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もしもしこちら隕石です。
「君ってさ」と彼女がタバコを吐きながら言った。
「花火を炎色反応とか言いそうだよね」
「すげー偏見」
「そんでさ、イルミネーションは電飾って思ってそう」
「なにそのイメージ」
「だってそんな顔してるから、ほら、今日はあれよ?ペルセウス座流星群」
知ってる。だからこうしてベランダで待っているのだ。
「・・・隕石ってただの石ころでしょ」
眠気がきて不貞腐れてきたのでついポロッと言ってしまった。
彼女は待ち構えていたかのように「はいー!言うと思いましたー!」
「そういう男はモテないよ」
「いいよ別に。てか自分の部屋帰れよ」
「いいじゃん、きみ彼女いないんだし」
「いたら?」
「絶対友達になれなそう」
「超失礼」
隕石は、地表に到達する前に燃え尽きてしまう。
どんな気持ちなんだろう。暇すぎて隕石に思いを馳せてしまった。
真っ暗な空。都市部から離れたアパート。0時を回ってあかりがついている家はほとんどなくて、僕の家もあかりは消している。月明かりを頼りに、ベランダで酒を飲んだりタバコを吸っている。
彼女は他人の家でもお構いなしに冷蔵庫を漁っている「これ食べていいー?」とか「エナドリ飲み過ぎー!死ぬぞー!」とベランダに叫んでくる。
冷蔵庫の光を背景に彼女のシルエットが浮かぶ。長い髪とピアスとタンクトップ。無防備すぎるその服装に僕はどうやら異性として認識されていないようだった。
僕も、いや、ちょっとは。
炎色反応とか電飾とか言っちゃうからアレだけど、人並みに人を好きになるし、彼女はそんな僕によく絡んでくるからちょっとは。ちょっとは。
いいもんみっけたー、と嬉しそうに僕が隠していたお菓子を持ってきた。
「あ、ライターかしてや。うちのもうダメみたい」
「ん」
「なんでタバコ吸わないのにライター持ってんの」
「マッチとかより便利なんだよ」君が使うから予備として持っている。
「隕石ってさー、途中で燃え尽きてどんな気持ちなんだろうねー」
君は僕が思っていたことと同じことを言った。だから少しびっくりした。
「さあ、どんな感じって、生き物じゃないし」
「ロマンがないねぇ、来年は七夕に思いを馳せてみな?泣けるよ?」
情緒どうなってんだよ。
結局その日、天気が悪くて流星群は見られなかった。
ただ、その代わり翌朝我が家には隕石が降ってきた。
「ドーン!」
と君が降ってきて「どう?この隕石」と楽しそうに笑ったので僕は少しだけ心を解いて隕石を大事に抱きしめた。
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