貝とNO(ノノガ最終話に寄せて)
長編を脱稿して今日、担当編集者さんに送った。
人にもよると思うけれど、基本的に長編は長いプロジェクトだ。
今回は、取材や資料読み込みに2ヶ月ほど。執筆に1年弱。改稿作業に2ヶ月半ほどかかった。他の仕事と並行しながらなので、すべてのリソースを費やしているわけではないけれど、生命エネルギーをたくさん使う大仕事だった。
今日の午後、執筆の最後のほうに差しかかった時にはもう、マラソンの残り5キロを走ってる時みたいな、「限界なはずなのにどうして走れているのかわからない」という状態。
メールを送信してすぐ、布団に倒れ込んで30分ほど動けなかった。
こんな時いつも感じるのは、「小説書くって、傍から見たらめっちゃ地味やな…」という残念さだ。
「全身全霊でやっている」「命削ってやっている」と言っても、ビジュアル的にはただ椅子に座ってキーボードを打っているだけである。スポーツなどと違い、全力感が見ている方にはぜんぜん伝わらない。
こないだ、息子が読んでいた「海の生き物図鑑」に、貝を食べる貝というのが載っていた。ツメタ貝という貝らしい。
同族を襲うなんて衝撃的なのに、図鑑に載っていた「アサリを襲うツメタ貝」の写真はものすごく絵面が地味だった。言われないと何をしているのかもわからない。
小説書きは内面的には壮絶でも、ビジュアル的にはこれと同じくらい地味だ。
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