植木鉢って、インテリアにあるものとしては、ちょっと無理してる感じがあるなあと。

アオキ
無理してる感じ。

ハルタ
植木鉢ってもともと外で使うものじゃないですか。だから、植木鉢の底には必ず穴が空いていて、そこから水分が流れ出すようになっている。

底に穴があるから、植木鉢を室内で使う時には「受け皿」が必要になるんですよね。


アオキ

ときどき底穴がない植木鉢も見かけますけど、根腐れして良くないって言いますもんね。

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ハルタ
室内で使うなら受け皿は必要。でもその割には、鉢と受け皿がきちんとリンクしてないものが多くないですか。

藤田
リンクしてない?

ハルタ
受け皿が必須な割には、それを前提とした設計がなされていない気がして。


藤田
はあ、なるほど。

ハルタ
植木鉢って、素材も多種多様なものがあって、作家ものもあって「見た目としてのデザイン」みたいなことは、ある種やり尽くされている分野だとは思うんです。

その割には、プロダクトっぽいというか、工業製品としてしっかり考え抜かれたものがそれほど多くは存在しないんじゃないかなって。


藤田

なるほど


ハルタ
それで、何かもっと理に適うような構造ができないかな、と考えたのが始まりですね。

アオキ
そんな話をしていた矢先に、2020年の春がやってきた。

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2.在宅ワークとコップ


ハルタ
はい。新型コロナによって新しい生活が始まったんですけど、その影響はすごく大きかったです。

TENTもリモートワークということで、ずーっと家にいたんで。それはもう、家で仕事もするわけですから。

居心地を良くするために植物を増やしたくて、より切実にアイデア出しをするようになりました。

3Dプリンターで試作を作って、使って、また作っての繰り返しで。自宅でめちゃくちゃ沢山作ってましたね。

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アオキ
そうして、ある構造にたどり着いた。


ハルタ
はい。ダブルウォール構造にしようと。

アオキ
「ダブルウォール」ですか。ちょっと解説をお願いします。

ハルタ
植木鉢の機能性として、穴があった方が良い。でも水が染み出したり土が漏れる穴は、インテリアに置くときには目立たない方が良い。

そう考えたとき、コップなんかで保温性を高めるためによく用いられる「ダブルウォール」って考え方を応用できる気がしたんです。

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藤田

なるほど!そういうことなんですね。

アオキ
どうしたんですか

藤田
普通の植木鉢は、受け皿ごと持ち運ぶの大変ですよね。片手で持てないから。

でもハチは簡単に持ち運べるやないですか。コップの構造を応用したって聞いて納得ですわ。

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ハルタ

そこまで構造ができた段階で「金属のヘラ絞り加工」で作れるんじゃないかと思い、藤田さんに相談しました。

今まで陶器やガラスや樹脂があったりするんですけど。そこに金属製のもの。金属だからこそできるものを作るのは面白いんじゃないかなとも思ってました。

藤田
たしかに金属のものってあんまり見ないですもんね。

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3.形が導き出されるまで


アオキ
このプラントポットハチは、形状としてもいわゆる「植木鉢」っぽい形をしていないじゃないですか。これってなぜですか?


ハルタ
在宅ワークをしていたこともあって、自分の作業机に似合う鉢にしたいという意識が強くありました。

なので、いわゆる植木鉢っぽいものというよりは、ノートパソコンの近くにあるものとしてあるべき形を模索していたんです。

どちらかというとbluetoothスピーカーとか、精密機器みたいなものに振り切っちゃった方がいいなあと思って。

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藤田
ふむふむ

ハルタ
また、これまでの植木鉢だと、やっぱり外で使うものを部屋に持ってきているということもあって「土の面が気になる」とか「水が受け皿に漏れてるなあ」とか、その辺がすごく目立つんですよね。

そんなちょっとしたストレスをできるだけ無くしたかった。なので、できるだけ「植物そのもの」が視界に入り、土とか汚れは視界に入らないような設計になっています。

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ハルタ
あともう1つ、本題からは逸れるんですけど、いいですか。

アオキ
はい、どうぞ。


ハルタ
僕が昔ものすごく衝撃を受けたプロダクトに「ABITAXの灰皿」があるんです。アルミの上下パーツを樹脂で挟み込んだものなんですけど。

アオキ
これですね。

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ハルタ
はい。何かこう、尊敬するプロダクトへのアンサーと言うか、こんな風にアルミの機能性や質感を活かしたプロダクトが作れたら、また1つ夢がかなうなあと。


藤田
はぁー、そうやって考えるもんなんですね。

アオキ
そんなハルタさんの熱い思いを実現するために。藤田さんはいろいろ苦労しましたね。

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4.一筋縄ではいかない加工方法


藤田
そうなんです。ヘラ絞りって、1つ1つ金属を伸ばして変形させて作っていくものですから。2つのパーツがピッタリ重なる精度で作るのが、量産ではなかなか難易度が高くって。

アオキ
ふむふむ。

藤田
まずはこの、キノコのように下向きに開くって形。どう考えても難しいんですよね。


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ハルタ
実際、量産加工にはどれくらいの工程が必要になりましたか。


藤田
板からカットして、プレスして、ヘラ絞りで広げて、曲げて、折り返して。

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で、さらにそこに通気口のパンチング穴を空けていくでしょ。

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ハルタ

そうですね。底面の大きな穴と、三十三個の小さな穴。

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藤田
後加工で穴を開けていくもんですから、せっかく精密に作った「ヘラ絞り」の形状も、穴開けによって歪んでしまう。

ここは「どうにかならへんか」って何回もやりとりしましたよね。

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ハルタ
通気口としての機能を満たす穴の数量、加工の上で無理がなく、外観として嫌じゃない配置。沢山のパターンを考えて、試作も何度もトライしましたよね。

アオキ
どの試作も変形したり穴が歪んでたりして。もうこれは量産は無理だなって思いましたもん。

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藤田
穴をあけるための専用の金型を起こしましたね。これウチで金型も作れるからよかったですけど

「金型屋さんに頼もうと思ったら2サイズで600万越えるで」

ってウチのオヤジも言うてましたもん。

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ハルタ
いやあ、大変なことですね。


アオキ
ここまでは形のお話、あとは仕上げの工程もありますよね。


藤田
マットなシボ加工された、黒色アルマイトが希望でしたよね。


ハルタ 
はい。家電製品なんかではよく使われる「ブラスト加工」と「黒アルマイト染色加工」を使って、マットでサラサラした黒い金属にしたかったんです。

藤田
これまでもフライパンやタンブラーなんかで黒アルマイト仕上げはやったことがあるんですけど、この繊細なシボ加工の経験がなくて。

アオキ
もうちょっと荒いシボなら簡単にできるって言ってましたよね。

藤田
はい。付き合いのある協力工場でも、この繊細なシボが実現できないことがわかったので、TENTさんに協力工場を探すところから手伝ってもらいました。

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ハルタ

沢山の工場さんに相談して、結果としてなんと藤田さんのご近所に良いアルマイト工場さんが見つかった時う。

藤田
そうなんですよね!灯台もと暗しです。

おかげで自分の工場とアルマイト工場さんの間を、僕が車で往復して運んで、製造できてますもん。


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アオキ
そこはもう、大阪の八尾市(藤田金属の所在地)周辺はすごいな!なんでも作れるなあ!って感動しました。



5.まさかの八年の歴史


ハルタ
ちなみに、最初にTENTから「植木鉢作りたい」って言われたときは、どうでしたか?

アオキ
なんでフライパン工場にそんなこと言うの?って思わなかったですか。


藤田

それはなかったですね。これが、びっくりすることに気づいて。


アオキ
びっくりすること。


藤田
先日たまたま過去の写真を見返す機会があって、2012年、今から八年前のこんな写真出てきたんですよ。

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ハルタ
ええー!急須を植木鉢にしている。

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アオキ
まさかの八年前に、すでに試作1号機が検討されていた。

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藤田

2012年ごろって一番、方向性に迷って試行錯誤してたんですよ。ホームセンター量販に商品作っても値段たたかれて、ちょっと良い商品作ってもすぐ海外製のモノマネ出てくるみたいな。

だから、今あるもので違う売り方を考えられへんかなって模索してて、植物入れてみてたんでしょうね。

ハルタ
急須ってそういえば、中に茶こしがついてるタイプだと、すでにダブルウォール構造ですね。すごい、まさかの一致。

藤田
これ自体は、ウチの工場の玄関にしばらく飾っておしまいでしたけど、まさか八年後にこんな形で世に出ることになるとはですよ。


アオキ
なるほど、だから提案をスムーズに受け入れられたんですね。


藤田
おそらくそうです。聞いた時から全然違和感なかったんですよ。


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アオキ
最後に、この記事を読んでいる方へメッセージなど、ありますか?


ハルタ
コロナで在宅時間が増えて。部屋の中で植物を育てようと思い始めた人っていっぱいいると思うんです。僕もそうなんですけど。

でも、そもそもどこで、どういう植物を買えば家で育てやすいのかとか悩ましくて。けっこう一歩目の敷居が高い気がしていたんですよね。


アオキ
僕も、奥さんが植物を育てているけど、僕自身はどうやったら植物をはじめられるのか、想像もできてません。


ハルタ
カメラやパソコンには詳しいけど、植物はちょっと…みたいな。そういう人にとって「まずは鉢を買ってみる」という選択肢を用意できた気がするんです。

藤田
なるどほね


アオキ
まずは鉢だけで眺めたり触ったりして、それに入れる植物を探しにいくという順番はこれまで想像もしてませんでしたけど、たしかにありかもしれないです。

藤田さんは、何かありますか?

藤田
このハチ、本当に持ち運びやすいんです。だから、パソコンの横でも玄関でもトイレでもダイニングでも、どこでも馴染むし、持っていける。

水やりのときもなんなら鉢ごと水道のところに持っていけますから。


ハルタ

受け皿に水をたっぷり貯めておいて、鉢をしばらく浸しておくなんて方法もあるみたいですよ。

アオキ
使っていく中で、まだまだ広がりそうですね。
今日はありがとうございました。


藤田 ハルタ
ありがとうございました。

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植物が好きな方はもちろん、これから始めてみようかな、という人にも。
プラントポット ハチが「おうち時間」をより楽しむための1つのきっかけになると嬉しいです。


※注意
必ず室内でご使用ください。熱伝導率の高いアルミ製のため、高温や低温になる環境下では植物にストレスを与える可能性があります。



この記事に関するご意見ご感想、取材のご希望などございましたら

Email : info[at]tent1000.com
※[at]をアットマークに変えてください
担当:TENT青木

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