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もうちょっとブランコで遊んでからキスをしよう

普段乗らない中央線で普段は降りない駅からコンビニに寄ってジュースを買って公園に向かう。

ブランコしかない公園。柵さえもない公園。赤いブランコがギーコギーコと風に揺られ。

「私ね、縛られるのが嫌なの」
「私ね、あおみたいな男たくさんいるけど、君もでしょ?」
「私ね、思うの」「結婚は契約だけど交際は信頼でしょ?」「見えないのよ、だから大丈夫」「私ね、正直、あおくんの顔好きじゃないのよ、ジャガイモみたいで、お世辞にもカッコよくないし…そういうところ、あおくんは自分のことよくわかってるじゃない。そういうところなのよ。それに私、君の文章が大好きなのよ。もう、本当に。文章が素敵な方が中身スカスカのイケメンより100億倍魅力的よ。3組の五十嵐に告られたの、私。紗栄子も美希も羨ましがってたけど私バッサリ振ったわ。中身ないもの。あんなのハリボテじゃない。顔以外何もないの。せめて実家が太くあれよ、って思ったわ。それに比べて、あおくん、ブサイクって言われてもむすっともしないし、それについてはりんごは赤いねっていうくらい当然のように僕は不細工ですって、さ。ね、知ってる?”正解”のほとんどが大勢の人にブチギレられることなんだよ。うん、お兄ちゃんの受け売りよ。今は謎の水売ってるの。ウケるでしょ」

「サプリは売らないの?」「サプリは最近ダメみたい。YouTubeで健康知識が広まったせいね。お兄ちゃん怒ってたわ。でも、それでも水が売れるって不思議じゃない?みんな馬鹿なのかしら」「...佐野さんってさ、村上春樹の小説みたいな喋り方するよね」「そうなの!やっぱりあおくん好きよ。みんな私のこと、変な話し方する馬鹿な女、みたいな言い方しかできないの。意識してるわけじゃないけど自然とこの話し方なの。それでもちゃんと言語化してくれるの君だけよ、ねぇキスしよ」

「・・・もうちょっとブランコで遊んでからでいい?」



村上春樹の小説に登場する女の子みたいに一方的にベラベラ捲し立てるように、達観した口調で喋る女の子が好きです。

あお


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あお
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