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本当に夏が始まるっての?

どんどんどんどん、季節の流れる速さが増している。
それもそのはず、私が一歳だった頃のひとつの季節というのは、人生のたった4分の1だった訳だが、今は人生の19分の1の4分の1、つまるところ76分の1でしかないわけなのであるのだ!

こんなはちゃめちゃ理論はさておいたとしても、やはり体感的には異常なスピードで季節が流れていくわけで、さらに私はひとつの季節が過ぎ去った時、それが取り戻せないものであり、季節は円環ではなく直線だということを知ってしまっており、季節が過ぎ行くというその事象は私にとってあまりに酷である。寒い寒いと言っては身を窄めていた冬を超え、ようやく春がやってきたのかしらんと思えば汗が垂れてくる。日照りは強烈に、匂いは鮮明に、輪郭はゆるやかになっていくのがわかる。まだ梅雨の時期(入っていないという言説もあるようだが雨が続いて厭だなあと人々が思うのならばそれは梅雨)ではあるが、夏の陰は忍び寄っている。一体誰の心の準備ができたって言うの?果たして夏よ、君は焦りすぎなんではないの?
こんなの中原中也も憂うべき驚きスピードですわ。

とはいえ春は抱きしめたいぐらいに好きであり、夏は飛び跳ねたくなるぐらいに嬉しくあり、秋とは一生を添い遂げたいぐらいに愛しており、冬の訪れも狂おしく望んでいるので、やっぱりどの季節も来るのは待ち遠しい。しかし前の季節を捨てなければいけないという代償はデカすぎるわ。そんでもって次の季節を想うとき、同時にその季節を手放す事も想うわけであり、だからやっぱり夏がそこに迫っているというのを感じるのは苦しい。
夏、狂おしく君を待ってはいるけれど、もう少し、心の準備ができるまで。或いは、俺の元を離れないと約束してくれるのならば。

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