夏が閃く前の

花火がとっても好きでして。なぜならそれは短いから良い、短いことが良い、を体現するような現象だからです。
だって一時間も二時間も続く線香花火があっても誰も惹かれないでしょう?

あの短さや、あの儚さ、あのか弱さ、いくつかの一瞬だけで構成されたあの時間。
火花をそこら中にまき散らして、完璧な命を見せびらかす花火。
それと終わったあとの静けさ。終わってしまった喪失と虚無、それからの未来を予見する空白。

海で花火をやるとまたこれいいんですよね。
花火の音の空隙を波が埋めて。
でも波の音っていうのは静けさの一種なんですよ。皆さん。

あ、そうそう、夏が、始まってしまいますね。
私は冬でも勿論花火をやりますけれど、夏が、ね、始まってしまって、夏が夏と花火が、夏の火花が、その花火を、私は、きっとどうしようもない顔で火をつけて、それはきっと完璧な顔。花火をきっと泣きそうなぐらいに笑って眺めて、私はそれで、花火の完璧な命を完璧なままに終わらせてやるのです。

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