存在しない小説のワンシーン_喫煙所
ルール
・前後に「〜」
〜
「池田さん、お疲れ様です」
タバコをちっとも美味しそうに吸わずにスマホをいじる池田さんは会社の上司で、45歳。僕より22歳上。
「またきたの?山崎くん」
フー、と長い煙にはため息が混じっている。「肺がんになっちゃうよ?」と。
「これ」と僕は池田さんが好きな無糖のコーヒーを渡した。彼女は「あざす」と部活の後輩みたいに受け取って、タバコをじゅっと消した。
昼休みの喫煙所。白い煙と黒いコーヒー。池田さんの少年のような短い髪と控えめなピアス。だるそうな顔に少ししゃがれた声。僕はこの時間が好きだ。というか池田さんが好きだ。池田さんからの受動喫煙なら喜んで受けたい、とまで歪んでいる。
「・・・何回も言ってるけどさぁ」「私は独身だけど君をそういうふうに見ることはないからね?」
「わかってますよ」
「わかってたらきちゃダメだよ」
コーヒーを飲み終えて再びタバコを咥えた。
「・・・君くらいの歳の青年はさ、こーゆー、タバコ吸ってる2回りくらい上のおばさんが魅力的に見えちゃって、なぜだか恋しちゃうんだよ。でもそれって社会に出たての時だけだからね?あたふたしてる時に頼りに見えちゃって、的なやつ。だからちゃんとした恋愛しなさい。ほら、総務部の岡田さんなんていいじゃない」
〜
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