Vol.2 新聞屋さんや牛乳屋さん、既存のプラットフォームを利用する
みなさんは新聞販売店と聞いてどういうイメージを持つでしょうか。一定の年齢を越える方であれば、プロ野球の観戦チケットや洗剤をもってよく営業に来ていたという印象かもしれません。あるいは、紙の新聞の落ち込みやネットへの移行を受けて、購読契約の減少が止まらない落ち目の斜陽ビジネスと思うかもしれません。どちらもその通りですが、いずれにせよポジティブなイメージを持つ人は減っているのではないでしょうか。
私はそんな新聞販売店の経営を23歳から37歳まで、14年間続けてきました。そして今、私は全国の新聞販売店や牛乳宅配店、クリーニング店など全国にある地域密着型のお店をシニアサービスの拠点になればと思っています。シニア向け「まごころサポート」のフランチャイズ展開です。
電球一つの交換からお手伝い
前回のポストで触れましたが、まごころサポートとは、高齢者の方々が日々の生活の中で感じるちょっとした困りごとをお手伝いするサービスのことです。
電球交換や家具の移動、買い物代行などの軽作業、エアコンや水回りのクリーニング、障子の張り替え、健康増進のための健康教室の開催など、シニアの方々のニーズに応じて様々なプログラムを提供しています。サービスによって価格は変わりますが、軽作業の場合は20分で500円。まごころサポートで手に負えないようなものは、提携している専門業者に速やかにおつなぎします。
電球交換のような軽作業は人に頼むほどのものではないと思うものですが、家族と暮らしていれば普通に頼めることも、ご高齢のご夫婦やお一人住まいになるとなかなか対応できません。こういった小さな困りごとを、お子さんやお孫さんの代わりになってお手伝いするのがまごころサポートだとご理解いただければと思います。
「新聞販売店」という逆転の発想
高齢者向けの軽作業代行サービスを手がける業者は他にもたくさんいます。ただ、MIKAWAYA21が他社と違うところは、全国の新聞販売店を拠点として活用している点だと考えています。
新聞販売店は全国におよそ1万5000の店舗があります。新聞販売店にはコミュニティに根ざしている店が多く、地域における信用が高いという特徴があります。また、「新聞」という商品の性質上、顧客のかなりの部分が60歳以上のシニア層で、日常的にシニアにリーチできる環境にあります。
付け加えれば、朝刊と夕刊を配る朝晩は多忙ですが、日中は店舗も従業員も空いています。ここに、まごころサポートというサービスを提供することで、新聞販売店と地域のお年寄り、MIKAWAYA21の「三方良し」が実現できると考えたのです。
まごころサポートの「三方良し」
新聞販売店はまごころサポートを地域のシニアに提供することで、販売収入の落ち込みを補ったり、余剰人員を活用したりといったことが可能になります。高齢者市場の規模は2025年に100兆円に上ると言われています。その中でも、医療医薬産業や介護産業を除いた生活産業は51兆円。そのごく一部が軽作業代行だとしても、膨大な市場規模です。
また、実際にあった話ですが、まごころサポートを採用したことで、加盟店に来る求人の質と量が改善しました。今の若い方々は給与や待遇だけでなく、社会貢献や社会課題の解決という点も仕事選びで重視しています。まごころサポートは超高齢化という日本の社会課題のど真ん中を解決しようとしているサービスですから、社会に貢献したいという若者の意識に刺さっているのだと思います。
こういったメリットが評価されているからでしょう。創業後ずっと苦戦続きでしたが、この1年で加盟店は50社近くまで増えました。とりわけ、新型コロナの感染拡大が深刻化した3月以降の伸びは大きく、30社近くも増えました。ひとつの理由は新聞販売店の収益減だった折り込みチラシが激減しているからです。
また意外だったのは、新聞販売店だけでなく、介護事業者やクリーニング店、牛乳宅配店、自動車ディーラーなど、新聞販売店以外の事業者の問い合わせが増えている点です。地域に密着して事業を営んでいるお店は、それだけシニアのお困りごとに直面する場面が多いのでしょう。
シニアの生活を楽しく豊かに!
地域のお年寄りにとっても、手ごろなまごころサポートは悪くないサービスです。お子さんやお孫さんと離れて暮らしている高齢者は大勢います。ご家族はみな心配していますが、物理的に訪ねることができません。もちろん、ソーシャルディスタンスは維持しますが、「お顔を見に来ました!」と地域の顔見知りの方が定期的に会いに来てくれる安心感は、お年寄りとご家族の双方にとって大きいのではないかと思います。
また、まごころサポートはお困りごとの手助けだけでなく、メリカリの活用法講座やインターネットラジオ開設講座など、高齢者の方々の生活を楽しく、豊かにする商材も提供しています。超高齢化時代において、老後の生活を豊かにできるかどうかは死活的に重要な問題でしょう。おかげさまで、サービスを活用いただいているシニアの方々も累計で50万人まで増えました。
シニアライフコンシェルジュという仕事
今、私たちは「シニアライフコンシェルジュ(SLC)」という仕事をつくっています。高齢者のところを定期的に訪問し、お困りごとや人生を楽しく、豊かにするサービスをお届けする地域のプロフェッショナルです。このSLCを資格化し、全国的に育成する仕組みが出来れば、地域で地域の高齢者を支える新しいシステムになると考えています。
少し長くなってきましたので今回はここまでにします。次回は、実際に地域の加盟店の現状と、私たちが開発した「マゴコロボタン」という機器について説明いたします。