クリスマスの気まぐれ.15
“本日都合により、
お休みさせていただきます。“
「えー!
そんなの書いてなかったのに。」
スマホの画面をスクロールさせている。
きっとそれは、目の前にある張り紙のことではなくて、ネットの書き込みかなにかのことなのだろうな。
当たり前のことを、冷静に眺めている自分に、少し驚いた。
「他探すから、ちょっと待って?
あ、先に今日休みって書き込まないと…。」
半分は独り言のように呟いて、村田さんはスマホの操作に夢中だ。
不意に通る人たちの視線に気づく。
閉まったお店の前で、長々と居座るのは少し恥ずかしい。
「あの、ちょっと歩きませんか?」
「んー…いいよ。」
視線はもちろんスマホに釘付けのまま、答えられた。
うわの空だけど、仕方ない。
ゆっくりと歩き出す。
確かに、頼りたい、リードされたい。
そうは思うけれど、そればかりをして欲しいわけじゃない。
一緒に話し合ったり、考えたり、迷ったりすることも必要だと思う。
この地区はあまり馴染みはないけれど、飲食店が多いことは知っている。
他に良さそうなお店があるかもしれないと、キョロキョロ見渡していると、雰囲気の良さそうなお店を見つけた。
外観はちょっとレトロなレストランだけど、外のメニューを見るとお肉やご飯ものの他にも、単品メニューやお酒もある。
窓から中が少し見えるけれど、お客さんもそれなりに入っている。
「あの、ここはどうですか?」
おそるおそる尋ねてみる。
「ん?ここ?
…ちょっと待って、調べるから。」
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